第47話 幸運を呼ぶホワイト・ウィッチィー ②

【魔魅side】


「 ふっ ふざけるんじゃないわよ !

 何が、『ローカーボお好み焼きは無いんですか ?』よ ! ダイエットしたいなら、お好み焼き屋に来るんじゃないわよ !」


 仕事が終わった後の晩酌で缶ビールを呑みながら怒鳴ってしまった。


「俺達に文句を言っても仕方ないだろう。

 客に直接、文句を言えばよいじゃないか ! 」


 ポジが反論するけれど、


「そんな事を言えるワケ無いじゃない !

 言ったら最後、バカッターでつぶやかれて炎上してしまうじゃないのよ ! 」


 本当に洒落にならないんだからね、ネット社会は。


「だいたい、ローカーボって意識高い系が騒いでいるだけでしょう !

 日本人なら炭水化物を愛しなさいよ !

 だって、炭水化物は美味しいじゃない!

 美味しければ良いのよ、美味しければ ! 」


 この、おつまみのお好み焼きもビールも全部が糖質なのよ !

 断つことなんて、出来るわけ無いじゃないのよ ?


「ねえ、マミ。 クーラーを付けてよ !

 わたし達だって蒸し暑いんだから、マミだって暑いでしょう 」


 ネガが使い魔のクセに暑がっている。


「アンタ達は、わたしの無意識から生まれた使い魔なんでしょう !

 暑いとか寒いとか感じるモノなの ?

 それと、まだ6月に成ったばかりよ。

 6月にクーラーをつけたら負けた気がするからダメよ !

 電気代だって高いんだからね !

 それよりも俊夫のことは、どうなったのよ !

 社会人は『ホウレンソウ報・連・相』が大事なんだから、きちんと仕事しなさいよ !」


 まったく、誰に似たのかしら ?

 …………わたし ? じゃ無いよね。


「俊夫なら、綺麗な姉ちゃんと散歩してたぜ。

 あの陰キャが楽しそうにしていたのは意外だったな。

 ケッケケ、先を越されたなマミ ! 」


「ポジ ! 勘違いしないでね、マミ。

 俊夫が一緒に散歩していたのは、人狼の娘だからね。

 人間じゃ無いから大丈夫よ……たぶん 」


「ネガはマミに甘過ぎるんだよ !

 第一、俊夫はだから、充分に人狼の娘と付き合う可能性はあるじゃないか !

 マミには、優しい嘘より残酷な真実が必要なんだぜ ! 」


 使い魔の優しさが心に突き刺さるわ。

 それよりも大事なことを言ったわね。


 あの人見知りな俊夫が、人狼とは云え親しくしているなんて信じられないわ !

 確か、俊夫がアルバイトしているのは夕方だったわね。

 別に俊夫のことなんて、どうでもいいけど 一応は元・夫婦だった吉見よしみで相手の人狼の娘が悪い奴かどうか、わたしの目で確認してあげるわ !


「明日の火の車お好み焼き屋は、昼の営業で早仕舞いするから、ポジとネガは案内しなさいよ ! 」


「ケッケケ、素直じゃ無いなマミ 」


「よしなさいよ、ポジ !

 せっかくに成るかも知れないのに、わたし達が邪魔をしたら、マミは一生ボッチ魔法使いに成ってしまうでしょう !」


 コイツら、本当に口が悪いわね……って!


「コラァ ! アンタ達は、また わたしのビールを勝手に呑んでいるわね !

 猫の使い魔のクセに主人のモノを勝手に飲み食いしないでよね !

 ネガも勝手に、わたしのプリンを食べているのは分かっているんだから、他人事みたいな顔をしない ! 」


 見た目は猫の手なのに、器用に缶ビールを開けたり、プリンをスプーンを使って食べる使い魔たち。


 他の魔法使いの使い魔もこんな感じなのかしら ?

 確か、サリーの使い魔はカラスと猫だったハズだから、今度 聞いてみようかしら ?


 ブォーン !


 クーラーが動きだした。

 ポジとネガが、いつの間にかエアコンのリモコンを操作している !


 コイツらぁー 、 自由すぎるわ !


 リモコンを取り上げて、設定温度を見て驚いた。

 28℃に設定していたハズが、20℃に成っていた。


「「だって、俺達(わたし達) 暑がりなんだから仕方ないだろう(でしょう)」」


 コイツらの毛をバリカンで刈ってやろうかしら !



 ── そうして、マミと使い魔たちの夜は過ぎていくのだった ──

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る