第45話 裏飯屋
【七之助side】
結局、栞さんも一緒に皆で裏飯屋に、御飯を食べに行くことに成った。
「ねえ、ねえ、お兄ちゃん !
ボクはきじ重が良いなぁ~。
ネコヤの雉重は前から食べて見たかったんだよ ! 」
期待している さくらには悪いが、アレは
手間がかかるから有るかな、妖怪の食べ物屋に。
「ボクは、なんと言っても鉄火丼だね !
やはり猫ならマグロの赤身を食べたいからね 」
肉派のさくらと魚派のサファイアが軽く
「拙者は、やはり肉でござるな !
サーロインステーキなど食べてみたかったでござる ! 」
ダイフクモチが、とんでもないことを言っている。
少しは遠慮と云うことを知って欲しい
だいたい、あるのかサーロインステーキがメニューに !
「あら、たぬき汁もあるそうよ。
タヌキ娘が食べてしまったら共食いね 」
タマが挑発している。
だが勘違いしているぞ、タマ。
タヌキ汁は『たねぬき』からきたらしいぞ。
タヌキの肉の代わりに、こんにゃくが具に入っているんだ。
サファイアの後を追いて行くと、何時だったかの猫の集会所に、やってきた。
古い建物と新しい建物に囲まれた不思議な場所なんだけど、店らしき建物がわからない。
サファイアは、気にもとめないように建物と建物の間にある庭に向かっている。
どちらも古いアパートみたいだな。
まさに『ザ・昭和』と云う感じのアパートだった。
「二人共、気にしなくても大丈夫だよ。
《=三件とも妖怪関係者》》のアパートだからね。
向かって、右手のアパートは妖怪の男たちが住む『こわれ
大家は妖怪世界の大将である、ぬらりひょん だから貧乏な妖怪も安心して住めるんだ。
そして、妖怪たちのお食事所として出来たのが『裏飯屋』と云うワケさ。
ちなみに『裏飯屋』のオーナーも ぬらりひょん なんだよ。
すっとぼけた顔をしているクセに意外とやり手なんだよ。
もちろん、人間の協力者も利用可能だから安心してね 」
俺やさくら、タマ達は無反応だったけど、何故か栞さんは手を口に宛てて必死に笑いを堪えている。
何処かに笑う要素が有っただろうか ?
『大戦荘』の脇を通り抜けると、雰囲気のある時代劇に出てきそうな庄屋さんみたいな立派な建物が見えた。
「……栞ちゃん、可笑しいのは判るけど、そろそろ良いかな。
妖怪たちは、自分達が笑われるのを嫌うから注意してね 」
店の入り口は、意外と立派な造りに成っていて、知らない人が見ても妖怪の店だとは思わないだろう。
正直、こういう隠れ家みたいな店には
アパートの名前といい、飲食店の趣味といい、好感がもてるな、ぬらりひょん。
店の中は意外と普通できれいに掃除されているし店内も明るかった。
昔見たアニメのイメージとは大違いだ。
料理は普通に美味しかった。
俺は生姜焼き定食、栞さんは焼き魚定食だったが、ラーメンからサーロインステーキまで、ファミリーレストラン顔負けの品揃えには驚くばかりだ。
一番高いサーロインステーキを遠慮なく頼んだ、ダイフクモチは おかわりまでしやがった !
後で教育的指導が必要だな。
サファイアに聞くと、料理は二口女と口裂け女三姉妹が担当していると教えてもらった。
四人の旦那は、全員が人間の男性で子供まで居ると云う。
まあ、四人共に美人だったから、細かいことを気にしない奴なら充分アリだろう。
店内には人間の客しか居ないかと思っていたら、半分は人間に化けた妖怪だと云う。
本当に日常に溶け込んでいるんだな。
ちなみに鬼たちの男は全員がホストで、今はまだ寝てるそうだ。
酒好きな鬼にホストは天職だよな。
『裏飯屋』の帰りは途中で『花より団子』に寄らされた。
甘いものは別腹だそうだ。
お陰で、俺のサイフは だいぶ軽く成ってしまった、トホホ ……。
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