第44話 同じ犬科でも狼と狸と狐は違います

【七之助side】


 対馬さんに聞いた処、どうにかこうにか夕方の散歩だけ俊夫くんに頼むことが出来た。

 休みの日はともかく、仕事のある日の夕方は散歩が無理だから贅沢は言えないなぁ~。


「七之助も栞ちゃんもインドア派で運動不足なんだから、散歩ぐらいした方が良いと思うよ 」


 サファイアが嫌なことを言う。

 正論を言う猫って可愛げが無いよなぁ。


「そういう妖怪はどうなんだ ?

 妖怪だって運動や勉強は必要だろう 」


 そういうと、サファイアは尻尾とヒゲをピーンと立てて胸を反らして、


「ボク達、猫は寝ることが仕事みたいな物だからね。

 猫は『寝る子』が語源なんだよ。

 第一、ボクほど働き者の猫はいないくらいなんだから、わざわざ運動なんて必要無いと思うよ 」


 クソゥ、猫のクセに ぐうの音が言えないことを言う。

 猫の姿ではホッソリした綺麗な姿だから尚更なおさら 質が悪い、文句のつけようが無いのが悔しい。


 さくらの場合、猫の姿……後ろ姿は座ると洋なし🍐みたいだけど、可愛いからスルーするとして…………


「わたしは嫌よ、ご主人様。

 わたしは頭脳派だから無駄な運動なんて必要無いのよ。

 第一、太って無いでしょう 」


「グーグー Zzz Zzz Zzz zzz」


 タマは当然だと言う顔をして反論して、タヌキ娘は…………

 コヤツ、さっきまで起きていたクセにしているな !


 突っ込みを入れるのも面倒くさいから無視しよう。

 そんな俺達を見ていたサファイアが、


「うん、とりあえず 七之助が、さくらに駄々甘だと云うことが再確認出来たことと、だと云うことが判ったよ。

 それと犬科の妖怪……動物はまとまりが無いと云うこともね 」


 そのサファイアの言葉に反応したのか、が猛然と抗議してきた。


「ちょっと、サファイア !

 わたし達妖狐をコイツらと一緒にしないでよね !

 わたしの様九尾の狐に恐れられる存在からお稲荷狐の様に神の使いとして崇め奉られる存在が妖狐なのよ。

 映画とかでは雑魚の駄犬人狼や怠惰な化け狸なんかと一緒にされては妖狐の名折れだわ 」


「それは拙者のセリフでござる。

 我々、人狼族は誇り高い妖怪でござる !

 色香で為政者に取り入って欲望のままに生きる色ボケ狐なんかとは違うのでござる。

 また、鍛練をせずに自堕落な生活をくりかえしている化け狸とも違うのでござる ! 」


 一方、化けタヌキは、いまだにタヌキ寝入りをしているかと思っていてら、本当に熟睡していた。

 意外と大物なのかも知れないな。


「とにかく、散歩好きなに付き合っている程、ヒマじゃ無いのよ、わたしは ! 」


「家でゴロゴロしているクセによく言うでござる !

 もともと拙者は、ご主人様と居られれば良いのでござるから、散歩くらい一人で出来るでござる ! 」


 う~ん、このままだと本当に険悪に成ってしまうな。

 何か良い手立てはないものだろうか、と考えていると、


「ごめん、ごめん、少し言い過ぎたようだね。

 仲直りのお食事会でもしようか、七之助のオゴリで! 」


 おい、おい、俺のオゴリなのかよ。


「アハハハハ、そんなに高く無いから安心しなよ。

 妖怪、御用達のお食事所『裏飯屋うらめしや』だったら皆がお気に入りのメニューが見つかるハズだよ 」


「 裏飯屋なんて飲食店なんて有ったかなぁ~。

 漫画やアニメのように砂かけオババが経営しているのかな ? 」


 俺の質問に対して、サファイアはあきれたように、


「七之助はアニメの見すぎだよ !

 裏飯屋は、二口女と口裂け女が経営している定食屋さんだよ。

 特にが人気があるようだね 」


 その一言で、急にタマがソワソワし始めた。


「ご主人様、すぐに行きましょう !

 わたくし、きつねうどんには少々ウルサイのですよ、サファイア !

 これで美味しく無ければ覚悟してくださいね 」


 俺の袖を引っ張りながら俄然やる気を出していた。


「わたしは、カレーライスが食べたい !

 スパイスの効いたカレー専門店とは違う、普通のカレーライスが食べたい ! 」


 さっきまで狸寝入りしていたタヌキ娘までもが、起き出して来ていた。


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