第43話 ワンコの散歩

【七之助side】


 朝…… バタン !


「朝でござる ! ご主人様、起きて散歩に行くでござる ! 」


 ダイフクモチに起こされた。

 普段起きる時間より1時間は早起きになる。

 忘れていたが、犬は毎日の散歩が必要だったんだ !

 クソゥ、父さんめ !

 毎日の散歩が面倒くさいから俺にダイフクモチを押し付けたんだな。

 今頃は、ゆっくり寝ているであろう父親を恨んでいた。

 仕方ない、ランニングなら無理だけど散歩なら大丈夫だろう…………とこの時に安易に考えていた俺を殴ってやりたい。


 ドロン ! 🍃


 ダイフクモチが人間の姿から犬の姿に変身した。

 見た目は、秋田犬の姿だった。

 え~と、リード散歩ヒモとエチケット袋は有ったかな ?


 そうすると ダイフクモチは、いったん部屋から出て行き、少し経つとリードを咥えて戻ってきた。


「拙者、淑女でござるからエチケット袋はいらないでござる !

 帰って来てから、お花摘みトイレに行くでござる !」


 ダイフクモチは、そう言うが犬の散歩で手ブラだと外聞が悪いから持っていくことにした。

 ウエストバックにスマホと財布、タオルを入れてから部屋を出る時に、皆に声をかけると、


「ボクは低血圧だから、朝が弱いんだよ。

 イッてらっしゃい、七之助 ! 」


「わたし パス、ご主人様 」


「ごめんね、お兄ちゃん。

 ボクは朝のテレビが見たいから留守番しているよ 」


「グーグー Zzz Zzz Zzz zzz」


 サファイア、タマ、さくらには断られてしまった。

 タヌキ娘は爆睡している。

 ハァ、しょうがない、散歩も30分くらいで満足してくれるかな。


 起きてきた栞さんに声をかけてから散歩に出かけた。


 いざ散歩に出ると、結構 犬の散歩をさせている人がいる。


 ダイフクモチは気を使っているのか、リードを引っ張るこてが無いから良いが、子供の頃に飼っていた犬……人狼たちは、リードを引っ張りぱなしで散歩が大変だったのを思いだした。

 町から1キロは離れた集落で散歩道も田んぼや畑のある農道だったこともあり、人が居ないのを確認してから、リードを離して自由に走り回せたりしたけど……


 比較的に都会なこの場所で離して散歩は出来ないから、リードをしっかり持っている。

 う~ん、ドッグランなんて有ったかなぁ~

 帰ったら、スマホで調べて見るかな。




 そろそろ戻らないと行けないかな。

 往復で 40散歩していることに成るからな。

 せっかくの休みだから、帰ってから二度寝するのも良いかな。


 ダイフクモチのリードを軽く引っ張り、


「帰るよ、ダイフクモチ ! 」


 と声をかけたけど……


「嫌でござる ! もう少しご主人様と一緒に散歩したいでござる !

 お父上の時は高齢だったので遠慮して、あまり散歩を出来なかったでござる。

 せっかく、ご主人様と二人きりの散歩だから、もう少し散歩をしたいでござる ! 」


 ダイフクモチには、父さんのことで借りもあるから無理強いはしたくない。

 まあ、御褒美だと思い、もう少しだけ付き合ってやろう。


「じゃあ、少しだけだぞ、ダイフクモチ 」


「だから、大好きでござる、ご主人様 !」


 はしゃぐダイフクモチを見ながら散歩を続けたのが失敗だった。


「そろそろ帰ろう 」


 と言う度に、駄々をこねて散歩を継続させようとするダイフクモチに負けて…………家に帰った時にスマホの時計を見たら2時間は過ぎていた。

 甘く考えていたようだな。

 大型犬の運動量を舐めていたわ !

 それ以上に、オッサンには流石にキツいから、次からの散歩は誰かに頼もうかな ?




 ! そうだ、確か お客様の対馬つしまさんの息子の俊夫としおくんが、ヒキニートに成って困っていてアルバイトを探していたようだから頼んでみるか !

 朝夕の散歩なら外に出て運動も出来るし、対人関係が苦手なようだから、犬の散歩なら打ってつけだよな。

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