第30話 日常は妖怪、吹き溜まり ⑥

【玉藻 改め タマside】


 わたしは人間に助けられたのは知っている。

 あれほど人間を憎んだわたしが、人間に救われるなんて皮肉だわ。


 封印したのも人間なら助けてくれたのも人間なんて……


 近くに居た、猫又……否、猫魈だわ 珍しい !


「ねえ、わたしを助けてくれたのは、人間と貴女なの ?

 わたしの名前はタマ……アレ ?

 もう一度、わたしの名前はタマ……

 どうして最後まて名乗れないのよ ! 」


 わたしが憤りをしていると、


「やあ、お気の毒さま。

 ボクの名前はサファイアだよ。

 見ての通り猫魈さ。

 ごめんね、玉藻タマモ

 キミが弱っている時に七之助が知らずにをしてしまったんだ。

 まあ、そのお陰でキミは消滅しないで済んだんだけどね。

 キミは今日からと云う名前に成ったから、よろしくね。

 はからずも名付けをして、キミのご主人に成ってしまった七之助を恨んでもいいよ。

 まあ、キミはラッキーだったから、かなりマシな名前に成ったんだけどね 」


 猫魈サファイアがフザケたことを言っている。


「ちょっと待ちなさいよ、わたしは猫じゃ無いのよ!

 タマなんて名前は猫の名前じゃないの !

 わたしは由緒正しい大妖怪、九尾の狐なのよ !

 タマなんて、あまりにも ありふれた名前じゃないんだからね ! 」


 いくら弱っていたとは云え、とんだ不覚だわ!


「妖怪、あきらめが肝心だよ、タマ !

 いにしえからの決まりなんだから、いい加減にあきらめた方が楽になれるよ 」


 ウグゥゥ、屈辱くつじょくだわ !

 昔、平安の頃は、恐れられた九尾の狐の玉……


 もうー嫌ぁ~!


 そんな、わたしを化けタヌキがなぐさめてくれた。


「わたし『タヌキ娘』と名付けされた。

 タマは、まだマシ !

 サファイアに聞いたら、七之助の名付けのセンスは、かなり変 !」


 ああー、昔が懐かしい !

 無事に力を取り戻しても、名前タマは変えられないのね!


 今の尻尾は三本、まだまだ妖力が足りない !

 もうすぐ、四本に増えそうだけど憂さ晴らしをしないと爆発しそうだわ !





「見つけたぞ ! お化け屋敷と云う噂のある家に隠れるなんて卑怯者め !

 出てこい、福岡田七之助 !

 この須々木野誠が天誅をくだして、栞さんを化け物屋敷から救い出してやる ! 」


 表がウルサイわね、不快だわ。

 ……あら、サファイアだけで無く、タヌキ娘や猫又の雰囲気が変わったわね。


「ねえ、サファイア。

 あのウルサイ男は誰なのよ、教えなさいな ? 」


「アノ尻軽年中発情男は、ボク達の敵だよ !

 キミのご主人の七之助や栞ちゃんの幸せを踏みにじる悪い奴さ ! 」


 さっきまでは、飄々ひょうひょうとしていたサファイアが凄く怒っている。

 丁度良いわね。


「わかったわ !

 憂さ晴らし……助けてもらったご恩返しにアノ男をヤれば良いのね ! 」


 わたしが ヤル気満々に成っているのに、


「気持ちは理解出きるけど、に殺してはダメだからね !

 平安の頃と違って現在は、いろいろと面倒臭いんだからね ?」


「ハイハイ、いろいろと面倒くさいわね。

 それなら 心胆寒からしめて、二度とこの屋敷に来られないように化かしてやるわ ! 」



 ♟♞♝♜♛♚


 その後……


「ウギャァァァァァ ! お化け屋敷の噂は本当だったぁ~ !

 よくも僕をだましたな、福岡田七之助 !

 覚えておけよぉぉぉー? 」


 尻軽年中発情男は捨て台詞を言い残して逃げ帰ってしまった。


 これからだったのに !

 根性無いわね、現代人は。

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