第31話 日常は妖怪、吹き溜まり ⑦

【七之助side】


 仕事が終わる頃に、遼さんからスマホに電話があった。


「七之助、いいか !

 あと少しだけ頑張ってくれ !

 今、須々木野のボンボンの婚約者の両親と逢う約束を取り付けた。

 須々木野の家も彼女の家との繋がりを無視出来ないハズだから防波堤くらいには成るだろう。

 時間が無いから電話を切るが、油断するなよ !

 ヤツのようなタイプは、手に入らないと成ったら無理無茶無謀をするからな ! 」


 栞さんにも電話の内容を伝えて警戒することにした。

 流石に犯罪みたいなことはしないと信じたいけど、特権意識を持っている奴は厄介だから気をつけるに越したことは無いハズだ。


 俺達の会話を聞いたのか女将さんが、


「須々木野さんの会社は、確かウチのお得意様の下請けの会社だったと思うから連絡してみるわ。

 あそこの社長夫婦は学生時代からの付き合いだから事情は聞いてくれると思うの。

 流石に圧力は無理でしょうけど、相手に対して牽制くらいには成るはずよ 」


 もしかして、仁くんや勇気ちゃん達のことかな ?

 偉く成ったとは聞いていたけど……


 でも 社会では、いろいろあるから あまり宛てにしない方が良さそうだな。



 ♟♞♝♜♛♚


 無事に家に帰るとサファイアから聞いた報告に俺達二人は驚いてしまった。

 須々木野の執念を甘く見ていた自分が情け無く成って下を向いていたら、


「七之助さんは悪く無いんですよ。

 わたしだって、須々木野さんが此処ここまで追いかけて来るなんて思わなかったんですから 」


 そうだ、足らない処は、ふたりで補いながら生きるのが夫婦なんだと俺の両親も言っていたのを思い出した。


「大丈夫だよ、七之助 !

 此処には、ボク達も居るから七之助や栞ちゃう位は守ってあげるからね。

 それに強力な仲間も増えたから安心して良いよ 」


 サファイアと共に昼間に助けた子キツネが一緒に居た。


 もしかして強力な仲間と云うのは子キツネのことだろうか ?

 確かに尻尾が三本あるけど……九尾の狐の尻尾は九本だよな。

 残りの六本は失くしてしまったのだろうか ?


 俺の疑問に答えるように子キツネが話し始めた。


「わたしを助けてくれてありがとう、ご主人様。

 名付けに対しては不満はあるけど、不可抗力だと云うことで我慢するわ。

 わたし達、妖狐は『目には目を歯には歯を恩には恩を』がおきてだから、ご主人様を守ってあげるわ 」


「「 それは、ご丁寧にありがとうございます」」


 思わず、俺と栞さんは一緒に御礼をしていた。

 子キツネ……妖狐は少しあきれた顔をしているような気がしたのは気のせいかな。


『ネッ、ボクの言った通りだろう。

 お人好しな二人だから、ボク達が守ってあげる理由が理解出来たかい、タマ 」


「ええ、充分に理解が出来たわ、サファイア。

 危なかしくてほっとけないわね、新しいご主人様は 」


 なんか、デスられている気がするんだけど……



 ガラ ガラ ガラ


 玄関の扉が開いたことに警戒していたら、


「ただいま、お土産をもらった !

 雪子が『皆で食べてください』と言っていた 」


 タヌキ娘が持ってきた土産を見ると、アイスの詰め合わせとドライアイスが入っていた。

 どうやら、タヌキ娘は散歩したついでに、アイスクリーム屋さんに寄ったようだな。


 あとで、御礼を言わないといけないなぁ~。

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