第28話 日常は妖怪、吹き溜まり ④


【サファイアside】


 九兵衛に案内されて行った、お稲荷さんの裏に確かに居た、妖狐が。

 一緒に追いてきてもらった七之助と栞ちゃんもいるから安心だね。


「尻尾が三本もあるぞ、サファイア !

 もしかして、この子も妖怪かい ? 」


 七之助が心配そうに聞いてきた。


「うん、間違いなく妖狐だよ、それも大物かも知れない。

 近くに妖怪のお医者さんが居るから連れて行ってよ、七之助 ! 」


 七之助は持ってきたレジャーシートに妖狐を乗せている。

 感染症が恐いからと、ビニールの手袋をしていた。

 野生の狐ならともかく、妖狐には寄生虫なんか居ないんだけど、今は緊急時だから黙っていよう。


「それで、何処に連れていけばいいんだ、サファイア ! 」


 七之助が心配そうに聞いてくる。


「大丈夫だからな、すぐに病院に連れて行ってやるから、もう少しだけ待ってくれよ 」


 七之助が妖狐に語りかけている。


「コ~ン!」


 小さく鳴く妖狐、人間不振だろうに 優しく言葉をかけられているせいか、七之助を見て信用したみたいだね。

 まったく、またタラしているんだから油断出来ないんだよね、七之助は。


「キミは妖狐なんだろう。

 呼ぶのに不便だから名前を教えてくれないか ? 」


「……タマ……


 妖狐は安心したのか気絶してしまったみたいだね。


「わかった! だな、すぐに病院に行くから待ってくれよ、! 」


 ア~ア、名付けをしちゃったよ。

 ボク、知らないからね!




 ♟♞♝♜♛♚


【七之助side】


 公園の近くにあるアイスクリーム屋さをに案内された。


 えっ、ここは美人姉妹が経営するお店だけど、サファイアの奴、間違ってないか ?


 俺の視線に気がついたのか、サファイアが


「ここはが経営している店なんだよ。

 見た目は人間と一緒だから気づかなくても仕方ないよ、七之助 」


 サファイアが店に入って行くと直ぐにアイスクリーム屋さんの雪子さんと雪美さんが出てきた。

 彼女達と視線が合うと、人差し指を口に宛ててウインクをしてきた。


 口止めをすると云うことは、雪女だと云うのは本当みたいだ。

 栞さんなどは事態に付いてくるのが精一杯のようだ。

 仕方ないよな。

 ついこの間までは、妖怪の存在なんて創造上の話だったんだから。


「あらあら、まあまあ、ずいぶんと大物を連れて来たわね、サファイア !

 わたし達も見るのは初めてよ、なんて大物は ! 」


 アレ ? 今、何と言いましたか、雪子さん。

 聞き間違えたんだよな、きっと、たぶん。


 俺や栞さんの様子を見たのか、サファイアが


「もうー !

 ふたり共、ニュースくらい見ていないのぉー !

 ニュースで、殺生石が壊れた事を放送していたのに知らないなんて、ダメな大人なんだから!

 ボクだってニュースを見て社会に乗り遅れないようにしているのに、一体ふたりは何をしているのさ !? 」


 俺も栞さんも反論が出来ないでいる。

 俺は仕事から帰ったら晩御飯やシャワーを済ました後は、趣味の小説を読む書くしているから、BGMかわりにニュースを聞き流している。

 栞さんも小説を読むのが好きらしいから、俺と同じようなものだろう。


 しかし、ニュースをチェックしている猫だなんて、サファイアに負けた気がするのは気のせいだろうか ?

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