第27話 日常は妖怪、吹き溜まり ③

【サファイアside】


 にゃんゴローやウッシッシ達が一斉に抗議しているのに、七之助や栞ちゃんは感謝されていると勘違いしていた。


「もー!もー!もー! オッチャンには、いつも美味しいご飯をもらえているから感謝しているけど、わたしの名前を付けたことだけは納得していないわ ! 」


 ウッシッシが一番怒っているけど七之助には、


「ニャア~オ ニャア~オ ニャア~オ ニャア~オ !」


 と節を付けた鳴き声しか聞こえてないから無駄なんだ。


「あきらめろ、ウッシッシ。

 オッチャンのネーミングセンスが最悪なのは身を持って知っているんだろう。

 ここにいる皆が、オッチャンの犠牲者なんだから、そんなに怒るなよ 」


 にゃんゴロー親分見習いが、ウッシッシをなぐさめているけど、


「にゃんゴロー親分は良いわよ !

 まだネコらしい名前だから !

 わたしの名前なんて、よ !

 あまりにもヒドイと思わない、ねえ皆 ! 」


「そうだよ ! オイラなんてだぜ !

 って、なんだよ !」


「ガンモドキに賛成するのはしゃくだけど、名前に関してはオレッチも賛成だ !

 メンチカツだぜ、オレッチのじい様がコロッケだからって、ヒドイだろう。

 オレッチの兄妹は揚げ物シリーズなんだぜ。

 エビフライにヒレカツにカラアゲは、名前の意味を知った時に泣いていたぞ !」


「……ウン、オハギはマシな方だったわ。

 お気の毒さま、皆」


 ウッシッシ、ガンモドキ、メンチカツ、オハギが言っていることを、言葉の通じない七之助や栞ちゃんは、盛大な勘違いをしている。


「ねえ、サファイア。

 まさかと思うけど、貴女の名付けをしたのもオッチャンなの? 」


 ウッシッシがボクの事をにらみながら質問してきた。

 ウワァァァ、こっちに飛び火してきたよ !


「違うよ ! ボクの名付け親は別の人さ。

 でも、七之助の家に居る三毛猫のさくらは、七之助が名付けをしたそうだけど 」


 それを聞いた皆が一斉に、


「「「「「

 ニャア~オニャア~オヒイキだ、ヒイキだ ニャア~オニャア~オ差別反対、責任とれオッチャン

 」」」」」


 皆が猫たちが抗議しているのに、


「良かったですね、七之助さん。

 猫ちゃん達が感謝しているみたいですよ 」


 なんて栞ちゃんの言葉に、ウンウンとうなずいている七之助。


「ちょっと、サファイア !

 アンタは人間の言葉を話せるんでしょう。

 だったら通訳しなさいよ !」


 ウッシッシがボクに文句を言ってくるけど、


「だったら、ボクと契約してに成るかい。

 自分のことは自分でやるのが、猫世界の常識だろう。

 どうする、ウッシッシ ? 」


「嫌よ、わたしは普通の猫生を生きるんだから ! 」


 即答だね、ウッシッシ。

 キミのひい祖母さんのウッシーにも同じように断られたのを思い出したよ。


 にゃんゴロー親分たちも誘ったけど、皆に断られてしまったね。

 アノ性悪詐欺ウサギモドキと違って、ボクは本猫の意思を尊重するから引き下がるけど、気が変わるかも知れないから待ってみるよ、皆。




「大変だぁー、大変だぁー、にゃんゴロー親分 !

 お稲荷さんの裏で知らない動物が倒れているよ !

 普通の動物じゃないぜ、尻尾が三本もあるんだ ! 」


 商店街の蕎麦屋の九兵衛飼い猫が大慌てで乱入してきた。


 ……どうやらボクの出番のようだね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る