第21話 なんか妖怪 ①


「そうか、さくらとサファイアが前に『居る』と言っていたのは、タヌキ娘のことだったんだ 」


 俺がタヌキ娘の頭を撫でながら言うと、


「違うよ、お兄ちゃん !

 家に入ってから、のに気がつかなかったの ? 」


「さくら、大人である七之助や栞ちゃんには見えないんだよ 」


 さくらとサファイアが不穏なことを言っている。

 見えない妖怪だと !

 やっぱり、ぬらりひょんでも居るのか?


「違うよ、七之助はダメだなぁ~。

 ぬらりひょん なんて妖怪の親分がいる訳……いる訳……放浪癖のあるアノ爺なら可能性はゼロでは無いけど、今は居ないよ。

 今、居るのは、だよ。

 知っている、七之助 ? 」


 いるのかよ、ぬらりひょん !

 それより、サファイアが言った もう1人の妖怪の名前が気に成った。


「『座敷わらし』なんて、超有名な妖怪じゃないか !

 猫魈なんてマイナーな妖怪より知っている人は多いと思うぞ ! 」


「悪かったね、マイナーな妖怪で !

 デリカシーの無い人間は嫌われるよ、七之助 !

 ボクは心が広いから許してあげるけど、気の短い妖怪も居るから気をつけてね 」


 サファイアに言われたことに反論が出来なかったけど、


「他にも妖怪は居るのか、サファイア ? 」


「居るよ、数は少ないし多くの妖怪は隠れて出て来ないけどね 」


 ◌太郎の世界は本当だったんだな。


 ジィィィー !


「 タヌキ娘が何か見続けているんだが、まだ腹が減っているのか ?」


 口さみしい時に食べる為に取って置いた干しいもを出したら匂いを嗅いだ後、パクリと食べた後、


「美味しい、もっと食べたいからちょうだい頂戴な 」


「これ、全部あげるから食べていいよ。

 買い置きは、まだあるから欲しかったら、またあげるからね 」


 タヌキ娘の頭を撫でながら言うと、うれしそうな顔をして、うなずきながら食べている。

 美味しい物を食べている時の笑顔を見ていると、こっちまで嬉しく成ってしまう。


「……タラシだね、七之助は。

 無自覚なタラシは困ったもんだねぇ。

 栞ちゃんも気をつけなよ !

 婚約者だと安心していたら、、何処かの誰かに 」


 サファイアの言葉に栞さんとさくらが反応して訴えるような目で見ている。


「誤解をするようなことを言うなよ、サファイア !

 栞さんもさくらも信じてくれよ、俺を !

 俺は浮気なんて絶対にしないよ、誓っても良い 」


「でも、お兄ちゃん。

 ときどき他のの匂いがするんだけど、知らないとは言わないよね ! 」


 さくらが俺の手を見ながら言った。


「いや、それは店の庭にいる野良猫たちにごはんエサをあげていたら懐かれてしまったんだよ。

 決して浮気している訳じゃないんだから信じてくれよ、さくら ! 」


 他の猫を撫でた手を洗わないと、噛みつくんだよな、さくらは。

 犬がヤキモチ焼きなのは知っていたけど、猫もクールなイメージに反して意外とヤキモチ焼きなんだよな。

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