第22話 なんか妖怪 ②


 タヌキ娘が美味しそうに干しいもを食べている様子を見て思い出したのか、さくらとサファイアが騒ぎ出した。


「そうだ、チュ◌ル !

 買い置きがあるのを知っているんだからね、ボク。

 化けタヌキなんかより、ボク達を大事にしてよ、七之助 !」


「そうだよ、お兄ちゃん !

 ボクだって、チ□ールを食べたいよ ! 」


 サファイアとさくらは、本当に食いしん坊だよな。

 妖怪と言っても中身は食いしん坊の猫そのものだ。

 ふたりに急かされるように茶の間に戻ろうとしたら、タヌキ娘も追いてきた。


「チュー◇とか言うのも美味しかった。

 わたしも食べたい 」


 タヌキ娘の言葉に、


「ダメだよ、ボクの分が減る !

 化けタヌキは、少しは遠慮と云うのを覚えた方が良いよ ! 」


 よっぽど好きなんだな、チュ◌ル 。


「あの~、七之助さんは、さっきから『タヌキ娘』と呼んでいますけど、この娘化けタヌキの名前が『タヌキ娘』なんですか ? 」


 栞さんが不思議そうな顔をして聞いてきた。


「アレ ? おかしいですか『タヌキ娘』

 □太郎の猫娘から付けたのですけど。

 猫娘、アニメの猫娘はブサ可愛いですけど、タヌキ娘は本当に可愛いから『タヌキ娘』では、かわいそうかな ? 」


 店の庭に居る野良猫たちに名前を付けた時、親方や女将、お客様まで、俺の名前のセンスはおかしいと言われていたけど、猫たちは皆、喜んでいたと思うんだけどなぁ~。


 昔で言えば、にゃん太郎やウッシー、オコゲにコバン、名付けた時は皆が喜んでいたと思う。

 今居る、にゃん太郎達の孫や曾孫たちも名付けをしたら子猫だったにも関わらず喜んでいたぞ、にゃんゴローもウッシッシも。


「いやいや、凄くおかしいから、七之助のセンスは!

 にゃん太郎親分たちは知らないけど、ウッシッシは凄く怒っていたよ 」


 サファイアの奴、また勝手に心を読んだな。


「ボクは自分の名前の『さくら』を気に入っているけどなぁ~ 」


 さくらが、ニッコリしながら俺に加勢してくれた。


「たまには良い名前もつけられるんじゃないか ! 」


 たまには、とは失礼な !

 お店のお客様にも評判が良いのに 。



 ♟♞♝♜♛♚


 さくらやサファイアにチュ◌ルを渡した後、タヌキ娘の名前を考えてみた。


「タヌ吉、タヌ子、タヌ美、ラスカルはアライグマだし、ラフタ◌アは版権で怒られそうだし難しいなぁ~ 」


 俺が真剣に考えているのに、栞さんはクスクス笑っていた。


 サファイアはあきれたように、


「タヌ吉って男の名前じゃないか !

 本当にセンス無いねぇ、七之助 」



 クスクス クスクス !


 栞さん以外の笑い声が聞こえてきた。

 サファイアやさくら、タヌキ娘を見たけど笑っている様子はない。

 もしかしたら、妖怪か ?


 声のする方を見ても何も見えない。


「そうだった、敷わらしの姿は純真な子供にしか見えないだ。

 まあ、最近は純真な子供も少ないからおさなご幼子にしか見えないかも知れないね」


 サファイアが説明してくれた。

 長生きしているだけあり、物識りだよなぁ~。


「少しだけなら見えるようにしてあげようか ?」


 俺の返事を待たずにサファイアが俺のよじ登りはじめた。

 そして、まさにサファイアをかぶる状態に成った時に見てしまった、見えてしまったのだ。

 確かに和服は来ているが、今風にあか抜けた美少女が居た。






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