(2) ビトーの独白、二十年の歩み
あの二十年前の
案の定僕らはまた徘徊していた
デグゥは戦果の一つも挙げられずにひどく落胆していたけれど、僕は親友のデグゥと冒険した事実、そして彼の気持ちが確かめられたことが何より嬉しかった。
そんなデグゥも次の年には呆気なく死んでしまった。
誰よりも生命力に溢れていたデグゥ。
彼は馬車に荷物を運ぶ荷役の作業中に、盗賊団の襲撃に巻き込まれて死んだ。
盗賊の銃弾を頭部に受けたデグゥはその場に昏倒し、激しい銃撃戦が行われる中、医者に診られることもなく絶命した。戦時中であったことから葬式も省略され、僕とミヤはデグゥの死を悲しむ時間すら許されず、彼の遺体は両親の墓の中に速やかに収められた。
デグゥが死んで数カ月後には、僕ら兄妹もとうとう孤児院を追い出されてしまった。
たった五枚の銅貨を渡されて退去を命じられた僕らは、見捨てられた孤児お決まりの浮浪児となり、すぐに町のゴミを漁るような生活を強いられた。
来る日も来る日も腐ったクズ野菜にありつくような生活に耐えられず、身体の弱いミヤはすぐにガリガリにやせ細り、誰も知らない路地裏で眠るようにあの世へ旅立った。
――死なんて呆気ないものなんだ。
デグゥとミヤの死で僕は悟った。そしてそんな単純で決定的な思いが臆病な僕を変えた。ミヤと一緒にいた頃にあった絶対に死ねないという思いは、そのミヤが死んだことで簡単に消え去っていた。
僕は生存率が限りなくゼロ%に近い軍の少年部隊に入隊し、そこで強制的な人格形成訓練を受けたのち、本物の戦場という地獄を十三歳で経験した。
僕ら少年兵は軍略もくそもない、やけっぱちの人海戦術のただの駒。数合わせの兵隊だった。部隊を率いる冷酷な指揮官は、僕ら少年部隊の命など始めから勘定に入れないかのように、毎回激戦地の最前線へと激励も容赦もなく送った。
僕はそこで学んだ。この世界は正気の沙汰ではない、何か間違っているものであやふやに構成されて偶然成立しているのだと。
そしてそれこそが僕らが認識すべき正しい世界の姿であり、僕らが今まで思い描いていた現実は、所詮絵空事の虚像に過ぎなかったのだと。
だけど僕は生き残った。たくさんの仲間たちの屍を踏みつけて、僕はあの現実から逃げることに成功した。僕は胴元が必ず勝つ博打の賽を律儀に振って、圧倒的に分の悪い賭けに奇跡的に勝った。そしてその末に、平和と自由という褒賞を自らの手で勝ち取った。
だから僕には、誰にも批難されることなく、目の前の幸福を享受する権利があるはずなんだ……。
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