第19話 嗚咽

「オェェ...!!!うぇっ...!!

うぅ....ハァ...ハァ...!オェェ...!」

薄暗いトイレに葵の嗚咽が響いている。

「オェェ...うっ....

気持ち悪い...」



トイレの外では眠ったみのりを抱いた大和と花が話をしていた。

といってもほぼ大和が喋って花が相槌をうつだけのようなものだ。

「なぁ、あいつ大丈夫なのか...」

「....」

「俺たちの為とはいえ、やっちまったのは...」

「...うん」

「わり、今の無神経だった」

「ううん」

そう答える花の目には泣き腫らした跡がある。

さらにいえば目の焦点があっていないようなボーッとした感じがする。

なにか取り返しのつかないミスをした後の放心状態に近い。

少しすると葵がでてきた。

「お、き...」

でてきた葵の顔を見た大和は絶句した。

顔に残る涙のあとにも驚いたがなにより精神のあまりにも落ち着いた雰囲気に飲まれた。

「あれ?どうしたんですか?

顔になにかついてます?あ、ちょっと泣いちゃいまして...」

つよがってる顔じゃない...

なんでこの子の心は安定してるんだ?

人ひとり殺してるんだぞ。

こすりに擦ったせいで目が真っ赤になってるのはわかる。

でもなんでそんなすぐに切り替えられてるんだよ。

どんな精神力なんだよ。

隣の花も葵の様子がおかしいことには気づいていた。

だが、何かを言おうとして言えない様子だ。

たぶん言葉が出ないんだろう。

俺たちを助けるために手を汚したんだもんな。

そりゃ俺たちから慰めの言葉なんてかけられるわけない。

でもこのままほっとくわけにはいかない。

今は平穏でもいつかは限界がくる。

それなら少しでも軽減してやることが助けられた俺たちのやるべき事だよな。

「なぁ、ちょっとショッピングモールに戻んないか?」

「えっ?」

「あそこならいろいろあるだろ?

それに...いろいろ疲れただろ

少しくらい...な」

「...うん

うん、葵ちゃん!」

意図を察した花が乗ってきてくれた。

「え、えっと...じゃあ私も...?」

「やったー!それじゃいきましょー!」

「えっ!今からですか?」

「善は急げって言うしね!

行こ!」

「ああ!」「はい!」



~市街地エリア~


(で、アレ誰だ)

ショッピングモールのある市街地エリアまで来たものの...

エリアの入口に誰か立っている。

(敵意はない、大丈夫だ)

(ほんと?もしもって事はないの?)

(ねぇよ、あいつの心に誰かを傷つけたいって気持ちは微塵も感じねぇ)

草陰に隠れてヒソヒソ話をしていると

「あの〜」

「「「!?」」」

「あ、驚かせちゃったかな

僕、真田聡介

聡介ってよんでね

攻撃とかしないし大丈夫だよ〜」

な、なんだろう...

嘘じゃないとは思うけど。


なんとなくイメージとしてはふわふわしてる...?

でもなにか足りないような気もする。

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