第18話 代償

「はぁ...はぁ...」

結構時間が経ったちゃった...

2人とも無事だよね...

みのりちゃんは安全な場所で寝かせてる。

私の能力で隠したし、見つかることは無い。

そうこう考えながら走っているうちに街が見えてきた。

ここまできたら消耗なんて考えてる暇はないよね。

「よし...」


花が与えられた能力の1つ"反射"。

手のひらで触れた対象をなんでも跳ね返せる未知の物質へと変化させる。


この辺の草を結び合わせて...

この辺をちょちょっといい感じの形にして...

よし、踏み台の完成。

これで一気に葵ちゃんのところまでいける!

「じゃーんぷっ!」

花は踏み台に飛び乗るとぴょーんと街の方へと飛んでいった。


勢いよく飛び出した花だったが、街の上でふわふわと浮いていた。

さて、ここからどうやって葵ちゃんを探せばいいのやら...

(うーん、時間短縮はできたけど葵ちゃんを探し出す方法までは考えてなかった...)

いくら頭を回転させてもいい考えは浮かばない。

キラッ

ん?今光った!?

たしかにピンクの光が見えた。

あんのジジイ!

待っててね!葵ちゃん!

花はピンクの光が見えた街の端へと飛んでいった。



間に合っ...

花の目に映ったのは仁王立ちのビーム爺と息も絶え絶えに横たわる葵を守るように立ち塞がる大和だった。

ボロボロで動けそうもない2人に対して、老人は今にもビームを撃ちそうな勢いだ。

「ごめんな...お前まで巻き込んじまった...」

そう言うと、大和は膝をついた。

「きに...しないでください...」

葵はにこっと大和に微笑んだ。

「せめて...」

大和は体を引きずりながら葵に寄り添った。

「遺言は終わりか」

ビーム爺はドスの聞いた声で2人を見下ろしながら言った。

その目は弱者を蔑むようなクズの目そのものだ。

「悔しいなぁ」

心に思っていた言葉が口に出ていた。

その言葉を聞いた時、ビーム爺の口角が上がるのがわかった。

そして、ビーム爺は今まで見た中で1番太いビームを撃ち出した。

「覇ァッ!!!!!」


ピンクの光がスローに見える...

これが走馬灯かぁ。

花さん、みのりちゃんと一緒に逃げきれたかなぁ。

私が死んだって分かったら悲しんでくれるかな...

....

今はまだ...

死にたく...ないなぁ....

最後に会いたかったなぁ。

「ーーーーーめーーーー!!!」

あれ、なにか聞こえる....

「だーーーーめーーーー!!!」

えっ!?花さんの声!?

「葵ちゃんはまだ死んじゃダメ!!!」

2人の前に降り立った花は手のひらを地面に当て、地面から大きな何かを引きずり出した。

黒い...箱?

その箱の左右のドアはひとりでに開き、中から黄金の鏡が現れた。

現れた鏡はビームを全て跳ね返した。

反射されたビームはビーム爺を飲み込み、粒子となり消えた。

そして、黒焦げになったビーム爺が倒れた。

「アレで原型は残るんだ...」

呆れながら花は膝から崩れ落ちた。

「花...さん...」

もぞもぞと葵と大和が這いながら寄ってきた。

「お前...あんなことできるなら最初から」

「ちょっと私に時間ちょうだい

ほんとに時間ないからお願い」

これから話すことがいい訳では無いと言うのは彼女の目で分かる。

なにか使わなかった理由があるのだろう。

「ちょっと巻きで話すね」


花が最初から大きな鏡を使って反射しなかった理由。

それは能力を使用した際のデメリットが関係していた。

能力"反射"

花は反射する能力を独自の解釈で"鏡"へと変化させていた。

この変化が曲者で能力の更なる多様化が可能になった反面、能力の振れ幅次第でデメリットがつくようになってしまったのだ。

そして"鏡"の能力の代償は"花の記憶から特定の人物が消える"こと。

つまり、強力な能力を使うほど花は人との繋がりを失うこととなる。

これが花が能力を使うことを躊躇っていた理由だ。

それに拍車をかけていたのが次に花の記憶から消えることとなる人物の存在だった。


「私の親友だったやつ

次に私の記憶からいなくなるのがアイツじゃなかったら躊躇ったりしなかった」

だったやつ...?

過去形...?

「もう死んじゃってるんだけどね...」

あ...

「背格好とか葵ちゃんに似ててね

あ、性格はぜんっぜん違って大雑把でやけっぱちだった」

背格好が似てる。

つまり私にその子の面影を感じて...

「まあ、なんであれ忘れたくなかったんだよね...」

「なんで言ってくれなかったんだよ...

そんな大事なこと...」

「だからごめんって

そんでね、そいつの名前

私の代わりに覚えててほしいんだ」

「それならメモにの」

喋っている途中で口を塞がれた。

「ダメだったよ

大事にメモに残して、それを見てもただの文字にしか感じないのはもうコリゴリだよ」

虚しい。

ペンで書いても血で書いても同じ。

それがどれだけ大切な人だったのか、血を分けた兄弟なのか、どうでもいい他人なのかわからない。

それなら何も無かったことにしたい。

でも、覚えていて欲しい。

誰かの記憶に残ってて欲しい。

だから、私の大切な人に大切な人の名前を託します。「絶対、絶対覚えててね

私の大切な人

〇〇〇」

名前を言い終わるとフッと意識を失い倒れた。

「覚えておきます...絶対に」

「え?なにが?」

花が起きた。

復活が早い。

そしてもう忘れてしまっている。

残酷な代償だ。

「い、いえ、ななにもなないですよ!

助けてくれてありがとございます!」

「ううーん、なんか変な感じするなぁ

なんか泣いてたみたいだし」

「いやいや、ほんと助かったぜ

ありがとよ」

「なんかあんたにお礼言われると気持ち悪い」

「は!?なんでだよ!」

このやり取りを見るとさっきまでのことがなかったみたいに思える。

ビーム爺なんていなかったみたいに...

え...

どこいったの!?

たしかにそこにいたはずだ。

「ん?どうした?そんなキョロキョロして」

「そうだよー?さっきから...

あ!なんか隠してるのかな!?」

「え、あ、あの...ビー」

葵が花に焦点を合わせると、そこにはいてはいけないものがいた。

いや、現れたと言った方が正しいのかもしれない。

黒焦げのビーム爺が拳を花に振り下ろそうとしていた。

「あ」

あぁ、ダメだ言っても間に合わない...

なにか対策を...

どうすれば...どう...


Bang!


考えるよりも先に体が動いていた。

「はぁはぁ...はぁはぁ...」

勢い良く撃ち出された"爪"はビーム爺の脳天を簡単に貫いた。

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