第17話 ビーム爺
4人は落ち着いて話し合う為に地下へと降りてきた。
「反撃するっていってもやりすぎはダメだ
あくまで"反撃"で"攻撃"じゃない
難しいと思うけど相手の命を脅かすようなことはしないでくれ
...お前らには手を汚して欲しくないしな...」
大和はバツの悪そうな顔で言った。
(お前らには...?)
なにか...隠しているのかな。
あ、だめだめ。
変に疑っちゃ悪いよね。
「もし」
「?」
「もしあのビーム爺が葵ちゃん
いえ、葵ちゃんだけでなくここにいる3人の誰かを手にかけるようなことになったら」
「その時は俺がやる
できるならそんなこと考えないでくれ」
大和の顔に嘘偽りは無い。
本気で人を殺す覚悟をした眼をしていた。
「...わかった」
真剣な顔の大和を信じることにした。
「で、具体的に対策なんてあるの?」
大和は作戦とはよべないようなお粗末な対策を提示した。
何度か意見や変更が加えられ、やっと作戦としての形ができた。
「まだ改善の余地はあるけど時間もないし、お粗末だけどこの手でいくしかないわね」
「お粗末で悪かったな!」
「ま、まぁまぁ」
葵はまたみのりをおんぶした。
そして、3人は地上へとでた。
先程までは気づかなかったが、いつの間にか揺れは止んでいた。
「ビーム爺のビームが止んでる
お前ら気ぃつけろよ」
3人は恐る恐ると瓦礫と化したビルから顔をのぞかせた。
いない、ここにもいない。
あれ?もしかして私たちがどこかに行ったって勘違いしてくれた?
よかった〜、できれば戦いたくな
「いた」
デスヨネ
花の手招きするほうへ駆け寄り、瓦礫の隙間から顔をのぞかせた。
そこにはまた仁王立ちしたビーム爺の姿があった。
「また仁王立ちしてる...
威圧感あるから嫌なんだよな」
なにが目的なんだアイツ...
寝てる訳じゃないよな、あんな無防備に姿を晒すわけ無い。
俺たちを誘き出す罠か...?
視覚を閉ざしてほかの感覚を研ぎ澄ましてるのか...
分からん、嫌なことばっか考えちまう。
「い、今がチャンスじゃないですか?」
「えっ」
「ね、寝てるようですし...
今なら戦わずにこっそり逃げれそうじゃ...」
「た、たしかに
そうだよな!俺なんか裏読みしてたわ
罠なんじゃねぇかって
そうだよな!すっごいチャンスだよな!」
「そ、そうね!
逃げましょ!リスクは避けたほうがいいわよね!」
なんだ...
俺の考えすぎか。
葵に後押しされてなかったら考え込んで動けずにいたままだったかもな。
助けられちまった。
「さあこっそり逃げる作戦に変更だな
いくぞ」
「うん!」
いつの間にか起きていたみのりが元気な返事をした。
「あっ!」
「みのりちゃん!静かに!しー!しー!」
大和はぎょっとした顔で瓦礫の隙間からビーム爺の方を見た。
ビーム爺に動きは無い。
先程と変わらぬ仁王立ちで君臨している。
「セ、セーーフ...」
「焦った...」
「俺もだ...よし、気を取り直していくぞ
静かにな」
「はい(小声)」
3人が街の出口に歩き出した瞬間、何かが先頭にいた葵の前を通り過ぎた。
あ、なにか嫌な予感がする。
ボトッ
大和の腕が地面に落ちた。
「えっ」
「う、嘘だろ...おいおい待て待て
あああああああ!!!!」
大和の声にならない叫びが周りに響き渡る。
「見ちゃダメ!!!」
葵は咄嗟に振り向こうとしたみのりの意識を"奪った"。
強引だがこれが最善、正解だ。
「そ....それで...いい」
涙でグシャグシャの大和が腕を押えながら親指を立てた。
「そのまま」
あ、この後「みのりをつれて逃げろ」って続くんだろうなぁ。
大和さん、死ぬ気だよね。
それ、やだなぁ。
みんなで逃げないと意味ないよね。
だったら...
「あの!」
葵は花の前に立った。
その体は震えている。
「ど、どうしたの?」
「だ、誰にも見つからない安全なところにお願いします」
葵はみのりを強引に花に渡した。
「えっ」
急だったので花は受け取ってしまった。
「あ、ダメ!葵ちゃんはダメだよ!
みのりちゃんと先に逃げるなら葵ちゃんが!」
「お願いします」
「...!」
今にも泣き出しそうな顔してなんでそんなこと言えるの...
なんで...
「もう!早めに戻ってくるからね!
それまで絶対無理しないで!分かった!?」
「...約束はちょっとできないかもです...
でも...待ってますね」
「うん!」
花は泣きながらみのりを抱えて走り出した。
行ってくれた。
でも...怒ってたなぁ。
あとでまた怒られるかな。
あ、私もうあとのこと考えてる。
目の前に怖いおじいさんがいるのに。
「大和さん、手伝ってくれますか?」
「あた...りまえだ...!」
花さんには"待ってる"って言ったけど、みのりちゃんも見てないし。
万が一が...あるかもしれないし...ね。
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