配信前1
ついにVママ会を明日に控えた金曜日。
なんとTwitterのDMを通して、同コーナーに出演する絵描きのディスコードグループに招待されました。
初めましての方ばかりなので物怖じしたけれど、企画で共演する手前、流石に拒否するわけにもいかずおっかなびっくりで参加させていただいたのだ。
グループに招待してくださったのは、かさいねおさん。
ここでの初めましてとなったのでかさいねおさんがどういった方なのか、男性なのか女性なのかさえもわからない中でのご挨拶となった。
同コーナーに出演する他の絵描きさんは既にグループに参加していて、出演交渉と同じく私が一番最後に参加した形となる。
これに関しては私の出演が確定していなかったからなのだろうけれど、何にしても一番最後というのは微妙な気分になる。
参加はしたけれど、一応何か発言したほうがいいのだろうか。
私は高校のグループラインでも滅多に発言しないタイプだったから、まあ別にそのままでいいかなと思いつつ、念のため兎のキャラクターが「初めまして」とお辞儀しているスタンプを送信しておいた。
『ハリヤマさんだー!マ○カ頑張りましょうね!』
最初に反応してくれたのは、かさいねおさんだった。
今はどうやらグループ通話しているらしく、「作業」と書かれた部屋に他のメンバーが参加していた。
『今作業雑談してるのでよかったら通話上がってください』
うわ、もう親睦深めちゃってる感じだ。
既に出来上がってるグループの中に入っていくのは苦手だ。
もしかしたら元々仲の良い人達なのかもしれないけれど、それはそれで嫌だし。
通話に上がるか上がらないか考えた結果、今日のところは遠慮しておくことにした。
今日じゃなくてもいい。またお話する機会はあるだろう。
せめてイラストを描いている時なら良かったけれど、今は特に何もしていない。
だから作業通話は適切ではないだろうというのが私の考えである。
『今日は少し疲れてるので遠慮しておきます...すみません』
私は申し訳無さを感じつつ、ディスコードを閉じた。
*
『明日はVママ会があります。気が乗らない予定はキャンセルして明日はYouTube観ましょう。ゲスト盛り沢山でお送りします。これだけの絵描きさんを見れるのは恐らくVママ会だけです』
Twitterでもふもふ動画を漁っていると、星屑メルトさんのツイートが流れてきた。
私のTwitterはやはり絵描きさんのフォロワーが多いため、Vママ関連のツイートがここ数日よく流れてくるのだ。
星屑メルトさんのことはフォローしていないのに、今日だけで何回も彼女のツイートが流れてくることからもVママ会の注目度が窺える。
しかし他人事ではいられない。彼女の言う「ゲスト」には私も含まれているのだから。
しかもサプライズ枠として見積もられている。
星屑メルトさんに寄せられたリプライを見てみると、ちらほらとサプライズゲストが誰なのかと期待する声もあるし、私では力不足なのではないかと思ってしまう。
まあそんなに期待はされていないだろうけれど。
実際、サプライズゲスト(星屑メルトさんはシークレットゲストとも呼称していて、私の立ち位置があまり定まっていない感があるのはさておき)よりも企画内容や他の人気絵描き、Vtuberの方に視聴者の興味が向いているという感じだった。
それはむしろありがたい。満を持して登場! みたいにされると「誰だこいつ?」となりかねないからね。期待値は低ければ低いほどいいのだ。
というか、未だに星屑メルトさんとメッセージのやり取りをしていないのだけれどそんなものなのだろうか。
まあ彼女も主催として忙しいのだろうし、私も私で別に「挨拶なしなんて無礼な!」みたいな礼節を重んじるタイプではないので、このふわっとした感じもいいではないか。
そんな風にふわっとしながらも、開始時間は着実に近づいていった。
適度な緊張感を保ったまま夜を迎え、お風呂に入っていると。
『初めまして。連絡が遅くなってしまい申し訳ありません。今お時間大丈夫でしょうか?』
ついに星屑メルトさんからDMが届いた。
私は少しぴりっとした。
彼女からの連絡はもう来ないものとばかり思っていたから。
『星屑メルトさん、今回はお誘いいただきありがとうございます。時間は大丈夫ですよ〜』
もちろん、やり取りを拒む理由もないため私はそれに応じた。
『よかったです。こちらこそご参加ありがとうございます。灰崎ロナさんから聞きました。本当なら私から連絡差し上げるべきだったのですが』
『お気になさらずに〜。主催お疲れ様です』
『ありがとうございます。そしてもう一つお詫びしなければならないことがあるのですが...ハリヤマさんへの出演交渉が遅れた結果、シークレット枠になってしまいました。そこは大丈夫でしょうか...?』
なるほど、そこの確認のために連絡をくださったのか。
そんなこと気にしなくてもいいのにと思いつつ、主催としては念には念を入れておこうということなのだろう。
『大丈夫ですよ』
本当は複雑だけれど、わざわざ言うことでもないので本心は心に留めておいた。
『シークレットと言ってもそんなに大々的にって感じでもなく、ゲストはハリヤマさんでした〜みたいにするのでプレッシャーに感じないでいただけるとありがたいです』
『私もそのほうがいいです』
『一応企画の流れとかは明日一通り説明します。緊張せずにリラックスしていただければと思ってますので明日はよろしくお願いします』
そこで一つだけ確認しないと気が済まないことがあったので、念のため確認しておいた。
『私クソつまんないですけどいいですか?』
『ハリヤマさんのことつまらないなんて思ってませんが、Vtuberさんが面白くしてくれると思うので大丈夫ですよ〜』
『それはよかったです』
絵描き人生で恐らくこれが最初で最後になるであろう大型企画への参加。
主催、共演者の方々に迷惑をかけるようなことだけはしないようにしないと。
私は無事にコラボを終えることができるか、それだけが心配だった。
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