第12話「誕生日プレゼント」

「――何をしてるのよ、あなたたちは……」


 玄関で起きているカオスな状況を見て、今しがた来た吹雪が眉を顰めた。


「氷坂……本当に来たのか」

「意外、姫花ちゃんの嘘かと思ったのに」


 吹雪が来たことで、莉音と美玖は驚いた表情を浮かべる。

 それによって、姫花が物言いたげにムッとした。


「二人とも、今の言葉聞き逃さなかったからね?」

「ま、待てよ! 俺は別に悪く言ってねぇだろ!?」

「そうだよ、美玖もちょっと口が滑っただけだよ……!」

「美玖、後でお話ししようね?」

「ひっ!?」


 姫花がニコッと笑みを浮かべると、美玖は青ざめた表情で莉音の背中に隠れてしまった。

 笑顔が怖かったのだろう。


「姫花ちゃん、みんなに中に入ってもらったほうが……」

「あっ、そうですね」


 母親に言われ、姫花はみんなをリビングへと案内する。

 部屋の中は、誕生日会用に装飾されていた。


「ねぇね、あそぶ?」


 部屋の中に入ると、紫苑がクイクイッと服の袖を引っ張ってきた。

 早く遊びたいらしい。


「ちょっと待ってね、みんなもいるから」

「ぶぅ……!」

「よしよし」


 不満そうに頬を膨らませた紫苑に対し、姫花は頭を撫でることで留飲を下げようとする。

 そして、狙い通り紫苑の頬はみるみるうちにしぼんでしまった。

 この子は、頭を撫でられるのが好きなのだ。


「えっと……」


 姫花は、視線を莉音たちに向ける。

 こうして誕生日会に呼んでみたのはいいものの、姫花にとって誕生日会は初めてのものだ。

 どうしたらいいのか、全然わからなかった。


 そうしていると、莉音と美玖がゴソゴソッと手提げ鞄を漁りだす。

 次にどのような行動をとるかわかった姫花は、思わず身構えてしまった。


 そして――。


「「はい、姫花(ちゃん)。誕生日おめでとう!」」


 包装紙に包まれた箱を、姫花に渡してきた。


「あ、ありがとう、二人とも……」


 友達から誕生日プレゼントをもらうのが初めてな姫花は、目頭が熱くなってしまう。

 中学の時には無理だったけれど、こうして自分に誕生日プレゼントをくれるような友達ができて、胸が熱くなったのだ。

 正直、初めて友人から誕生日を祝われた瞬間だった。


 こうなってくると、流れ的に皆の注目は、まだプレゼントを渡していない吹雪に向いてしまう。


 すると、吹雪は若干照れくさそうに、鞄からプレゼントを取り出した。


「私は、何を持ってこようか悩んだのだけど……あなたの趣味なんて知らないから、ケーキを作ってきたわ」

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