第8話「人気者来襲、騒ぎになる教室」
「――おいおい、姫花正気なのか!?」
「姫花ちゃんのチャレンジ精神、ほんと凄い尊敬する~」
翌日の昼休み、莉音と美玖は姫花のあとをついて行っていた。
姫花の目的は吹雪を誕生日会に呼ぶこと。
それを聞いた莉音は心配してついてきており、美玖は面白そうだと思っている。
「もう、なんで二人ともついてくるの?」
「お前がまた、氷坂を怒らせないか心配だからだよ……!」
「美玖は姫花ちゃんの行くところなら、どこでもついていくよ~」
「たくっ、過保護なんだから……」
姫花はそう悪態をつきながらも、歩を進め続ける。
できれば、お昼も一緒に食べたいという願望があった。
そして、特別進学コースに着くと――。
「あれ、花咲さんじゃない!?」
「きゃあ、莉音様もいるわよ!」
「み、美玖ちゃんも、いいいいいる……!」
別のコースだというのに、学校で有名な三人が来たことで、軽い騒ぎになってしまった。
いや、普段別のコースでなかなかお目にかかれないからこそ、皆盛り上がっているのかもしれない。
「あっちゃ~、騒ぎになった……」
自分たちを囲むように生徒たちが来たので、姫花は頭が痛くなる。
さっさと吹雪を連れ出したいところだが――教室の中を見回すと、吹雪が凄く冷たい目でこちらを見ていた。
(うわっ、めっちゃ不機嫌……!)
そう思いながら、姫花は人込みを縫うようにして吹雪のもとを目指す。
集まってくる生徒たちは、莉音と美玖に任せておくことにした。
「あの、氷坂さん」
「話しかけないで、私まで巻き込まれる」
笑顔で吹雪に声をかけた姫花だが、返ってきた言葉はとても辛辣なものだった。
そのことに泣きたくなるが、グッとこらえる。
「えっと、お話があって……」
「私はない」
「そりゃあそうかもしれないけど……聞いてくれるまで、私ここにいるよ?」
それは、咄嗟に思いついた、吹雪への対策だった。
周りから注目されている姫花が留まるとどうなるか――それがわからないほど、吹雪も愚かではない。
「私に恨まれたいの?」
だから、吹雪も脅しへと移行する。
あくまで、姫花に付き合うつもりはないらしい。
「仲良くしたいけど、相手をしてもらえないと始まらないわけで……」
「…………」
吹雪は、人差し指を合わせながらモジモジとする姫花をジッと見つめる。
彼女の押しの強さと諦めの悪さは、既に経験済み。
ここで追い払うよりも早く、クラスメイトたちが集まってくるのが先だろう。
そう判断した吹雪は、仕方がなく席を立つ。
「どこに行けばいいの?」
「――っ!」
吹雪が付いてきてくれるとわかった姫花は、パァッと表情を明るくする。
そして、彼女の手を取った。
「屋上にでも行こ……!」
「触らないでくれる!?」
しかし、バシッと手を払われてしまう。
それによって、姫花は涙目になった。
「あっ、えっと……ごめんなさい、ちょっと強くしすぎたわ」
姫花を傷つけた。
それがわかった吹雪は、申し訳なさそうに謝ってきた。
「――っ。うぅん、大丈夫……! ごめんね、急に手を掴んで……! それじゃ、行こ……!」
吹雪は優しい。
そう思った姫花は、笑顔で彼女を誘った。
姫花の反応が予想外だった吹雪は、意外そうに目を見開きながら姫花を見る。
そして、彼女の手にお弁当箱が握られていたことで、思わず自分もお弁当箱を持ってしまった。
そのまま、二人は屋上へと向かったのだった。
「――いや、俺たちを置いていくなよ!?」
そんな、莉音の叫びに気付かずに。
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