第7話「正面からぶつかるしか」
【募集:好きな子をお誕生日会に招待する方法】
吹雪との一件があった日の夜、姫花は生配信を始めた。
どうにか、吹雪を自分のお誕生日会に呼びたいと思っているのだ。
『花姫、振られたのでは?』
『見た目通り執着心が強い』
『絶対ヤンデレ』
配信を開始すると、すぐにコメント欄は活気立ち始めた。
しかし、内容はどれも辛辣なものだ。
「ねぇ、思ったんだけどさ、あんたたちいつも酷くない? 実はツンデレなの? 好きな子にいじわるしかできない、小学生男子?」
コメントを読んだ姫花は、不服そうに目を細める。
すると――。
『ジト目きたぁあああああ!』
『今日はご褒美タイムが早い!』
変態コメントが、コメント欄を埋め尽くし始める。
(前々から薄々思ってたけど、私の視聴者ってドMの変態ばかりなんじゃ……?)
わざわざボコられにゲームをやりに来るし、高額スパチャを投げるなと言っても投げてくる。
そして、わざと怒られようとしている節があり、だんだん自分のチャンネルがやばくなっていくことを姫花は感じた。
「もう、馬鹿なこと言ってないでちゃんと考えてよ……!」
姫花は、バンバンッと机を手で叩く。
『そもそも、ここにいる視聴者に聞くのが間違い』
『彼女、いたことない』
『彼女? 何それおいしいの?』
「…………」
(そうだ、彼女持ちとか、私の配信こないよ……!)
まったくいないとは言わない。
だけど、姫花のファンは、オタクよりの男子や社会人が多いという認識だった。
その手の人間たちは、ネットでは強い言葉を発したり声高に行動するが、現実では教室や会社でヒッソリとおとなしくしている。
そもそも、異性と絡むことさえほとんどないのかもしれない。
姫花は、相談する相手を間違えたと自覚した。
しかし、莉音に相談しても無駄だと言われるだろうし、美玖は姫花のことを肯定しかしない。
家族になんて相談できないし、姫花はどうしたらいいのか困ってしまった。
そんな中――。
【花姫は魅力的だから、普通に誘ったらいいと思う¥5000】
フブキというアカウントから、励ましのスパチャが飛んできた。
思えば、告白を最初に促したのも、フブキだった。
「フブキ君……」
面白半分でしか返してこなかったのに、真っ当な言葉が来て姫花はグッと何かがこみあげてくる。
しかし、それは我慢して――。
「有難いけど、高額スパチャは投げないで……!」
相変わらず高額スパチャを投げてくることに、注意をした。
「まぁ、でも……やっぱ、正面からちゃんと誘うしかないよね。まずはお友達になりたいんだし……それで断られたら、今回は諦めるよ。正直言えば、誕生日って特別な日だから、その日くらいは好きな人と一緒にいたいけどね」
姫花はそう言った後、終わりの挨拶をして配信を終えた。
答えは出たので、また悪ふざけで高額スパチャが飛んでくる前に、手を打ったのだ。
「簡単にはいかないだろうけど、頑張ってお願いしてみよっと」
そう決意を固めた後、姫花は英気を養いに紫苑のもとに向かうのだった。
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