第40話
和也達と別れてすぐにラインに連絡が入った。
『五分以内に例のトイレの場所まで来て下さい』
相手は白鳥だ。上司の連絡みたいなもんだ。遅刻したら殺される。全裸の写真をネットに流されて社会的に死ぬ。
俺はスマホを仕舞うと駆け足で目的地に向かった。
目的地に辿り着くと白いワンピースを着た黒髪の美少女が風で靡く前髪を手で抑えて佇んでいた。美少女は風一つで絵になる。学校とはまた違った雰囲気の白鳥に不覚にも見ほれてしまう。
なんで美男美女ってどいつもこいつも風使いなんだよ。
「白鳥、待ったか?」
そう声をかけると白鳥が振り向く。
「いや、こっちも今解散したところだよ」
気を遣っている、と言う事は白鳥に限っては無い。その言葉は白鳥とは無縁の言葉だ。恐らく本当に今着いたところなのだろう。
「そうか」
「どうやら作戦は成功だったみたいだね」
今回の台本は全て白鳥がワードで作成した。
そして俺は白鳥の台本通りにオラオラ系を演じた訳だが、手応えはイマイチだった。
完全に桐生キレてたしな。
やる前より寧ろ好感度落ちてるんじゃないか、と不安になる。
だが白鳥曰く今回の作戦は成功らしい。
これは俺がおかしいのか、それとも白鳥がおかしいのか。
「八重島くんもやれば出来るんだね。ほんの少し見直したよ」
ニヤッと笑って真っ白な歯を覗かせる白鳥。
その小悪魔じみた表情に不覚にもドキッとしてしまう。
これは仕方ない。不可抗力だ。こいつ容姿だけは完璧だからな。
俺は心情を悟られぬ様に白鳥から視線を外して遠くを見た。
「そりゃどうも……」
「あれ? もしかして照れてる?」
核心を突かれて胸がドキッとする。
「照れてねえよ。お前自意識過剰すぎだろ」
「いや、私実際美少女だし? まあ私の私服を見て照れるのは仕方ないよ」
事実美少女なので反論出来ない。
「あれ? どうしたの? 反論しないの?」
そうニヤニヤと笑う白鳥は悔しいが可愛かった。
「……で、これからどうするんだ? まさかただ喋る為にここに呼び出した訳じゃないんだろ?」
俺は自分の感情を誤魔化す様にそう言った。
「うん、軽くお茶でもしてこうと思って──八重島くんのお金で」
最後の一言がなきゃ完璧なんだがな。
最後の一言のせいでレンタル彼女じみてる。
「サイゼでいいか?」
「耳ついてる? 私お茶って言ったんだよ? まあ仮にこれがデートだとしても最低の回答だけど」
「いや、サイゼも案外悪くないぞ。ドリンクバー頼めば安上がりだしな」
「何出費抑えようとしてんの? 殺すよ?」
内心を見透かされてる。
「じゃあどこが良いんだよ」
「スタバ」
「さいですか……」
俺たちはスタバに向かった。
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