第39話

「なら人のセリフを取らなかっただけ良しとするか……」

「しかしお前もよくやるよな」

「どう言う意味だ?」

「だってあのギャルをずっと見張ってたんだろ?」

「いや、そんな事してたら流石に通報されるから。普通にゲーセンで時間潰してたわ」

「でもそれじゃギャルの動きが分からねえだろ?」

「問題ない。内部に協力者がいる」

「──協力者?」

「女子が休日に一人で出歩く訳無いだろ。彼女は同じクラスの友人と買い物に来ていた。俺はその友人から逐一ラインで連絡をもらっていた。そして彼女にはタイミングを見計らってトイレに行ってもらった」

「京也が女子とライン? 美人局じゃなくて?」

 

 お前失礼過ぎだろ。


「付き合いの長い友人だ。信用できる」

「京也に女子の友達ねえ。ちょっと気になるな。写真とか無いのか?」

「無いぞ」

「──お前それ本当に友人か?」

「京也見栄を張るのは辞めなって、京也に女子の友達なんている訳ないでしょ」


 こ、こいつら……


 ここは俺の名誉の為にも何とかしなければ。

 俺だって仲間内では見栄を張りたい。俺は急遽ラインで白鳥と連絡を取る。


『一枚お前の写真を送ってくれないか?』


 すると速攻で既読が付き返信が返ってくる。


『……卑猥な事にでも使う気?』


 心外だ。まさかそんな風に思われていたとは。


『違えよ。俺に女子の友達が居るって証明したいんだよ』

『私を見世物にしたいって訳だ。猿回しみたいに』


 その言葉は俺の胸に重くのし掛かる。


 何をやってんだ俺は……復讐とは関係ない私用で他人を利用しようなど。


『すまない、そうだよな。変なことを言って済まなかった。さっきのは忘れてくれ』


 俺はその返答を最後に『ラインを閉じよう』とホームボタンに親指を伸ばすが、ホームボタンに触れる直前に返信が返ってきた。


『いいよ、あげる』


 その文章の直後、写真が送られてくる。

 写真には制服姿の白鳥が写っていた。


 俺は驚き、目を見開く。


『どうして……』

『飴と鞭は使い様って言うでしょ? たまには餌付けも必要かな、と思って』

『ありがとよ』


 俺はその返答を最後に写真を保存しラインを閉じると、写真のアプリを立ち上げ先程保存した写真を画面全体に表示させた。


「随分時間が掛かった様だけど、成果の方は?」

「ふふ、問題ない。見て驚くなよ」


 俺は誇らしげに二人に画面を見せる。

 すると二人は予想通り鳩が豆鉄砲食らった様な顔を見せた。


「驚いたよ、一体どんなオークやドワーフが出てくるかと身構えていたけど、いざ蓋を開けてみれば天使だったとは」

「……京也これ美人局だぞ?」

「間違いないだろうね。アングルからして盗撮って線もないだろうし」


 ──こいつら本当に友人か?


「お前毎月幾ら払ってるんだ?」

「レンタル彼女じゃねえよ」

「──じゃあなんで彼女みたいな絶世の美女が京也みたいな普通の人と一緒に居てくれるの?」


 ごもっともだ。

 客観的に見ても俺と白鳥は釣り合わない。俺は速攻でそれらしい理由を考える。


「B専なんだと」

「「ああ、なる程……」」


 いや、納得するなし、否定しろし。


 何とも複雑な心境だ。


「腹減ったな、なんか報酬に奢ってくれよ」


 別にこれぐらいならいい。

 現に俺は二人を労う為にここに呼んだ。


「サイゼリアで良いか?」

「お前、今まであんなにサイゼ嫌がってたのにどうしちまったんだよ……」


 何でサイゼ行くぐらいでこの世の終わりみたいな顔してんだ。


「まあ色々あったんだよ」


 俺はそう言って足を進める。

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