第37話
初めて同年代の男子に面と向かって叱られた。
頭ごなしに叱りつけるんじゃなく、ちゃんとあたしの意見を聞いた上で。
なんだか心がもやもやする。
そのもやもやはいつまで経っても晴れる事はない。
何なのよ、何なのよ全く!
「……どうしたんだ桐生?」
八重島が不意に下から覗き込んできた。
「──え?」
目と目が合う。
その刹那、まるで火山が噴火した様に心臓が大きく跳ね上がった。
あたしは即座に顔を逸らす。
顔が熱い。鼓動は先程の噴火を歯切りにドンドン早まっていく。
一体どうなってんのよ!
理解が追いつかない。まるで自分の体じゃないみたいにコントロールが効かない。
初めての感覚にあたしは戸惑う。この感覚はあたしの理解が及ぶ範疇にない。
「……本当に大丈夫か?」
八重島はあたしの顔が逃げた先に回り込んでそう言った。
「──え?」
再び目が合う。
その刹那、ボンッと顔から湯気が噴き出た──と錯覚する程に顔が熱くなった。
あたしは即座に顔を背ける。
完全に油断していた。二度目はないと勝手に思い込んで余裕ぶっこいていた。
あたしは今回の失敗を肝に銘じた。
ななななんなのよ──!
あたしは自分の感情に振り回される。
八重島の顔を直視出来ない。
だが八重島は諦めない。再びあたしの顔が逃げた方向に回り込んでくる。だがあたしもこればっかりは譲れない。
今のあたしは一体どんな顔をしてるか見当も付かないのだから。
あたしの名誉にかけても顔を見られる訳にはいかない。
そしてお互いの意地と意地がぶつかり合う視線の追いかけっこが始まった。
「……大丈夫か?」
あたしを心配するならその行動を直ちにやめなさいよ!
だがそんな事は口が裂けても言えない。
そんな事を言えばあたしの感情を見透かされる恐れがあった。
違う、これは違う!
体が熱く胸がドキドキするのは先程の恐怖の余韻が残っているせいだ。
そうに違いない。
あたしがこんな冴えない男に恋する訳ないのだから。
あたしはそう誰に言われるでもなく言い訳する。
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