第23話
俺は今サイゼリアに向かっている。
俺は休日に帝にサイゼリヤに呼び出された。
何故密会場所がサイゼリアなのか。
『もっと適した場所は幾らでもある』と思うが。
かと言ってそれをラインで聞く訳にもいかない。
『迂闊な発言はするな』と釘を刺されている。
店内に入ると帝がこっちを見て手を振っていた。
帝が座っている席は窓側のテーブル席だ。
「何名様でしょうか?」
店員が寄って来た。
「……連れが先に来ているんで」
そう言って足を進める。
良かった、噛まなくて……
「久し振りだな京也くん」
俺が帝の向かい側に腰を下ろした直後に帝はそう言った。
「しかし何故ここに? 人目のつかない場所の方がいいのでは?」
来る前からずっと思っていた疑問を開幕ぶつけてみる。
「木を隠すなら森の中、と言う言葉があるだろ? サイゼリアで密談している、とは誰も思うまい」
帝はそう言ってドヤ顔した。
いや、ドヤ顔する様な事じゃねえから。
「は、はぁ……」
俺は呆れを隠さず溜め息をつく。
まさかそんなしょうもない理由でサイゼリアに呼び出されるとはな。
「休日のサイゼリアは家族連れや学生でワイワイと賑わっている。こちらの会話に耳を傾けてる人なんていないさ」
まあそうだろうけど。
「で、その格式張った格好はなんなんですか?」
帝は黒のスーツにネクタイを締めていた。
少なくともサイゼに来る格好ではない。
「君こそそのカジュアルな服装はなんだ?」
俺の服装はジャージだった。中学の頃のジャージだった。
「別にいいじゃないですか?」
「何を言っている? ここはイタリアンだぞ?」
サイゼリアをイタリアンって呼ぶ奴、初めて聞いたわ。
「茶化さないで下さい」
すると帝は肩をすくめて見せた。
「私用で出掛ける際にスーツを着るのは長年染み付いた癖みたいなものだ。気にしないでくれ」
いや、気にするわ。癖でスーツ着る奴とか初めて聞いたわ。
「ご注文は如何致しますか?」
そのタイミングで店員が注文を取りに来た。
こいついつの間に注文ボタン押したんだよ。俺まだ決めてねえぞ。
こういうのは普通、俺に確認を取ってから押すべきであろう。
これじゃゆっくりメニューも見れない。
まあ適当に見て決めるか……
帝の非常識さに呆れつつメニューに手を伸ばそうとしたところで──
「ミラノ風ドリアを二つ」
帝がそう言った。
何で俺の分まで勝手に決めてんだよ。
「ドリンク──」
「必要ない」
食い気味で遮るな。『バー』まで言わせてやれよ。ほら、店員さんも引き攣ってんじゃねえか。
「いい加減ドリンク代ケチるのやめた方が良いですよ帝さん……」
まさかの知り合いかよ。知り合いなのに引かれてたのかよ。
「水で十分だろ。お前が払ってくれるなら頼んでも良いが?」
「あ、そうですか。てか、今日は違う子供と来てるんですね? この子は──帝さんの子供じゃないですよね?」
あの……人の顔見て判断するのやめてもらっていいですか? 確かに俺は帝と比べてブサイクだけど。
「ああ、友達の子だ」
「へー」
嘘でも少しは興味あるフリしろよ。悲しくなるだろうが。
「納得したなら仕事をこなせ。俺はお前と世間話をしに来たんじゃないんだぞ」
「てっきり理由を付けて私に会いに来てるのかと持ってましたよ」
何だよそのツンデレ、少女漫画かよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます