第16話
俺なんて弄られ過ぎて並大抵の事じゃ動じない精神を獲得してしまった。
メンタルは刀の製造過程の様に叩かれれば叩かれる程、強度を増す。そう言う意味では俺のメンタルは江戸時代に名を馳せた名刀レベル。そんな名刀を以てしても女子とまともに会話する事は不可能だがな。だがこれは仕方ない。ド○ゴンボールのシェンロンだって自分の力を超える願いは叶えられないだろ? つまりそう言う事だ。
「ちょっとあたしの話聞いてんの、テカテカ丸?」
その声にハッと我に返る幕内。
テカテカ丸って何だよ。ハゲにつける
「……そうだったな……俺が教員かって話だったな……必要とあらば教員免許を見せるが……」
「は? 冗談に決まってんでしょ? 何マジに受け取っての? 一回死ねば?」
こいつ担任の事サンドバックか何かと勘違いしてる? スマブラに出て来るサンドバックくん並みにボコボコにしてるけど?
「良い大人が筋肉ムキムキのタンクトップって、必死にキャラ付けしようとしてて見てて痛々しいわ」
これに関しては激しく同意する。桐生は皆の意見を代弁してくれた。
英語の教師とか特にそれな。リピートアフターミーって授業中うるせえし、日常会話にも時折英語混ぜて生徒を試して来るからな。漫画の師匠キャラかよ。何で日本人なのに日本語喋んねえんだよ。個性出そうと必死過ぎだろ。俺なんて生まれてこの方──無個性だぞ? そのうち正義の象徴が能力引き継がせに来るレベルで何も無いんだぞ?
「これが正装だ」
シスターの修道服みたいに言うんじゃねえ。その服装に格式ねえだろうが。
「あんた間違いなく他の教師から嫌われてるわよ。暑苦しくて汗っかきで臭いってね」
後半の部分は分からないが、前半の部分は間違いなく合っている。
桐生のクラスを任されるぐらいだしな……
幕内は他の教員達から面倒ごとを押し付けられた。
皮肉にも桐生自身がそれを証明している。
「これ以上あたしに何か意見するなら上に直談判に行くけど? そうなったらあんたはクビね。物理的にクビが飛ぶわよ」
飛ばねえよ、世紀末か。
「わ、わかった! じゃあ桐生の次の生徒から自己紹介をしろ!」
いや、承諾すんなし、拒否しろし。
驚きの余り口調がギャルっぽくなってしまったのはご愛嬌だ。
これじゃ教師の面目丸潰れだな……
桐生を飛ばして自己紹介が再開される。
だが桐生が自己紹介をボイコットした事を歯切りに桐生の取り巻きも桐生と同じく自己紹介をボイコットし出す。
「私パスで〜」
親の真似をする子供か。
「ちゃんと自己紹介しろ黒崎!」
ドンッと学校から支給された備品を台パンする幕内。
老朽化を早めるので是非ともやめてほしい。ゲーセンだったら出禁食らうレベル。
こいつらホント桐生以外には強気だよな。
正に『同じ穴のムジナ』、似た者同士であった。
もうお前ら結婚しろよ。
「は〜い〜すいませ〜ん先生〜でも今日私のどの調子が悪くて挨拶出来ないんですよ〜」
現在進行形で矛盾する『黒崎』と呼ばれた女子生徒。
まるで先程の鬱憤を幕内にぶつけて晴らす様である。
俺の中学時代の後輩かよ。あいつら俺以外の先輩の前では『借りて来た猫』の様に大人しいからな。
「口から出任せをを言うな!」
幕内は再び台パンを繰り出す。
さっきからドンドンうるせえな。もう教師辞めてワ○ピースの効果音でも担当しろよ。
「教師が生徒の言葉を疑うって立場的に大丈夫なんですか〜あ、これってパワハラなんじゃ──」
ハッとワザとらしく口を抑える黒崎。
すると幕内はこめかみを押さえて溜息を吐く。
「もう良い座れ……」
『手の施しようがない』と悟ったのか、諦めの境地に入った。
黒崎は勝ち誇った様な顔をして腰を下ろす。
『叱られるうちが華』と言う言葉を黒崎は知らないのだろうか?
まあ幕内の場合は『名誉挽回』の意味の方が大きかったと思うが。
そして黒崎は席の近い取り巻き(同類)とハイタッチした。
「いえ〜
「これぐらい普通だよ」
……苺? 下の名前が『苺』って事は……フルネームだと『黒崎苺』かよ。斬魄刀振り回してそうな名前してんなおめえな。親御さん絶対ブリーチ愛読者だろ。
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