第37話 寄せ集めのパーティ
ヤム車の中で、シャルヴルさんの事を聞いた。
人工的に創られた世界「アラウザルゲート」、ただ使用者を強くする為だけに創られた世界。しかし、この世界には、いろんな亜人が進化し、生存している。
シャルヴルさんもその一人で、サファギン族と言う種族だ。
この世界を創造したアトランティス人のオルキルトさんが創造した種族かも知れないけど。
そうでないかも知れない。
この世界は生きているわけだから、生命が進化して知能を持ち、新たな種族を生み出す可能性だってあるわけだ。
そう考えると、簡単に世界のリセットなんて恐れ多い事だと思った。
そして、今は僕がその使用者だ。
これを生かすも消滅させるも僕の手の中にある。
この世界で一生懸命生きていく者達を見て、僕は一層守って行かないと行けないと思った。
◇
その日の夜。
一行はアイレンス・ボレスへ向かう途中で小さな村に立ち寄った。
小さな村では、
何故なら、村には塀が設けられている物の、魔物がいつ襲って来るか分からないこの世界では、戦える者がいると言う事はそれだけ安心できるからだ。
街での宿代は普通なら、一日一人銀貨1枚は取られるのに、こう言った村では一つの空き家の家代が一日銀貨1枚だと言う。
その空き家を借りた僕らは、村人から食材を買い、自分達で調理して夕食を摂った。
そして、その時にシャルヴルさんの話をビクタルさんは皆に打ち明けた。
「と言うわけなんじゃ」
「ほう…サファギン族ねぇ。魚が進化した亜人とはなあ…」
「ガラン。言い方気を付けなさいよ!あんただって犬が進化した亜人でしょうが?」
「ぐっ…ああ…わりいわりい…つい…って!おい!俺様は狼だ!、ああ、でも魚って言い方は不味かったな。すまねえシャルヴル」
チーヌに叱られたガランは、シャルヴルに頭を軽く下げてそう言った。
「問題…ない。気に…しないで…」
シャルヴルはそう答えた。
「ただ…ええと…どんな顔しているかだけでも見せて貰えないのか?」
「ガラン!!あんたほんとに失礼にも程があるわ!」
チーヌはガランに激怒して立ち上がった。
「チーヌ…良い…」
「え?シャルヴル、でも…コイツさあ!」
シャルヴルはガタっと席を立ちあがり。
鉄で覆われている兜のカチャカチャとロックを外した。
みんな、その様子を固唾に見た。
カチャリと兜をすっと脱いだ。
「え?」
「ほお…」
「‥‥‥」
「綺麗…」
皆の反応はバラバラだったけど。
僕はシャルヴルさんの顔を見て驚いた。
魚類が進化したと聞いた時には、シャルヴルさんには悪いけど…なんとなく凄い顔を想像したけど、そうではなかった。
意外に人間ぽい目鼻立ちをしていた。
青みがかった肌に少し鱗のような模様が入っていて。
目は、白目部分はなく、全て黒い瞳。
髪の毛は深い青色でボブショートヘア、髪からヒレのような耳が少し出て、首にはエラのような4本の線が左右均等に入っている。
「これで…良いか?…」
「あ…ああ、有難うシャルヴル…、俺、なんか、済まなかったな…」
「良い…」
ガランはもう一度シャルヴルに謝った。
すると、シャルヴルは兜を被り、席に座った。
「ふむ。シャルについてはここまでで良いかの?」
ビクタルがそう言うと、皆は頷いた。
そして更にビクタルは口を開いた。
「先ほどイロハ殿とイルメイダ殿には、道中のラマ車の中で、シャルの話以外に儂の生い立ちも語ったのじゃが。皆の前でも言おう。儂はシャルのお陰でAランク魔狩人になれただけのドワーフじゃ、それ以外何者でもない」
「ほう、ビクタルのおっさん。別にそんな事どうでもよくないか?何故そんな事喋るんだ?」
「ふむ。ガラン殿、ラマ車を降りてから、儂はお主の身体の変化に気付かぬとお思いか?」
「むう?俺様の身体?そう言えば…胴の防具がきつくなったような…」
ガランは自分の身体をあちこち確認する。
「なるほど。たしかにガランの身体が昨日よりも締まって見えるのは気のせいじゃないみたいですわね?」
チーヌはガランを見てそう言った。
「つまり考えられるのは、脳豆の効果が出て身体が強化されたと言う事じゃな?」
「おお!そう言えば、力が漲って来ている感じがするな!ガハハハ!…ん?でもそれとビクタルのおっさんの昔話とどう関係があるんだ?」
ガランはふと考え込む。
「ガラン殿。まだ分からんのか?」
「むう??」
「ふむぅ…、この寄せ集めのパーティはな。イロハ殿がいるお陰で最強のパーティになれる可能性があるって事じゃよ。脳豆を集めて食せば、儂らは更に強くなる。イロハ殿、イルメイダ殿、お主が強くなったようにな」
ビクタルはそう言った。
「そう言う事ね。確かに脳豆の力があれば、世界一の魔狩人に短期でなれる可能性はあるわね」
「な、なるほど…この寄せ集めのパーティが世界一になる…か?」
チーヌとガランはそう納得した。
すると、ヴィルトスが手を上げて、口を開いた。
「しかし…その昔の文献にも載ってないような脳豆を食して副作用とかないのでしょうかね?そのかわり寿命が縮まるとか…、強くなる変わりに何かを失うとか?…、薬草も食べ過ぎると劇薬になります。良い事尽くしな物なんてあるのでしょうかね?」
ヴィルトスの言葉で皆は、少し考える。
この脳豆は、アトランティス人がこの世界と同時に開発した物だ。
何故、このアラウザルゲート世界の中でないとこの脳豆って物は作れないのかは謎だけど…。
たしかにヴィルトスさんが疑問を言うのも分かる気がした。
今の所、オルキルトさんの本の中では、デメリットな事は書かれていない。
身体能力が向上するだけではなく、寿命も延びたと書いてあった。
唯一のデメリットとすれば…僕が昏睡に陥ったアレだ。
身体をちゃんと鍛えていないと、脳の活性化に身体がついていけない。
もう少しちゃんと鍛えてから、次の脳豆を食べるとして、それまでに見つけた脳豆は皆に食べさせても問題ないかもしれないと思った。
その後いろいろと、皆で話し合ったが強くなったら、ああしたいこうしたいと、届きそうな夢を語り合っていた。
◇
僕達一行は、数日を掛けてやっと人間の国「アイレンス・ボレス」へ到着した。
そこは凄く高い塀でどこまで続いているのかも分からないくらい大きな王都だった。
道中でガラン、チーヌがいろいろとアイレンス・ボレスと言う国について教えてくれた。
アイレンス・ボレスは第5世ボレス王が今は統治していると言う。
人間で王が第5世ならまだそこまで歴史が深い国ではない。
建国して180年と言うから、僕はそうだろうなと思った。
最初は人間同士、小さい町の統治者が争っていたようだが。
それを統一し、国として興した最初の統治者がアイレンス・ボレスって人でそのまま名前が国の名前になったらしい。
ボレス家は有能な6人の家臣が沢山いたお陰で、この国を統一する事が出来。
その家臣達がこの王都の周りの領地を統治しているのだそうだ。
ここまで来るのにその家臣1人の領地を通過してきたわけだが。
その町も立派だった。
いろいろな亜人種が行き来し。商売なども繁盛していそうな活気ある雰囲気だった。
そして、今はこのアイレンス・ボレス王都の門の前の行列に並んでいる。
一人一人、商人プレートや魔狩人プレートの確認をしている。
僕達は身元確認も終わり、鉄で出来た巨大な門の前を通過して中へ入った。
中に入ると凄い人でごった返している。
まるでテーマパークに入ったかのようだった。
遠くに大きな城の塔が見える。
多分あれが王城なのだろう。
僕達はまずは、ミロクさんに言われた通り、王都魔狩人協会の支配人アゼレスって人に会いに行くことにした。
◇
王都魔狩人協会の前についた。
石で出来た建物だったが、スタジアムを前にしているのかと思うくらいとても大きく。沢山の人が行き来していた。
「なんか…この王都もそうですが、魔狩人協会もエルフの国のと比べると凄く大きいですね?」
僕はそう呟いた。
「ああ?あったりめえよ。エルフの国なんて鎖国が活気づくわけねえじゃねえか。比べるとしても、アイレンス・ボレスとドワルフスミスは、エルフの国の何十倍は人が行き来していると思うぜ」
「へえ…そんなに人の流れが違うんですね?」
ガランの言葉に僕はそう返した。
「イロハさん。そもそも妖精種亜人エルフは外界の亜人を国に入れるのを拒む種族なんです。今はまだ交流がある方で、昔だったらハーフエルフでも国の中心には入れる事はないくらい掟が厳しかったんですよ。今は人間、獣人、ドワーフなどの各亜人種間の代表との魔狩人協会を通しての話し合いで、ある程度の決まりはあるものの、より良く互いの国民の生活を豊にしていこうと取り決めを決めたお陰で今がありますが、エルフの硬い掟は今だに多少は残っている為、鎖国と言われても仕方ありませんけど…」
イルメイダはそう七羽に言った。
「そうなんだね…」
まあ。イメージ通りと言うか。
今は交流ある方なんだねぇ…。
「そもそも、精霊力が強い国では強力な魔物が少ない。だからエルグラン・ルシール国に行く
チーヌもそう口を出して来た。
「なるほど」
そんな話をしている間に、ビクタルさんが魔狩人協会の職員にアゼレスさんって人に会いたいと伝えて、その職人は少し待つように言って何処かへ行ってしまった。
◇-----------------------------
後書き。
更新が遅くて本当に申し訳ありません。
近況報告にも書いた通り、執筆する暇が本当になくて合間に少しずつ考えて執筆してます。
なので、少しずつ間隔置いての投稿になりますので。
ご理解のほどよろしくお願いいたします。
リモデリング・ブレイン~オーパーツに隠された秘密~ 瑛輝 @eijyu_sinka
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