第22話 マジックアイテム
チーヌは宝箱を開けて中を覗く。
「うわあ、こいつは凄いかもしれないねぇ」
「何ぃ!?アイネ、もう良いだろ?」
「ガランさん駄目です!動かないでください。手首折れているんですから…」
「ぬうう。早くつなげてくれ!」
ガランはそう言いながら、自分が持って来た治癒薬を一本、一気飲みした。
チーヌは箱の中の物を一つずつ出して並べる。
先ずは軽装備な胸当て。
次に、角のような形をしているワンド。
更に、柄の長い戦斧。
そして、腕輪が一つ。
最後に、宝石が大小合わせて10個と金塊が5本。
「これで全部…だわね?」
チーヌはそう言ってニヤリと笑った。
「おおおおお!なんか凄そうな斧じゃねーか!」
「あ、ちょっと!ガランさん」
「アイネ。もう骨は繋がってるって!ほれ」
ガランはそう言って左手首をクイクイと動かす。
「今は、治癒薬と私の魔法の効果で一時的にそうなっているだけです!あまり動かすとまたポッキリいきますよ?」
「わかったわかった。安静にするからよぉ」
「全く…」
困り顔のアイネを後目に、ガランは迷宮品の並べられている場所へ歩いて行った。
「なんか凄そうな斧だな…おい、イロハ!倒れてないで鑑定してくれよぉ」
「ガランさん…イロハさんも今は大変なんですから」
「イル、大丈夫…ヴィルトスさんがくれた薬でかなり頭がしっかりしてきたから‥」
「ほんとに大丈夫ですか?…」
「うん」
七羽はゆっくりと立ってガランとチーヌのいる場所へ移動した。
並べられている武具などを鑑定する七羽。
胸当てをじっと見つめる。
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マジックアイテム:猛牛胸鎧
銀製
防御力 33
筋力上昇 4%
物理ダメージ吸収 5%
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僕は置いてある胸当てについて、鑑定結果を言葉に出して言った。
「ほう…、マジックアイテムの名前が猛牛胸鎧ってそう見えるのか?」
「はい、ガランさん。お店で売っている防具を鑑定すると、ただの剣とか…戦斧とかなんですけどね。これはマジックアイテムと出てますね。さっきのポインズンダガーにもマジックアイテムと見えてましたし、迷宮品のマジック付与品はそう見えますね」
「なるほど…猛牛とついている所を見ると、ミノタウロスからの戦利品だからそうなるのかねぇ…」
「かもしれませんね。他のアイテムも牛の角のような形や装飾からそう思います」
「ふむふむ…イロハ続けてくれ」
「はい、次はワンドですね」
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マジックアイテム:牛魔小杖
猛牛角製
攻撃力 2
魔法増幅力 +17%(土魔法+22%)
魔力消費減 -2%
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そう七羽が語ると、次はヴィルトスが食いついて口を開いた。
「イロハ殿。魔力減2%と言うのはそのままで分かりますが。その増幅と言うのは、つまり攻撃魔法が+17%強くなるって事ですよね?」
「だと思います、そして土魔法の追記は、土魔法に限っては+22%上がるって事ではないでしょうか?」
僕はRPGゲームでこういったのは見た事あるから、その解釈で間違いないだろう。
この世界だって、オルキルトさんって人が大昔のゲームを意識して作った物なんだから。
「ふむふむ。それは凄いですね…つまりは同じ火球でも、約1.2倍の強さで放たれるって事ですからね。しかし…そのパーセントなのですが、それって例えば、またミノタウロスを倒して、箱の中身から同じ物が入っていたとして付与されるマジックのパーセントは…」
ヴィルトスは顎に手を添えて考えながらそう言う。
「多分ですが。その時その時、付与される数字のパーセントはランダムなのではと思います」
「ランダム?つまり、これより数字が多い時もあれば、低い可能性もあると言う、時の運という事ですね」
「はい、やってみないと分かりませんが…多分そうです」
魔法士であるヴィルトスとアイネは、納得するように、うんうんと頷いていた。
「次は…この物々しい斧ですね」
「待ってましたぁ!」
ガランは七羽の真横に来てそう言った。
戦士だし、これが一番気になるのだろう。
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マジックアイテム:牛雷旋風斧
ミスリル製
攻撃力 121
筋力上昇 +11%
器用上昇 +4%
ライトニング発生率12%
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「と、見えますね」
「うおおおおお!イロハ!なんか凄くないか?」
「そうですね~。まずステータスが上昇するのは良い事ですし、それが二つも付与されていて、このライトニング発生率12%ってのは、確率の問題でしょうけど…おそらく攻撃12回に1度はライトニング魔法が発動するって事ですね。」
「うお?12回に1度?まあ‥それでも凄いんだよな!?」
ガランは息巻いてそう言った。
「なるほど。その確率で魔法士が刃に
「その理解で合っていると思います。ヴィルトスさん」
「なるほど…凄いですなマジックアイテムとは…大昔はそのような武具がゴロゴロあり、皆が熱狂して迷宮品を追い求めていたのがわかるような気がしますな」
ヴィルトスは感心するように頷いた。
僕はマジックアイテムと言う物を鑑定して、なんとなく分かったことがある。
これは前に皆にも説明した事だけど。
攻撃力や防御力の数値と言うのは、その物の大雑把な基本的目安な物だと言う事だ。特に攻撃力などは使う者によって10にも100にもなると言う事。
そして、その物に付与されるマジックは、ステータス上昇や発生率などの%は、ランダムに付与される。次にミノタウロスの箱を開けた時には違う結果ではないかと推測した。
後は、今回と同じ物がドロップされるのか、そうではないのか?それは確かめてみないと分からない事だけど…ある程度はそんな感じではないかと思う。
僕が創造主で、もしそれを固定するのなら、数字的な物は10や15、100や150など切りのよい数字で固定するはず。
固定しない方が、ガチャ的要素かもしれないけど、これが人間のやる気を増幅させる事も確かだ。
この手の昔のゲームを僕はやったことがある。
最近のMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインゲーム)は、リアルマネートレード(RMT)を防ぐ為に、ゲーム内でドロップする物は大体が同じ能力で、違っても他人にトレード出来ず。
昔はそんなの関係なかったから、ネットでゲーム内のアイテムや土地などを、現実世界のお金で取引も出来たらしい。これは、365日フルでゲーム内アイテムを稼ぐ中国人グループや、違法なチートボットなどが横行しただけでなく、引きこもりゲーマーやゲーマー廃人達を産んだのも問題になり、そういうゲームは今はあまり見ない。
9000年前、オルキルトさんが作ったこの世界「アラウザルゲート」の迷宮品とは、まさに今で言うガチャアイテムだ。
大昔のこの世界の人達は命を賭けてこの迷宮遺跡に入り、一喜一憂していたのだろう。
「…ロハさん!イロハさ~ん…」
「あ!ごめんごめんイル…何?」
「イロハさんって、たまに考えだすと、ぼーっとしたりしますよね…」
皆、僕をじーーっと見ていた。
「ああ、ごめん。後なんだっけ?…腕輪だね」
七羽は腕輪をじっと見て鑑定する。
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マジックアイテム:力の腕輪
ミスリル製
筋力上昇 5%
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「以上」
七羽はそう言って口を閉じた。
「ふむ。力が5%上がるだけでも価値はありますね、魔法士のような者が身に着けるより。特に筋力のあるガランさんのような方が身に付ければ、かなり違いがあるのでしょうから」
ヴィルトスはそう言った。
「そうだな!…それで皆、相談なんだが…」
ガランは少し申し訳なさげにそう言う。
「言いたい事は分かるわ。ガランあんた、斧とその腕輪が欲しいんでしょ?」
チーヌは眉を顰めてそう言った。
「まあ…それもあると言うか、ソレだな。ガハハハ」
ガランの笑いに、チーヌは呆れて小さな溜息をついた。
「まあ、良いのではないのでしょうか?この中で斧使える人いないし、先ほどヴィルトスさんが言ったように、力のある人が腕輪も装備した方が効率は良いと思いますし?」
「そうね、イロハさんの言う通りかも」
七羽の答えにイルメイダがそう言うと、皆、頷いた。
「やったぜ!ガハハ。皆、有難うなあ!ガハハハ」
「調子に乗るな、筋肉犬」
「むう?チーヌ、その暴言…今回は嬉しいから許してやる!」
「ふん」
ガランはチーヌの嫌味な言葉にも負けずそう言って、腕輪を嵌めて、牛雷旋風斧を手に取り大きく掲げた。
「で?この杖は魔法士の二人のどちらかとして。この軽胸鎧どうする?」
チーヌが話を進めた。
「私はいざとなれば弓がありますし、この鎧にはダメージ吸収とか付いてるし、剣で戦うイロハさんが装備した方が良いと思います」
皆がイルメイダの言葉に頷く。
「じゃあ…僕がこれ貰っとくね」
「うむ。後その小さなワンドはアイネにお渡しくだされ」
七羽の言葉の後にヴィルトスはそう言った。
「え?」
「私は長い杖の方が性にあっておりますゆえ。それにあの杖で治癒魔法を使えば17%も速く回復の手助けになります。今の所このパーティに治癒者は一人しかいないわけですからね」
「なるほど…分かりました。その杖は私が貰い受けますね」
皆頷く。
「これで装備の分配は終わり。後は大小の宝石10個と金塊5本、それからミノタウロスから出た大きな魔石3つ。これどうする?」
チーヌは床に全てをひとつに纏めた。
「それは、後から換金するでもして分配しましょうか?」
「賛成」
「私も」
「俺様も賛成だ」
「はい、従います」
「同意します」
七羽の言葉で、皆が納得し全ての分配は終わった。
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