第21話 連携の勝利
戦闘が始まり30分くらい経過した。
まだ皆に疲労感はない。
しかし、それはミノタウロスも一緒だった。4本の腕で巨大手斧をぶんぶんと振り回している。
七羽は、襲って来る斧を躱しつつ、その腕へ攻撃を繰り返しているが、薄皮一枚斬りつける程度だった。そして、周りを見ながら考えていた。
今はまだ良いけど、このまま消耗戦へとなれば、バカ体力のミノタウロスの方が有利になる。
イルの矢と細身の剣では、あの大きな体格と太さだ。
流石に致命傷を与える事は出来ないだろう。
ガランさんも、あの重装備でよく動いてる。ただ、盾で受け流しての攻撃ではあまり効果は無さそうだ。
ヴィルトスにしても、最初は獣に効く火魔法で攻撃を仕掛けていたが、皮膚の表面を少し焦がす程度で怯む処か、その程度ならとミノタウロスはヴィルトスの魔法攻撃を無視していた。
チーヌは、僕の付けた傷口を狙ってポイズンダガーを振り回していて。
その攻撃は見事に当たっているように見えるが…毒が効いているようには見えない。
「ブオオオオオオオオオーーーー!!」
突然、自分の攻撃が上手く当たらないミノタウロスは、ガランの盾が震えるくらい大きな咆哮を上げた。
「ぬお!」
「きゃ…」
その咆哮の後、立ち止まっていたアイネをミノタウロスは狙って斧を振って来る。
「え?…きゃあ!」
アイネが目を開け見えたのは大きな斧が迫って来る瞬間だった。
ギャン!!
アイネの前にはガランが立っていた。
「はっ…ガ、ガランさん…」
「前に出過ぎだ!早く後方に下がれ!」
「は…はい!」
ガランは自分で分かっていた。
今の攻撃をまともに受け止めたせいで、左手首の骨が骨折。左の肩辺りの骨もズキリと悲鳴を上げていることに。
「ちっ…」
ガランは盾をその場に投げ捨てる。
「ガランさん!すみません…治療を!」
「後にしろ、そんな時間はねぇ。ヴィルトス!さっき次元箱に突っ込んだ槍をくれ!」
「了解」
ヴィルトスは次元箱から、この階層で拾った鋼の槍をガランへ投げる。
ガランはそれを受け取り右手から脇に締めて構える。
危なかった…
僕も今の咆哮で一瞬だけど目を閉じて動きが止まってしまった。
ミノタウロスの目に留まったのがアイネだっただけで、襲われていたのが自分でもおかしく無かった…気を付けないと。
やはり魔法を使わないとコイツには勝てない。
ゴブリンジェネラルだったっけ?アレの時は咄嗟にガスバーナーを意識して魔法を具現化する事が出来て倒せたけど…
あの後、魔力枯渇でフラフラになった。
ちょっと怖いけど、この膠着状態の戦闘を変えるにはそれしかない!
七羽は、そう思いチーヌやイルメイダの動きを見ながらガスバーナー魔法を放つ方角へ移動を始めた。
「イル!あの魔法使うから!」
イルメイダは、七羽を見て頷いた。
チーヌ、イルメイダがミノタウロスから離れた瞬間だった。
七羽は両手首を合わせ、掌をミノタウロスに向ける。
両掌には赤い炎が生まれて一瞬でその炎は直線的にミノタウロスを襲う。
その炎は青い炎へ変化する。
「なんだ!?」
「何!?」
ガラン、チーヌは驚いた表情でそれを目視する。
「青い火…」
ヴィルトスも初めてみる魔法に驚く。
「グホオオオオオオ!ガフッ、ガフッ!」
七羽のその魔法は一気にミノタウロスの顔を焦がす。
息が出来ずにミノタウロスは藻掻いて4本の腕で顔を覆ったがその腕がジリジリと皮膚が捲れて筋肉組織を焦がす。
「グモモモオ…」
「今だ!イロハの魔法に気を付けて畳み掛けろ!」
ガランがそう叫び、槍を高速でミノタウロスの脚を突く。
チーヌは2本のダガーを逆手に持ち、並外れたバネのある体で勢いをつけ、全体重を乗せて首筋に突き立てる。
イルメイダが風魔法を乗せて矢を4本番え弓を引く。
「イルメイダさん!そのまま待ってください!」
「はい?」
「火よ。標的に届きし時、爆炎となりて敵を滅ぼせ!エンチャント、エクスプロージョン!」
ヴィルトスが呪文を唱え杖から放たれた魔法がイルメイダの放った矢尻へ吸い付く。
何をしたのか理解したイルメイダは、4本の矢を放つ。
風魔法を付与した矢は弧を描くように顔を守っている腕を回り込み後頭部へ向かう。
チーヌは矢を感知し、深く刺さっていた首筋のダガーを抜いて後ろへ飛び退くと、一気に傷口から血が噴き出した。ダガーは太い血管を切断していたのだ。
イルメイダの放った、4本の矢は後頭部辺りに刺さる。
すると、ヴィルトスの魔法が発動する。
爆発魔法が付与された矢尻が刺さった瞬間爆発を起こす。
ズガーン!
「グヌ…ガハ…」
ミノタウロスは動けないまま結構なダメージを受けて片膝をついた。
ガランは更に槍で力強く下半身を突いている。
七羽は魔力がなくなる感触を覚えてふらついた。
その瞬間にガスバーナー魔法は消える。
「はあ…はあ…はあ…ごめん。もう動けないや…」
「よくやったイロハ!後は俺達に任せろ」
ガランは七羽にそう言って、槍を上に滑らせ柄の一番下の方を持つ。
「うおおおおおおお!!」
ガランはミノタウロスへ突進する。
魔法が消え、顔を守る必要が無くなったミノタウロスの爛れた腕が開くと同時にガランは懐へ踏み込んだ。
「これで終わりだ!!」
渾身の力を込めた槍を懐から喉へ突き刺した。
刃の部分は比較的柔らかい喉の部分へ全て刺さった。
「グヌウ!」
4つの腕でガランを掴もうとするが。
一度、足を曲げ屈みこんだガランは、右手に強く握りしめた拳でジャンプするように、その槍の柄下を上へパンチする。
「ガッ!」
ゴズッ!
ボクシングで言えばアッパーカットみたいになり。
下から叩かれた槍は、喉から頭蓋骨を突き破り、頭頂部から刃が抜けて見えた。
大きなミノタウロスの体はそのまま後にズシンと倒れた。
暫くすると、ミノタウロスの体は粉が宙を舞うように消え去って行った。
「ふっ…殺ってやったぜ…はあ…はあ…」
「ガランさん!治療を始めます!」
「ああアイネ。宜しく頼む」
「んふふ、片腕と引き換えにアイネを守ってやるとはね。あんた見直したわ」
「はん?チーヌ、俺はいつもこうだってのよ!」
ガランはチーヌへ右手で力コブを作って見せた。
「イロハさん。大丈夫ですか?」
そうイルの声が聞こえた。
魔力を使い果たし、僕は朦朧としていた。
「イル…だ、大丈夫。ちょっと目眩がするくらいだから…」
「完全に魔力切れですね。でも、イロハさんの魔法がなかったら今回も危なかったです」
「ほんとですよ。あの魔法なんなんですか?初めて見る魔法だったのですが…興味深いですね」
ヴィルトスは七羽に近づいてそう言った。
「はは…ヴィルトスさん、それはまた今度説明しますね…」
「イルメイダさん、これを飲ませてあげてください」
「あ、それは魔素薬ですね。わかりました」
魔素薬とは、薬師が魔素を練り込んで作られた薬水である。
それを飲むと魔素が体へ流れ込み魔力回復の手助けを著しく上昇させるのである。
ガランの治療にアイネはつきっきりで。
イルメイダ、ヴィルトスは七羽の傍にいる。
チーヌは一人、周りを見渡す。
ミノタウロスが倒れた場所には、ガランがトドメに使った槍が転がっていて。
その近くには野球ボールくらいの魔石が3つ落ちている。
そして、その先に大きな宝箱が出現していた。
チーヌは宝箱を入念に調べる。
「罠は…ないか」
チーヌはそう言って箱に手を掛ける。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ファンの皆様。
途中からハートが…貰えてないので。
少しでも面白いと思う話はハートをください!w
あと、更新が本当に遅くなっていて申し訳ありません…
頑張って考えますが、時間が本当に欲しいです。。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます