第7話 1%
味気ない世界の料理に変化を与えたくなった
スーパーへの道。
やはり街の雑踏が凄く聞き取れる。
意識を20mくらい離れているカップルへ集中すると、何の話をしているのか分かるくらいに、耳が良くなったし、身体も軽い。
横断歩道を渡ると、そこに本屋があったので寄ってみた。
脳についての本を探した。
「脳の海馬を~○○○○」「脳科学は○○」「これを覚えたら脳○○」
脳の本だけでも沢山あるんだな…
お?…
「人間の脳は10%ほどしか使っていない」
その本を手に取り開いてみた。
≪人間は脳の能力を10%ほどしか使ってない~…≫
ふむふむ。
もしも、100%使ったらどうなるのか?
人間の脳で1秒間に行われる活動は、スーパーコンピューターの40分の活動にあたる、という説もあります。さらに、この脳の能力は、脳全体を使うことなしにこのレベルを維持しているとも言われています。と…
暫く立ち読みで読んで見た。
僕は、驚いた事にその本を5分も経たずに読み終わってしまった。
いろいろな説が書いてあったけど。
脳を100%使うとなると脳が使用する血流などで、臓器が持たないとも書かれていた。
殆どが仮説なので、信頼出来る物ではなかったが。
もし、RBSでもっと能力を引き出せるとしたら、どうなるのだろうか?…
あの脳豆…脳を覚醒させる豆なので、僕は
感覚、聴力、速読、記憶力、体力に至るまでたったの1%でいろいろな物が覚醒したみたいだ…
仮説ばかりの本だったので、適当にその辺の本を軽く読んで。
本屋を出て、スーパーへ再度向かう。
途中、質屋の前を通る。
「あ…そう言えば…」
バックに重々しく麻袋が入っているのを思い出し。
麻袋を取り出して宝石を2~3個取り出して。一番綺麗に見える赤い宝石を1個取り出して残りはまた麻袋へ入れ、バックへ仕舞った。
通り過ぎようとした質屋に戻り、扉を開けた。
「いらっしゃいませ」
「あの…宝石を見て貰うだけでも良いですか?」
「勿論です。こちらへどうぞ」
案内された個室の中へ入り、さっき取り出した赤い宝石をトレーの上に置く。
「ほう…これは…」
質屋店員は手袋をしてルーペで宝石を覗き込む。
「!!!!?」
「ど…どうかしましたか?」
「これは!…しょ…少々お待ちくださいませ!」
宝石を持って裏に行ってしまった。
まさか迷宮品だからって地球でも高価って言うんじゃないだろうか?…まさかなぁ…
暫くすると、店員が二人になって戻って来た。
「お客様!…これをお売りになるのですか?」
「え?いや…まあ、お金になるなら売っても良いかな…とも思ってはいましたけど…」
「お客様…これは間違いなくレッドダイヤモンドです!」
「レッドダイヤモンド?それって高価なんですか?‥」
「レッドダイヤモンドは世界で30個ほどしか流通していない、希少も希少なダイヤなんですよ!?」
「え?…そうなの?…因みに、お幾らになるんですか?」
「これは小さいですが、紛れもなくレッドダイヤモンドです!しかも、しかもですよ、これは「Fancy Red」とよばれる自然な赤色で一番高ランクの物に間違いありません!」
「そ…そんなに希少なんですか?…」
「はい!!こんな傷も殆どない完璧なレッドダイヤモンド…どこで手に入れたのですか!?」
「いえ…家で眠っていたと言うか…何というか…」
「あ…いえ、失礼しました。興奮して取り乱してしまいました‥これをお売りになるとなると…重さは0.4カラットに満たない大きさですが…2000万…いや2500万でどうでしょうか?」
「はああああ!?に、にせん…!?」
「ああああああ!済みません!…安いですよね!傷もないし、安かったですよね!じゃ…じゃあ、さ、3000万でどうでしょうか!!!!」
店員は慌てて、早口でそう言った。
僕は、口を開けて固まってしまった…。
やばい…まさかこんな事になるなんて、あの小さな宝石が3000万円…。
何さ?…レッドダイヤモンドってそんなに希少な物だったの?…。
「あの~…お客様?」
「へ?…あ。ああ。はい、う…う…」
「う?」
「売ります!」
「はい!!有難う御座います!!」
いそいそと店員達は、その宝石を大事に綺麗な布で包んで裏に持って行った。
売買手続きをするとすぐに、現金を裏から持って来たが…。
大金を持って帰るとか恐ろしかったので、ひと帯の現金をバッグに入れ、残りは銀行振り込みして貰った。
質屋を出ると。そのお店は一時閉店になってしまった。
100万持っているだけでも緊張するけど…スーパーへ行かねば…。
もうすぐでスーパーに着くと思ったその時。
「おーい
「宝杖くーん!」
そこに居たのは同級生3人組だった。
「
こいつは同じ組の同級生、
「宝杖くんこんにちは!」
この子は、相沢ほなみ、ウチのクラスのマドンナ的位置にいる女子だ。
「ななっちぃ、どの行くのさぁ?」
「僕はいろはだっつーのって…まあ、もうそれでいいよ桜は…」
僕の事を、ななっちと言うのは、小学生から幼馴染の
他にもいろいろいるのだが、この3人は意外にも、学校で影の薄い僕に構ってくれる仲が良い方の友達だ。
「今からスーパーに買い物に行く所だけど、浩平に桜、ほなみちゃん3人で何処に?」
「うん、急いでないのなら一緒にカラオケ行かね?」
「ん~急いではないけど…」
「宝杖君、一緒に行こうよ」
可愛い、ほなみちゃんにそう言われると気持ちが揺らいでしまう…
「じゃあ…1時間だけ…」
「ななっち、ほなみに弱いなぁ。ほなみ可愛いもんねー!あははは!」
「ちょ…桜ちゃん」
「桜ぁ…あのね…」
「まあ、まあ、それじゃ、決まりだな!行こうぜ!」
4人でその近くのカラオケボックスに行く事になった。
◇
1時間だけだったけど、同級生と楽しんだ。
この3人はまだまだカラオケやるんだと言っていたので。
僕の分の支払いを1万円置いて来た。
3人には相当驚かれたけど。
そりゃ、高校生が1万ぽんと置いて行けばそうなるかもな…
手持ちに小銭がなかったのもそうだけど、さっき臨時収入があったから問題ない。
さっさと目的であるスーパーに買い物へ行かねば。
カラオケボックスからはそう遠くなかったので、すぐに中へ入り、調味料売り場へ向かった。
塩、胡椒、砂糖、醤油、みりん、料理酒など手ごろな大きさの物をカゴに入れて行く。メイ婆さんがいつも美味しい果物も出してくれるのを思い出したので果物も買っていくことにした。
苺が旬だったので、多めに買って、カレールーと豚肉と野菜も少し買った。
そう、簡単に作れて誰が作ってもそうそう失敗しない、カレーを手始めに作ってあげようと決めていたんだ。
後は、チョコレートとかスナック菓子も少し買い足して、買って帰った。
◇
僕は門の世界へ入った。
自室を出ると、メイ婆さんとイルが深刻そうな顔をしてテーブルに座っていた。
「あ!」
「おお、なんじゃ、居るではないか?」
「あれれ?さっきは…」
「あああ…ただいまぁ…かな?」
何となくだけど、2人が話していた内容を察したので、2人にいろいろと隠してもやりづらいので説明することにした。
その後、苺のヘタを取り皿に盛ってテーブルに置いた。外の世界と行き来している事と、地球との時間設定の事も話した。
「なるほどのぉ…外の世界との行き来が出来るとは、まさに神の所業よなぁ」
「メイ婆さん。僕は神じゃないって、エルフでもないし、ごくごく普通の人間には間違いないんだから…魔法の事だって昨日、イルに教えてもらってやっと感覚掴めたばかりだしさ、外の世界では魔法は存在しないしね」
「でも…」
イルメイダは考え込んでまた口を開いた。
「外の世界かぁ…エルフ数人しか、この事を知らないとは言っても…。私達…外の世界の人間に作られた存在って事だよね?…何だか、複雑な気分…」
「そうじゃなぁ…」
確かに複雑かも知れない…
僕だって、地球を創造した神様が存在し、作られた存在としても、その神様ってのを見た事がないし、宇宙って今も広がっているって言うし、真相はよく分からないから何とも思わないけど…
チラリと2人を見る。
あの時。僕が門の置物に問いかけられて、もしもリセットしていたら?…
この2人だけじゃなく、この世界を抹消していたかも知れないわけで…
2人にとっては、確定している物事がある。僕が外界から来た事によって、オルキルトって人に創造されたこの世界は、ほぼ真実って事になる。
2人にとって僕を神様のような存在と思っていても仕方がない。
「イロハさん!!この果物美味しい!」
「え?ああ、苺、美味しいよね」
「ほぅ…外の世界にもこんな美味しい果物があるとはのぉ」
2人の暗い顔は苺のお陰で一気に吹っ飛んだらしいのでそれはそれで良かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後書き。
まだスローペースな展開ですが、ご了承くださいませ。
大体、週に2度くらいのペースで更新出来たら良いなと思っております。
やる気に繋がるので、フォロー、♡、★など貰えたら嬉しいな!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます