第12話
side:とある名も無き神官
「ところで腐敗と発酵の違いって知ってますか?」
突然少女の悪魔がそう質問してきた。
「は?今そんな事関係ないだろ」
「そんな分かりやすい時間稼ぎなら無駄ですよ」
「それとも追い詰められて頭おかしくなったのかしら?」
【光:浄化】
辺り一面に聖なる浄化の光が降り注いだ。これであの異端者のガキ共も消えただろう。次第に光が収まると同じ光属性の結界に守られた悪魔が浄化される前と同じ場所に立っていた。
「兄様、姉様、大丈夫っスか」
「ありがとう、末妹。ふふ、短気は寿命を縮めますよ」
いつの間にか悪魔の傍に現れ、白い純白の羽を持った天使の様な少女の結界に守られた悪魔達は無傷で笑いながら話しかけてくる。
「馬鹿な!!上位魔法をあっさりと防いだだと…」
「次はこちらの番ですね」
「さっきの話の続きですが発酵は人間に利をもたらし、腐敗は害をもたらす」
「同じ働きなのに人間の都合で分類されるって面白いですよね。そういえば聖魔法と闇魔法も人間に利をもたらすか、害を与えるかの違いで内容自体は同じなの知っていましたか?」
【支援:耐性・支援魔法強化(×二乗)】
少年の悪魔がそう言いながら我らを指さすと一気に身体中に激痛が走った。
「ゔぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!!!」
「な、何をした…」
「だから、自分がこうして聖魔法の効果を強化するだけで簡単に精神が蝕まれる」
【支援:特殊魔法強化(×二乗)】
少女の悪魔が指をクルリと回すと今度は魔力が内側で暴走し始めた。
「えーと、鑑定鑑定っと…【身体強化】【精神強化】【魔力増加】【聖属性強化】【全属性耐性強化】か。自身でかけた魔法によって蝕まれるのって本当に皮肉っスね」
「「「「ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!!!!」」」」
【身体強化】で強化した筋肉は急速に発達を促した影響で引き裂け激痛が走るが、【精神強化】の影響で発狂も失神も出来ず、聖魔法によって強制的に回復しては裂け続け、魔力が尽きればこの苦痛が終わると考え【魔力増加】で増えた魔力を他の魔法を放って消費しようとした暴走した膨大な魔力も危険と判断され耐性魔法が働き外へ発散できなかった。
「お…ま、えら…。我…われを…殺す…と…ヴッ、聖教…会…を敵に……まわ…した…と…見なさ…れ、追…われ…て処刑…される…と…分かっ…ている…の…か!!」
「それは有り得ませんよ。だって、ほら…」
「拙者の使った防御魔法以外、使ったのは闇属性じゃなくて誰でも使えるただの支援効果を増幅する魔法っスし…」
「こんな儀式をしていれば魔力暴走による死亡事故も珍しくないってさっき自分で言ってましたよね。だから…」
「「「状況証拠だけならあなた方は、子どもを犠牲に天使を召喚しようとして失敗した愚かな敗北者なんですよ」」」
3人の悪魔は先程我らが言った言葉を使い、ニヤリと口を揃えて笑った。苦痛に苦しむ我らを見ながら純白の少女が囁く。
「だけど特別に拙者達の要求を飲むなら救けてあげないこともないっスよ」
「誰が…悪魔の言うことなんて…聞くもの…「(;´・ω・)ウーン・・・ねぇ、いい加減それ止めてくれない?さっきからウザったい。」…はぁ?」
突然少女の悪魔が煩わしげに司祭の方を見て言った。なんの話しをしているんだ?
「ずっと声に洗脳魔法掛けて話しているの気がついてないと思ってた?」
「僕らとしては効かないしただ耳障りなだけだな」
「何を…言って…」
「光魔法だから神官達にはバレずに使用出来ていたんだろうスけど、分かるっスからね」
「……要求を飲もう」
苦虫を潰した様な顔で司祭様が頷いた。
そんな馬鹿な!!嘘だ、何かの間違いだ。
我らは司祭様をお守りする為に力を振り絞り悪魔に対抗しようとした。
「貴様ら司祭様に何をした!!要求は飲まないに決まっているだろう!!」
「アハッ!随分部下から慕われいてるね」「それが魔法によって作られた嘘だと知らないで」「なら望み通り教えてやるっスよ」「やめろ!!!!」
司祭様が止めるを聞かず悪魔達は話続ける。聞いてはいけないことだと脳は理解しているのに悪魔の声が耳から離れない。
「司祭っいうか、…うん、そもそもお前司祭じゃねぇだろ。コイツは洗脳魔法を使ってずっと君たち神官や信者を意のままに操っていたんだよ」
「ほら心当たりあるでしょ、揉め事が司祭が発言したら直ぐに収まったとか、何をするか司祭に聞かないとって思うとか」
「嘘ですよね…司祭様?」
そんなずっと我々を洗脳していたなんて…悪魔が動揺させるために着いた嘘だと思い皆司祭様を見るが彼は俯いたまま顔を上げない。
「違う!!我々は、この女に変わって先代と同じ様に栄光を維持しようとしたんだ!!全ては先代の才能の一欠片も引き継がなかった無能なこの女が悪いんだ!!!!」
しかし、次に顔をあげた時司祭と呼ばれていた男は血走った目で傍に控えさせていたシスターを指さして叫んだ。
あぁ、やっぱり彼女が司祭だったんだ。1人だけ魔力量が桁違いだったし、他が苦しんでいるのに対してそこまで苦痛を感じていなさそうだったしね。
「思い出した、この冴えなくていけ好かねぇ女が司祭だ!!」「この売女め!!」「だから女が上の地位に居るのは反対だったんだ!!」「消えろ!!」
…醜いわぁ(꒪⌓꒪;)
司祭代行が本物の司祭を明かしてからもう周りがね、彼女をボロクソ言ってる。
「今拙者達は司祭と話しているんっスよ。」
「だから周りでゴチャゴチャと囀るのやめて貰えますか?『無:睡眠魔法(強)』」
危ねぇ、2人が直ぐに黙らせてくれなかったら素材にするところだったわ。
「ありがと、流石に耳が腐るかと思ったわ。で、どうする司祭?」
「要求を飲みましょう…。部下達の支援魔法を解いて下さい」
「あっさり言うね、洗脳されたって分かったらあんな酷く手のひら返されたのに」
「腐っても祖父の時代から着いてきたこの教会の幹部ですから。…少し愚痴を聞いてくませんか?」「ありがとうございます。えぇ、最初は女だと舐められたく無かったから洗脳魔法を使ったのです」
目を伏せながら司祭はポツリポツリと話し始めた。
司祭…ミネルバ女史はとある高いカリスマ性を持った司祭の孫娘として生まれたが、彼女が21歳の頃に司祭でもある先代のお爺様が亡くなり、両親もその数日後に事故で亡くなりと身内の不幸が続き、ミネルバ女史を司祭にと信者達によって勝手に持ち上げいつの間にか司祭になる事が決まっていたらしい。頼まれて断れなかっただけで正直ミネルバ女史自身は女神なんて信じて無かった。しかし、先代譲りの豊富な魔力と知識は本物だった。
「聖女でもなんでもない、魔力が人より膨大だと言うこと以外、普通の娘が急死した先代の孫娘だからという理由で後を継いで…なれない仕事に悪戦苦闘して…!!神官達は自分達より弱い女だと無視し始めて…!!そんな時先代が残した手記を見つけて…先代のカリスマ性の裏を知って…代々伝わるこの魔法で皆を纏める司祭を演じ始めたら、洗脳魔法に勘づいた上級神官達がお爺様が生きて時の栄光を取り戻そうと司祭を名乗り始めて、私を閉じ込め有事の時しか外に出して貰えず…どうしたら良かったんですか!!⁝( ;ᾥ; )⁝グスッ」
もう後半は泣き始めながらミネルバ女史は愚痴を吐き出した。…なんか可哀想になってきたな、この人
「なんかお疲れ様、ハンカチいるか?」
「貰います…ズビッ」
「司祭も楽じゃないんスね…」
弥生君からハンカチを受け取ったミネルバ女史は今まで溜め込んだ愚痴を吐き出したお陰かスッキリした表情をしていた。
「落ち着いた?なら要求の話するけど」
「…クスン。そうでしたね、肝心の要求とはなんでしょうか?」
「女神の信仰止めて違う神の力を集めるのに協力して欲しいな〜って思っていたり「良いですよ」やっぱり無理ですよねっていいの?!」
「ええ、別に女神を信仰してませんし、ここだけの話女神教って規定が多くてあまり好きではないんです。」
「なら天使召喚の儀式は?」
「そこにいる上位神官達の独断です。私は止める為に来たんですが途中で代理に襲われて意識が…。」
「生贄の子を殺したのは…」
「殺してません、そもそもアレは魔族特攻の光魔法です。幼いが故に高濃度の魔力に耐えきれず気絶しているだけなので大丈夫ですよ。」
確認してみるとミネルバ女史の言う通り私の魔法で演技してもらった子どもたちはスヤスヤと眠っているだけだった。
良かった〜。ε-(´∀`;)ホッ
そうしている間に弥生君が事情をミネルバ女史に説明すると、彼女は顎に手を当てブツブツと考え始めた。
「女神と同格の神と言えば【黒玉】様でしょうか?…でしたら力を効率よく集めるには…ブツブツ…」
「おぉ、肝心の神の名前を言ってなかったのにそこまで分かるのか」
「一応司祭の孫娘ですから」
「【黒玉】って世間的には邪神と呼ばれている存在なのに本当にいいんスか?」
「えぇ、言ったでしょう。女神教はあまり好きではないって」
神の名前を言ってないのに一発で黒玉の存在まで当てるなんて本当に司祭として頑張っていたんだなって思ったね。
『小娘、ヨロシクタノムゼ!!』
「弱々しいとはいえこの純粋な魔力は?!」
「えっと、邪神【黒玉】改め使い魔のクロスケです…。」
「君達、仮にも神に対して何しているのです?」
影から出てきたクロスケに対し驚いたミネルバ女史だったが、使い魔だと聞き『信じられない!!』という目を向けられた。うん、流石に神に対してクロスケは無かったか。
『ソンナ事ヨリ小娘、ナニカイイ案ガ思イツイタナラ教エロ』
「えぇ、まぁ、はい。堕天使も天使も悪魔も1箇所にいる時点で今更か」
ミネルバ女史は私達にジトッとした目を向けながら、クロスケからの質問に答えた。
「まずは【黒玉】様、今この場から貴方様を祀る漆黒教司教になりましたミネルバ・オニキスと申します。」
『オニキス…カ。フム、覚エタゾ』
「私めの名前を覚えていただけるなんて有難き幸せです。先程、力を回復させたいとのことでしたが2つ案があります。その中でも長期的に有効的なのが葬式ですね。」
「葬式?」
「おや、もしかして知りませんでしたか。まず、神や天使には属性と共にそれぞれ使える固有魔法があるんです。固有魔法は使えば使う程、信仰を得れば得る程強力なモノになります」「例えば黒玉様ならば『忘却』、悲しみを飲み超える強さ、激情を忘れ解放するなどですね。だからこそ人が亡くなった葬式は黒玉様にとって絶好の能力を使う機会なんです。」
思わず聞き返すとミネルバ女史は少し意外そうな顔をしながら指を振り、空中に光の文字を書きながら教えてくれた。
なるほど、知らなかった....φ(・д・。)
「でも、問題が1つありまして…」
ここでミネルバ女史は言葉を濁した。
聞くと女神教の教えで亡くなった人の事をいつまでも引きづらないというものがあるらしい。この世界では大切な人が亡くなったら直ぐに第三者が墓に入れ終わりっていうのか主で、逆にいつまでも悲しんでいる人は異端扱いされるのだと。なんというかアッサリとし過ぎているというかやるせないというか何故そこまでするのか分からないな(・ ~・)。
『アァ、俺様対策ダナ。俺様ノ忘却ハ過去ヤ激情ニ囚ワレテイル奴ホド効クカラナ』
ほぇ〜、そんな設定あったんだ。小説にも記されてなかったから知らなかったわ。俗に言う裏設定かな。
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