第11話

「見回り用の偽装OK…」

「この配られた地図に自分の友達が集めた情報を書き足して…」

「皆が寝静まったら…」

「「「レッツゴー!!儀式の間(ボソッ」」」


と言う訳で見張りを躱しながらやって来ました儀式の間。

「ごめん、クシャミして」

「お互いに相手がしたって思い込ませて良かったよ」

「バレなきゃセーフっスよ。にしても厳重な結界スね」

「入れるのは教会関係者だけか」

「まぁ、当然っちゃ当然だね」

昼間と違って扉には厳重な結界が張ってあって解除しなければ入れないようになっていた。ここまで来て終わりか…何か入る方法ないかな?『無:鑑定』…と

「あ〜、聖属性じゃなきゃ通り抜けられないわコレ」

「残念だけど今日はここまでか。部屋に戻ろう」

「あっ、それなら拙者抜けられるっス」

「「えっ?!」」

なんでもあの月夜の覚醒から改めて天使の祝福、光魔法を使えるようになったので一応教皇並の魔法を使えるらしい。

「でも女神にバレないの?」

「女神が狙ってたのはブローチに封じてきた天使【紅玉】の力なので大丈夫ってお母様が言ってたっスよ。なんでも拙者の覚醒した魔力はブローチに封じ込めた魔力と比べたら瑞々しい果肉と種子位差があるらしいっス」

「それで教皇レベルって……」

充分チートだと思ったけどそこは黙っておこう。でもって小説の後半でヒロインの聖女の力が弱まったのってまさかの魔力の使い過ぎかよ。

「ほら、2人とも拙者の影に入って!!他に人が来る前に入るっスよ」

『準備OK』

「バレないように魔力を抑えながらオープンッス(ノ゚Д゚)ノ!!」

『少しムズムズする〜』

「もう少しっスよ〜、…到着!

もう出てきても大丈夫そうスよ」

生身だったら危なかったわ。儀式の間は昼間と違って魔法陣を囲うように宝石が並べられ聖なる魔力で満ちていた。

儀式を止めた方がいいんだろうけどどうやって止めようかと考えていると私の影から声がした。

『ソレナラ簡単ナ方法ガアルゼ!!』

「(;゚ Д゚) …!?黒い何かっス?!」

「ウムパッは初めて見るね、邪神で私たちの使い魔(?)クロスケだよ。クロスケ、私たちの妹のウムパッだよ」

「それよりクロスケ、どういうこと?」

『詳シク話ス前ニ、オ前ラコノ空間カラソロソロ出ネェトハヤバインジャネェカ?』

「えっ、……もうこんな時間?!」

「見回り交代する前に早く拙者の影に入るっス!!」

見回り交代で結界が再び張り直される前に私たちは慌てて清和ちゃんの影に潜り儀式の間から出た。帰りは配置を知っているので見回りの目を掻い潜るのが楽で直ぐに部屋にたどり着いた。

「で、クロスケさっきの話の続き聞かせて」

『オ前ラノ魔力ヲ核ノ宝石ニ込メレバイイダケサ…オイ!!コノ小娘ヲトメロ』

「ふぁぁ〜〜見た目に反してフワフワっス〜(*´꒳`*)」

「ウムパッ、一旦ストップ」

『邪神ニ対シテソンナ態度ヲトルノハオ前ラダケダゾ…』

「もしかして、ワインに泥水を1滴でも混ざるとそれは泥水だってやつ?」

『マァ、ソンナトコロダ。花畑共ハ潔癖ダカラナ、ソレダケデ召喚ヲ阻止デキルハズダ』

儀式の妨害方法は分かったけど今止めた所でまた同じ事の繰り返しだろうな。

そういう訳で私たちは昼間は他の孤児院の子どもと同じように教会の奉仕活動を手伝い、夜は核の宝石に少しずつ私たちの魔力を注ぎながら教会を調査していた。そして分かったのはどうやら別棟に魔力を持った子どもが攫ってきて監禁し媒体に、集められた孤児院の子ども達は不足した魔力の代わりに生命を捧げる生贄として集められたという事だった。

その為に毎日の食事には思考を鈍らせ洗脳する効果のある薬が混ぜられていた。まぁ、私たちには耐性あるから効かないけどね。

ホント自分が正義だと思っている奴の人権無視した行動は胸糞悪いね。

そうこうしている内に1週間が過ぎ初日は元気良かった子ども達は食事に混ぜられた薬の効果で日に日に人が居ない間ぼんやりとしていく時間が増え、今では傀儡になっていた。


「つまらないわ〜。クロスケは別件頼んだから居ないし〜」

「同意っス〜。子どもは無邪気に遊んでなんぼっスからね〜」

「動きにくくなってきたから何か策打たなくちゃだね〜。案ある〜?」

そんな中私たちは特に洗脳されている訳ではないので昼間とてつもなく暇を持て余していた。

「あっ、今1つ思いついたこと有るんだけど!!」

「何?」

「それは…」

私は2人に今ふと思いついた計画を話した。

「……って感じで教会に嫌がらせしない?」

「賛成!!やるやる」

「面白そうっス!!」

すぐさま、私たちは教会への嫌がらせの準備を開始した。次いでに小さな嫌がらせもしたけど神官達の顔色が日に日に悪くなる光景はとても、とても愉悦だったよ。

そして遂に儀式の日がやってきた。


…さあ、最高の嫌がらせを始めようか



side:名高き無名の神官

「さぁ、この魔法陣の中に入れ!!お前らみたいなゴミ共が役立つ機会がある事に感謝しながら生命を捧げなさい!!」

ようやくここまで来ました。

最近は服の又部分が裂けたり、晩酌用の最高酒が割れたり、靴に石が挟まっていたりと地味に嫌な思い出が多いですが、まぁいいでしょう。

愚かな下民を説得(洗脳)し、媒体となる素材を集め遂に我らの主、女神の使徒である天使を1柱召喚し、この忌々しい呪われた赤毛の悪魔も消すことが出来る、まさに一石二鳥の計画だ!!貴族の子供も主が屋敷を留守にしている間に買収した使用人達が薬を盛り簡単に誘拐する事が出来た。あとは別棟に閉じ込め定期的に薬を投与し続け弱体化させれば天使を喚ぶ準備が完了した。なにやら通報を受けた騎士団が此方に向かっているらしいが残念だったな。到着する前に貴様らの子供はこの聖なる儀式の媒体として呪われた運命を終わらせるのさ!!

『偉大なる女神の使徒よ、混乱の世に嘆く我らの声に答え給え』

『『『偉大なる女神の使徒よ、混乱の世に嘆く我らの声に答え給え』』』

繰り返し唱えていく内に魔法陣の外枠に立っていた子どもは次々と倒れ光となって魔法陣に吸収されていき、外枠にいた子どもが消滅した頃、魔法陣から一際強い光が放たれた。

「妾を呼んだのはお主らか」

光が収まると魔法陣の中心には横たわる赤毛の少女が消え、神々しい光を纏った純白の少年が現れた。

「偉大なる女神の使徒様、我らの声に応えて下さいましたこと感謝します。我らの望みは…「ンフッ…、」どうかなさいましたか?」

「ンククッ…いや、そういえばこの場所には天使について述べた書物があったことを思い出しただけさ」

「はぁ…、聖書のことですか?」

「うむ、正確には聖典じゃが見せてくれぬか」

「流石に天使様でも聖典は見せる訳にはいきません」

「仕方ない聖書で我慢するか……これはこれは、よくもまぁババアの癇癪をここまで美化できたなwww.」

原典を読む少年は先程の神々しい雰囲気が嘘のように空中で足を組み、挙句の果てに偉大なる女神様をババア呼ばわりした。

「偉大なる女神様に向かってふ、不敬だぞ!!お前は何者なんだ、正体を表せ偽物め!!」

浄化魔法を打ち込むが目の前の少年は効いた様子がない。寧ろ笑った拍子に出てきた涙を拭っている始末だった。

「あ〜笑った笑った。そう思わないか?クロスケ」

『小僧、口調ガ戻ッテイルゾ。アト、俺様ニ対シテ少シ敬イガ足リナイノデハナイカ』

瞬間、目の前が闇に包まれた。比喩ではなく、少年が纏っていた光も魔法陣の光も我らが放った浄化の光も闇に呑まれて消えてしまった。

「偽物って酷いな。僕は正真正銘天使の血を継いでいるのに…シクシク」

「うわぁ幼い子を泣かせるなんて最低〜ww」

『オ前等、茶番ハホドホドニシテオケ…』

「アハハwwwクロスケに突っ込まれたら終わりだわwww」

「笑いすぎだよwww」

闇が晴れた時、魔法陣は唯の床の模様と化し聖域結界も破られていた。部屋の真ん中にはいつの間にか真逆の禍々しいオーラを纏った少年少女が立っていた。

「天使が来ると思いましたか?」

「残念でした。天使は天使でも堕天使でした」

「なん…だと!!?」

堕天使なんて種族居るはずがない。だって、それは天使が全ての母たる女神の愛を裏切るのと同義だと云うのに。

「嘘を言うな悪魔め!!女神様を裏切って闇に巳を堕とす天使なぞ居るはずないだろう」

「ふふ、ねぇ人間に恋した天使の話を知ってる?」

「確か女神の寵愛を無視して1人の男にその祝福を授けて闇に堕ち粛清された裏切り者の天使の事か?」

「そうか、そう伝わっているのか」

そう言って少年が手をかざすとその手には最深部に厳重に保存してあるはずの聖典が握られていた。

「え〜と……うわぁ」「何何?…ババア怖っ!!」「こんなの燃やしちゃえ」「賛成w」

(っ'ヮ')╮ -=͟͟͞【聖典】🔥o▂▅▇█▓▒塵いぃィィィ

「き、貴様ら、何をしたかわかっているのか?!」

「「ゴミを燃やしただけですがなにか?www」」

ケラケラと笑う悪魔はそのまま神聖なるお言葉が載った聖典を儀式用のキャンドルに放り込み燃やしてしまった。


「落ち着きなさい!!何を慌てているのです。相手は悪魔でも此処は女神の膝元、教会なのですよ。我々の神聖な力の前に闇魔法は無力!!物理的な力もそこらの子どもと同じ!!恐れは必要はありません」

呆気に取られていると扉が開き司祭様の声が響いた。…そうだ何故焦っていたんだろう、相手は唯の子ども。出来ることなんて何も無い!!

「へ〜、そう来たか」

「ならこの方が良かった?」

【███】

「「助けてください!!司祭様」」

ニヤニヤしながら悪魔が何か唱えると魔法陣の中が黒い霧に覆われ霧が晴れると魔力源として孤児院から集めたガキ共が現れ命乞いを始めた。

「あ、悪魔が僕たちを人、人質にって」

「助けて、殺さないで!!」

確かに2人からは闇の気配を感じない。同時に子ども達が持っていたはずの魔力も感じない事にも気がついた。

「君達には辛い思いをさせてしまったな。直ぐに解放してやる。…やれ」

「…『光よ、貫け』」

司祭様の近くにいたシスターが呪文を唱えると無数の光がガキ共降り注ぎそのまま糸が切れた人形のように倒れた。

「せめて安らかに眠って下さい…」

「ふん、悪魔に囚われ魔力が無くなった時点で用済みだ。まぁ、神聖な光によって死ねたのだから光栄だと思うんだな。」

あぁ、司祭様はなんてお優しいんだ。あんな消耗品にこんな慈悲をかけるなんて

「無いわぁ〜」「こんな一度に大量に消していいの?」

再び黒い霧が現れ悪魔が現れた。

「なに、魔力による暴走事故なんてよくあることだ。今更何人居なくなろうが誰も気にしない。」

司祭が呆れたように悪魔の問いかけに答えた。そうだ、この儀式が成功するまで何回も繰り返してきたんだ。元々親に捨てられ道具としてしか生きられない子どもなら今更死のうが何しようが変わらないんだ。むしろ魔力源として役立つ事を感謝して欲しいくらいだ。さて、子どもを見せて動揺させるなんて…

「もう手札は残ってないんだろ?」

俺は悪魔にそう言ってやったが悪魔は笑みを深めただけだった。



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