第10話

「ところで何故2人はドアの近くから離れようとしないンスか?」

「いや〜、うん」

「その前にお父様とお母様からどこまで聞いたか教えてくれない?」

「?お父様の正体が悪魔、お母様が堕天使であの女神の娘って事くらいしか聞いてないッス…」

「なるほど。今から何見ても叫ばないでね」

私と弥生君は月光の元へ一歩踏み出し、光を浴びた。

「(*゚Д゚)オォォォォォ...なんと…弥生氏も早苗氏も拙者と同じく月光を浴びると姿が変わるとは…」

「甘いな、清和ちゃん…」

「両親の真の姿はこの比じゃないから覚悟しといた方がいいよ」

「更に上がいる…ですと…」

「あれは目が潰れるレベルだった」

この光景を第三者が見たらこう思っただろう…君たちの姿も大概だと。

「あっヤバ、もうこんな時間」

「また明日の鍛錬で。今夜はゆっくり休んで」

「おやすみ」

それから清和ちゃんと前世話で盛り上がっていたけど気がつけば月が真上に登っていたからとりあえず解散する事にした。次の日から母からミッチリ特訓を受ける事になった清和ちゃんだが、後に本人が教えてくれたけど彼女用の特訓空間は私たちが今まで身に付けた技能を一気に習得するために数十倍時間が引き伸ばされた空間だったらしい。

夕方に会う度にやつれていくと思ったらそんな事になってたんだ…凄いな……。


それから1ヶ月後、お父様と庭で鍛錬していると清和ちゃんを引き摺りながらお母様が影から現れた。慌てて私と弥生君は清和ちゃんに駆け寄り声をかけた。

「ウムパッ動けそう?」

「うんぇ、二人ともなんかすごいお久しぶりッス〜…喉乾いたので水欲しいッス」

ヘロヘロになりながらも水を要求する当たり図太いよね。水筒を差し出すとガブガブ飲み始めた彼女の横でお母様が話始める。

「ウムパッも及第点ですが仕上がった事ですし早速お使いに行ってきてください。」

「早いな、もう任せていいレベルに達したのか。」

•́ω•̀)?

お父様は何か知っているようだけど私達は何にも聞いてないから分からない。

「3人共、説明する前にまずこの箱の中から好きな眼鏡を選んで下さい」

渡された箱を開けるとそれぞれ赤、白、黒縁の眼鏡が入っていた。

「自分、黒で」

「拙者は…白で」

「なら私は赤か。」

眼鏡をかけた瞬間、私たちの身体が少し重くなった。

「それで、お使いの内y」

「その眼鏡は当方らが作製した貴方たちの魔力を一部封印し人間に偽造する魔道具だ、壊さないように気を付けるように。」

「あの、内容をおしe」

「ではよろしくお願いしますね

『影:空間移動』」「お使いの内容!!」

「あぁ、詳しい説明はウムパッに持たせました。それでは行ってらっしゃい。」

「( ˙꒳​˙ )ファ??」「??↓(。_。)↓??」

「…ギァ"ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ」

清和ちゃんを介抱していると丁度人纏まりになっていた私たちの足場が無くなった。正確に言うと私たちの重なった影が1つの大きな穴に変化し、その中に落下した。いや、うん、一言だけ言わせて。

「「「結局説明しないんかい!!!!!!」」」



「痛っ!!」「グェ( ´ཫ`)」「...(lll-ω-)チーン」

「すす、すまぬ。今どくっス!!」

「ゴメン弥生君、大丈夫?」

「妹達に怪我なくて良かったよ…」

弥生君、私、清和ちゃんの順に空間から出た結果弥生君は私たちのクッションになってしまった。回復を待ちながら私は清和ちゃんに声をかけた。

「で、清和ちゃんはお母様から何か預かってる?」

「何か影に入れてた様な、ちょい待って下さいっス〜…あっ、これかな」

そう言って出したのは小さめの箱と便箋だった。

「え〜と、なになに『聖教会の動きが最近活発になっていて気になるので孤児院の子供に紛れ内部を調査して来て下さい。最後に、健闘を祈ります』らしいス」

箱の中身は…魔宝石か。

あっ、トランク送られてきた。

ちなみにこの世界では魔力(魔法効果)の込められた宝石を略して【魔宝石】って呼ばれているんだよね。でも正直小説の中では度々悪い意味で活用されていたのは残念だったな。( ;_; )

「『メニュー:プロフィール』!!」

「弥生君、いきなりどうしたの?」

「なんか今なら自分のステータス見れるかもしれないなって思ったんだよ」

「あ〜、本編始まるまで見れないから不便だよね」

「ッ!弥生氏、成功してるっスよ!!」

「「嘘ッ!」」

慌てて見ると弥生君の前に半透明の表示があった。


『【ノワール】

title:――

race: human

magic:――

remarks

孤児院から来た子ども』


「微妙ww」

「眼鏡のせいかな?」

「試しに眼鏡外してもう1回ステータス見てみたら」

「分かった『メニュー:プロフィール』」


『【ティガ・アンマー】Lv87

title:アンマー家 長男

race:half fallen angel

magic:the dark

remarks

かつて女神を裏切った天使と人間の子

破滅を呼ぶ予言の子の1人』


弥生君は静かに眼鏡をかけた。

「うわぁ…こんなにネタバレする事ある?」

「これ眼鏡がないとすぐバレるな」

「さすがの拙者もこんなネタバレは地雷です( ˙-˙ )」

「最後の『破滅を呼ぶ予言の子』って何だよ?心当たり無いぞ」

「私たちも確認してみよ『メニュー:プロフィール』」


『【ルージュ】…』

『【リマ・アンマー】Lv87…』


『【ブラン】…』

『【ウムパッ・アンマー】Lv83…』


「えーと、私は悪魔の力の方が強いから種族はhalf devilって所だけ弥生君違うだけで後は同じだわ」

「拙者は力を手放したけど種族はangel、魔力もpureじゃなくてsunlightになっているっス」

……( '-' ( '‐' )'-' )

「よし、今後人前では眼鏡を外さないようにしようか」「「賛成〜」」


「でも何で今ステータス表示出来たんだろ?」

「さぁ?でも今の状況を知れただけ良いんじゃない」

「そうっスよ!!今はなるべく早く教会を調べて帰ることだけ考える事を優先すべきだと思った方が」

「そうだね。自分たちは孤児院から来た子どもって設定だから早く合流しなくちゃ」


開いた門を潜り礼拝堂に行くと丁度シスターが集まった子どもたちに説明を始める所だった。

「ようこそ我等の教会へ

あなた方には今日から神官見習いとして住込みで2週間後に行う儀式の準備を手伝って貰います。何か質問がある際は私共に聞いてくださいね」

「「「はぁーい!!」」」

「いい返事ですね。では案内しますので着いてきてください」

シスターに連れられこれから2週間過ごす寄宿舎やその他の施設、道具の使い方を教わった後儀式を行う間へ通された。

「わぁ〜〜」

「ここが2週間、貴方達が儀式を行う部屋です。この清らかな魔力を感じますか?」

神々しい空間の中心に宝石に囲まれた大きな魔法陣があった。

その魔法陣を認識した瞬間血の気が引いた。それはとても見覚えのあるものだったから。


「最後に、別棟には貴重な書物などが保管されているので近寄ってはダメですよ。もし、破った場合は厳しい処罰が下されるのでいい子の皆さんはくれぐれも気をつけるように!!」

「「はぁーい!!」」

「では今日はここまでです。明日に備えてちゃんと休んでくださいね」

寄宿舎の前で解散し、各々割り振られた部屋に入った。私と弥生君は先程見た儀式の間に描かれた魔法陣の事が頭から離れなかった。


「兄様、姉様。どうしたんスか?先程から顔色悪いスけど…」

「……見たことある魔法陣だった」

「兄様達、心当たりがあるんスか?」

「あれって確か生贄を捧げて天使を降ろすやつだよ」

「あの魔法陣に1回巻き込まれた事があるんだよね」

清和ちゃんに誘拐された出来事を話した。

「(*꒪꒫꒪)ホヘェーお二人さん大変だったスね。その時に失敗したから今度は孤児院から子どもを集めて召喚しようと?」

「その可能性が高いね」

「あっ、そういえばプロフィール欄の『破滅を呼ぶ予言の子』を見てからずっと考えていたんスけど、もしかしてその『赤い特徴を持つ無垢なモノに悪魔が宿って破滅を起こす』的な予言の事でないスか?」

あ〜、なんかそんな予言あったね……って待って

「それってエリザ様じゃなくて?」

「あの、弥生氏と早苗氏。ふと思ったんスけど、お母様って元『紅玉』って呼ばれた天使だったじゃないスか」

「うん…て、まさか」

「そう、拙者達の瞳はお母様譲りの紅色が入っている。つまり予言の条件に当てはまるんじゃないかって考えたんスけど…。あとほら、前世の記憶とか」

そういえばそうだった。毎日普通に見ていたから気づかなかったわ( ゚д゚)

「も、盲点だった……」

「確かにあの小説通りにいけばヒロインである聖女は牢獄に入れられて主要人物の攻略対象の家系もその役職から引きずり落とすことも出来るけど……」

それに関しては自業自得で仕方なかった事じゃね?と口には出さなかったが全員がそう思ったらしかった。

そっか、エリザ様大丈夫かな?ちょっと会いたくなってきたわ(´・ω・`)

そう哀愁を漂わせていると弥生君がスッ…と手を挙げた。

「とりあえず深夜にもう一度あの魔法陣の部屋に行って確かめたい。勘違いだったら良いんだけどもし本当にあの魔法陣だったら期限が近いからさ」

「なら私も気になるし一緒に行くわ」

「拙者も気になる事があるから着いて行きたい所なんスけど見回りが来た時用に留守番してるっス…」

「清和ちゃん…」

そう清和ちゃんは残念そうな顔をしながら手を振った。うん、これ作っておいて良かったわ。私は影からブツを取り出した。

「諦めるのはまだ早いよ清和ちゃん!!我々にはこれがある『影:模倣』」

「それってマネキン?」

「衣装作るのにね。あと、カツラも」

「ずっと影の中で何かやってると思ったらそんなの作ってたんだ…」

「これなら明かりをつけなければバレないッス」

私もこんな所で役立つとは思わなかったよ。だから弥生君、そんな目で私を見ないで。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る