第4話

「ティガ、リマ。これからお前たちには主人に仕えるための勉強してもらいます。寝る間も惜しんで1人前になりなさい。」

話が決まってからのお父様達の行動は早く、家に着くなりそう言った。助けを求めるようお母様を見るとそこには般若が立っていた。次の日から地獄の特訓が始まり、どんな場面でも側仕えとして動けるように抜き打ちテストが何度も行われ、間違えたら即反省、やり直しの繰り返しで毎日両親の元で扱かれた結果半月で完璧に仕事が行えるようになった。それから今までやってきた護身術に加え図書室で魔術に関する色んな書物を読み漁り知識を頭に入れた。とにかく短期間で実力を付けるために詰め込みに詰め込まれた。


「ふぅ、2人とも及第点ですがいいでしょう。よく頑張りました。」

「ティガ、リマ。半年間に学んだことを忘れないようにしなさい。誰かに仕えるという事は自分の行動が主の評判に繋がることを忘れず行動して下さいね。」

あれから1年経つ頃、鬼教官2人はボロボロになって寝ている私たちを見てそう言った。

いや〜、本っ当にキツかった(o´Д`)…。間違えた、とても大変でした。教え方は分かりやすくて良かったけど本当に寝てる間も奇襲されて戦闘訓練を行ったり(寝起きで部屋が半壊した)、鍛錬でお父様にボロボロにされた後にお母様が持ってきた水には毒が仕掛けられていたり(翌朝2人で腹を下したけど訓練は普通にあった)と短期間で実力を付けるためとはいえ両親の鬼畜さはしばらく思い出したくないな。隣の弥生君も同じようにゲッソリしている。

とりあえず3日後にラブハート家に移る事になった為、痣などの怪我を完治させたり荷物をまとめたり準備をする事になった。

そして久しぶりに兄妹2人きりのお茶の時間を過ごしています。

「早苗ちゃん、お疲れ様。いきなりといえ、よく半年で身に着いたよね…。」

「弥生君もお疲れ様。鬼だったね、あの2人…。」

そう言ってお茶を飲みながらお互いにしみじみと呟いた。

「まさか転生自覚前の主人公を助けたらそのまま仕えるようになるとは予想外だったわ。」

「だけどあのまま放っておけ無かっただろ?原作を近くで見れる絶好の機会だと思って楽しもう、自分はそうふう」

「私もそうふるわ。あっ、しだがチョットシビレテキダ」

準備期間でも毒耐性を付けるため私たちが飲んでいるお茶とお菓子はお母様特製の毒々セットなので少し舌が痺れてきた。ちなみに両方とも色や匂いが普通でとても美味しい。傍から見ても普通のオヤツだろう。たが、見た目に反して効果は凄まじい。

「ほおほぉにほふはとへほ、ほふのほうははうふいふひに。(そろそろ荷物まとめよ、毒の効果が薄い内に)」

「ほうはね、ほふへうおへなくなるあへいはろ。(そうだね、毒で動けなくなる前にやろう)」

私たちはそう言って荷物を整理したが、それから数時間後ベットに倒れ魘されていた。しかし、次の日には復活していたので今までの毒飯は無駄じゃなかったと嬉しかったのと同時に翌日には回復するまで耐性がついたのかと複雑な気持ちになった。



そうそう、さっきも言った通りあれから毎日弥生君と小説の内容確認するためお茶(毒)と茶菓子(毒)を食べていたから粗方の毒に耐性が着きましたよ。お母様もどんどん種類や濃度を増やしていくから最後の方は2人で出された毒の種類を当てる利き茶ならぬ利き毒しながら食べていたから口に入れる前から毒の種類が分かるようになったからね。肝心な小説の内容だけど主人公の覚醒が確か6歳頃だったからまだ何も始まっていない…と願いたい。


怪我も治り、準備も出来たので馬車でラブハート公爵家に本日出発します。

「ティガ、リマ。貴方たちに渡す物がある。訓練中に金具が壊れてしまったアンクレットなんだが」

「丁度作り直そうと考えていた所でしたので新しくピアスに加工しました。」

お母様から渡された箱にはジェットのピアスとルビーのピアスが1個ずつ入っていてた。とりあえず私は左耳にジェット、右耳にルビーを、弥生君は私と逆の位置でジェットとルビーのピアスを付けた。

『『2人の門出に沢山の出会いと成長がありますように』』

ピアスを付け終わるとお父様とお母様が私たちの頭に手を乗せそう唱えた。すると一瞬だったけど体がほんのり暖かくなった気がした。



「よく来てくれた。これからしばらくは研修期間として様子も見させて貰う。今日は疲れただろう、明日に備えて休みなさい。」

「「はい、旦那様。」」

ラブハート公爵改め、旦那様に挨拶をして私たちはメイド長連れられ使用人部屋に案内された。簡素な造りの2人部屋で一応真ん中にカーテンが取り付けてあり左右で仕切れるようになっていた。クローゼットの中を見ると扉を入って右側のクローゼットにはメイド服、左側には燕尾服かかっていた。どうやら右がリマのスペース、左がティガのスペースらしい。まだ幼いからか私のメイド服の丈は膝に着くか付かないか位で短く、武君の燕尾服もショート丈で所謂ハーフパンツだった。明日から他の使用人の皆さんに認めて貰えるよう頑張ろう。そう2人で決意しベットに入った。…流石公爵家、布団がフカフカでよく眠れた。翌朝、着替え終わるとメイド長に案内され他の使用人の元にに向かった。


side:使用人A(エイタ)

「本日から使用人見習いとして入りました。「ティガです。」「リマです。」」

「御二方はエリザベートお嬢様の側仕えとして働く為、しばらく見習いとして様子を見る事になりました。」

呼び出され集まるとメイド長が口を開き、横にいた双子が自己紹介をした。あぁ、なんか半年前位に貴族の子どもがお嬢様の使用人になるとか話があったな〜って思って欠伸を殺しているとメイド長の視線がこちらに向いた。

「エイタ、この2人の指導役をお願いします。欠伸をする位暇をしているのだからいいですよね。貴方たち、分からない事があったら彼に聞いて下さい。」

「よろしくお願いします。」

欠伸を殺していたのがバレていたらしく拒否権の無いまま双子の世話を押し付けられた。子どもが遊びでやって来る場所じゃねぇぞと世間の厳しさを教える為にビシバシ使うことを決めた。

「俺はエイタだ、先輩を付けろよ。まず、玄関ホールの掃除をしろ。お客様が通るんだから隅々まで綺麗に塵一つ残すなよ。道具は奥の用具室にあるから自分たちで持ってこい。なにかあったら階段上がってすぐの客室にいるから呼べ。」

「はい、エイタ先輩。」

そう言い双子は奥の用具室に入っていっくのを確認した自分は今日の仕事を終わらせる為に階段を上がった。

30分後客室のベットメイクまで終わり次の部屋に行こうかと掃除用具をまとめた時コンコンコンと客室の扉がノックされた。扉を開けると双子が立っていた。

「エイタ先輩すみません。」

「なにかトラブルでもあったのか?」

「いいえ、終わりました「…は?!」玄関ホール、並びに階段の清掃が終わりました。」

「ちょ、ちょっと待って。確認する。」

聞き間違いかと思わず聞き返すと同じ答えを言われた。慌てて客室を出てすぐに目に飛び込んだ光景に俺は絶句した。シャンデリアは元々光を反射しキラキラ…っと淑やかに光っていたが今はシャラララッン!!と音が付きそうな位にシャンデリアに付いてた宝石が光を反射し煌びやかに輝いていた。そして階段の隅の方に溜まりやすい埃も無く、むしろカーペットの間に薄らと残っていた砂埃も取り除かれ新品同様に綺麗になっていた。そもそも玄関ホールは子ども2人だけでやるには広すぎるからてっきり半日はかかると思っていたのに30分で終わらせるとは予想外だった。

「じゃ、じゃあ次は食堂を頼む…。」

俺は内心ビビりながら指示をだした。食堂も壺や燭台があるのでそこそこ時間がかかる…と思ったが、40分後に呼び出され結果はやはり壺や燭台の装飾は輝き、天井のタイルは溝の隙間まで綺麗になっていた。朝食を食べた後も指示を出したが結果は言わずもがな。まだ研修1日目なのに指示を出しているこっちが凄い疲れてきた。次の日もその次の日も仕事の指示をしたが、ベットメイクは完璧に仕上げ(ドアノブが鏡のようになってあた)、窓掃除も新品同様に磨かれ(枠の埃なんて存在しなかった)、とにかく頼んだらそれ以上の結果が返ってきた。

「お前ら、今日から自分達で仕事を探してやってくれ…。」

「分かりました。」

「エイタ先輩顔色が良くないです。何かありましたか?」

「いや、少し目眩がしただけでなんでもない…。」

その後双子は庭園の掃除をしたり(石像が輝いていた)、使用人の洗濯を手伝ったりしていた(いつもよりフワッとした)がどれも120%の結果を残していった。半月後、遂に俺はとりあえずメイド長に双子の働きを報告する際にもう彼らの研修は充分だと伝えるとメイド長は旦那様に相談しますと言って部屋から出て行った。

本当になんなんだよ、あの双子…。


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