第40話

「ごめん!お待たせ!」


「お、おう。全然待ってないぞ」


肩で息をしながら、隣に並ぶ彩美を横目で窺う。

学校帰りにそのまま遊びに行くのかと思ったが一度家に帰ってからの集合となった。

不思議に思ったがその理由は一目瞭然だ。


「なんか、うん。めっちゃ似合ってると思う」


「そ、そう?ありがとう」


普段からは考えられないほどぎこちない会話を交わす。

意識しているのは俺だけかと思ったが違うみたいだ。


「たまたま着ていく服がなかったから、この前茜と服を買いに行った新品下ろしたのよ」


「へー、そうなんだ」


「なによ。文句ある?」


「いやいやいきなり話してきてそれはないだろ」


うん、やっぱり彩美もいつもの感じじゃない。

お互いの緊張がありありと伝わってくる。


「それでどうするんだ?そっちから誘ってきたしどこか行きたいところあるの?」


「え?!いや……えーっとボウリング?」


「二人そろってボウリング好きだな。俺が苦手なこと知ってるのか?」


「ふーん、京弥ってボウリング苦手なのね。じゃあボウリングにしましょう」


「性格出てるぞ」


「うるさい!」


ということで行先はボウリング場となった。

昨日は茜と歩いた道を今日は彩美と歩く。

意識しちゃまずいような気がするが、どうしても頭に浮かんでしまう。


「アンタ、最近茜とばっかり遊んでるわよね」


「いやそれは彩美が勉強で忙しいからだろ?むしろ誘ったら邪魔になるじゃん」


「……確かにそうなんだけど、もうちょっとあるでしょ」


「もうちょっと?」


「…………一緒に勉強するとか」


恥ずかしそうに顔を俯かせながら、呟く彩美。

なんだこいつ、最近俺たちに構ってもらえなくて寂しかったのか。

可愛いすぎるだろ。


「彩美がいいなら全然一緒にやろうぜ。まぁ邪魔になりそうなら茜は追い出していいから」


「なんで茜限定なのよ。アンタも追い出すわよ」


「いや誘っといてそれはないだろ……。てかなんで今日は茜誘わなかったんだ?寂しかっただけなら茜もいた方が良いだろうに」


「ちょ、私寂しいとか言ってないし!勝手に決めつけないでよ!」


「…………すまん。口が滑った」


「絶対茜に言わないでよ!絶対だからね!」


なんか今日の彩美はテンションが高い気がする。

少し目を潤ませて頬も紅潮して……あ、これは怒ってるからか。


「それと、茜を誘わない理由はアンタは知らなくていいから。別に知っても得するとは限らないし」


「なんだそれ。まあ言いたくないならいいけどさ」


今日のことは当然茜も知っていて、帰り際に楽しんでおいでと声をかけられた。

その時、彩美になにか耳打ちしていたがそれも聞かない方がいいだろう。


「ほら、ボウリング場着いたぞ。中入ろぜ」


「え、ええ。入りましょう」


「どうした?緊張してるのか?」


「……初めてだから。ボウリング」


「じゃあ今日は楽しくなりそうだな」


「どういう意味よ!アンタだって苦手なんでしょ。すぐに抜いてやるんだから」


息まく彩美と並んで、俺たちはボウリング場のゲートをくぐった。


【あとがき】

読んで頂きありがとうございます。

本作品はカクヨムコンに応募しています。


最初は読者選考となりますので、是非フォロー&★のほどよろしくお願いします。


また、更新の励みになりますので♥を押していただけると嬉しいです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る