第39話
「おい京弥!お前ついに選んだらしいな!」
「え?なんのことだよ」
「とぼけんなよー。そっかぁお前は五六さん派だったか」
「いやマジで話が見えてこないんだけど」
茜とボウリングを楽しんだ次の日、クラスメイトからそう声をかけられた。
周りに目をやると、女子は茜の方に寄っており男子はこちらに視線を向けている。
どうやらこの話はクラス全体に回ってるみたいだ。
「誤魔化さなくていいって。昨日お前と五六さん二人でデートしてただろ?ボウリングデート」
「……いやあれはデートじゃないって。ただ二人で遊びに行っただけだから」
「それをデートって言うんだよ。それにただ遊びにいくなら希月さんも誘えばいいじゃんか。わざわざ二人ってことはそういうことだろ?」
「いやそれは……」
彩美はテスト勉強で忙しいから来なかった、実際のところはそうなんだけど信用して貰えるかどうかは怪しい。
それは希月さんがお前と五六さんに気を遣ったからだとか、希月さんがテスト勉強なんてするわけないじゃんとか言われそうだ。
「普通に彩美の都合が合わなかっただけだよ。俺と茜はそんな関係じゃないって」
「ふーん。ま、どっちでもいいけど両手に華は羨ましいわ」
俺に話しかけてきた男子が離れると同時に、俺に集まっていた視線も散っていく。
茜の方はというと、まだ輪が出来ていた。
「あれがコミュ強ってやつか。やっぱすげえな」
「すげえなじゃないでしょ。もっとちゃんといい訳しなさいよ」
「……マジでビビるから気配消して近づないでくれる?」
「なによビビり」
彩美は、俺の机の影にしゃがみ俺を見上げていた。
何となくその姿勢が猫みたいに見える。
猫じゃらしをたらしたらどんな反応するかな。
「何?私に何かついてる?」
「いや猫じゃらしがあったらいいなって」
「……話が全く見えてこないんだけど。まそれは置いといて昨日は茜とお楽しみだったみたいね」
「彩美もその話かよ。別に俺と茜は付き合ってないぞ?」
俺がそう言うと彩美は大きなため息をついた。
呆れた目でこちらを見つめる彼女だが、なんとなく悲しみの色も窺える。
「別にそんな話しに来たんじゃないから。京弥って今日何か予定ある?」
「いや特にないけど。三人でどっか行くか?」
「…………今日は二人で遊ばない?」
「え、二人?」
いや確かにこれまで彩美と二人で過ごす機会はあった。
あったけど、大体は茜が来れなくなってのなし崩し的な感じで。
「茜となんかあった?喧嘩でもした?」
「そんなんじゃないから。茜には許可取ってるしあとはアンタ次第なんだけど」
彩美の口調が段々と早口になっていく。
それにつれて頬も赤らんでいっている。
「いや、うん。大丈夫だよ」
「ほんと!じゃいつもの駅前で落ち合いましょ!」
自分の席に戻っていく彩美の背中には「喜」の感情がありありと見えた。
「……これデートか?やばいなんか緊張してきた」
緊張やら不安やら色んな感情が身体を支配し始める。
今日の授業は驚くほど気怠かった。
【あとがき】
呼んで頂きありがとうございます。
是非、★&♥のほどよろしくお願いします。
またカクヨムコン用に新作をあげています。
『人間関係に疲れて離島の高校に入学したら、生徒が俺と美少女の二人だけだった件。』
自信作ですので、フォローだけでもしていただけると嬉しいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます