第37話

『以上を持ちまして、第32回体育祭を終わります。生徒の皆さんは各クラスに戻り、下校の準備をしてください』


「終わったぁ。ねー彩美つかれたー」


「はいはい。あと少しだからもうちょっと頑張りなさい」


「なんか今の返事お母さんみたい」


「……ほら京弥も教室戻るわよ」


「確かにお母さんみたいだ」


茜の俺の頭に手刀が入る。

痛い、けど今は達成感の方が勝っていた。


茜と彩美の隣に並び、教室へと歩き出す。


今回の体育祭は本当に色んなことが起こった。

俺たちが出場したリレーもそうだし、金自先輩の「公開処刑」も生徒全員に大きな衝撃を与えたように思う。


「ね、ヨッシーも行くよね?」


「え、ごめん。話聞いてなかった」


「打ち上げだよ打ち上げ。これから彩美とヨッシーと私の3人でどっか行こうよ」


打ち上げか、確かにいいかも。

最近は疲れることがあり過ぎた。

ここいらで羽を伸ばすのもいいかもしれない。


「うん、俺も行くよ。希月さんは?」


「……ええ、私も行くけど?」


「「けど?」」


「なんでもない。ほら急がないと下校時間遅くなるわよ」


俺と茜を置いて、希月さんは歩いて行った。

その後ろ姿からは不機嫌なオーラこれでもか、というほど出ている。


「俺なんかした?」


「うーん、これはヨッシーが自分で気づくべきだと思うよ」


「え、茜も分かってんの?」


茜は頷くと首を傾げて俺の顔を覗き込んだ。


が折角変えてくれたのに、ヨッシーもとに戻しちゃうんだもん。そりゃ不機嫌にもなるよねぇ」


「それどういう……あ、やべ」


「気づきましたかね?後でちゃんと謝りなよー?」


茜と二人で教室に戻り、そのまま更衣室へ。

着替えを済ませ、再度教室に入ると茜たちを中心に輪が形成されていた。


「あ、今日の主役がやっと戻ってきたぞ」


「ほら、お前もこっちこいよ!」


傍にいた男子に肩を掴まれ、輪の中に連行される。


「これなに?なんの集まり?」


「さー、よく分かんないんだよね」


小声で茜に事情を聴くが、首を傾げられた。

そんな茜の隣を見ると、久しぶりに見るがそこにはいた。


「今日のリレー凄かったよね。あんな希月さん始めて見た!」


「お恥ずかしいところを見せちゃいましたね。ごめんなさい」


「いやいや謝るところじゃないから!むしろありがとうございます」


「感謝されることはしてないと思いますが……」


久々に見た。

猫被ってる希月さんだ。


そんな彼女はこちらに気づくと、会話を中断し俺に近づいてきた。


「早く抜け出しましょ。これ長くなるやつだから」


「……すげぇ変わり身。やっぱ流石だわ」


「うるさい、早く行きましょう」


そう言って彼女は、俺の後ろを指さした。

早くドアの方に歩き出せ、と言わんばかりだ。


「じゃ、みんなまた月曜ね!」


「失礼します」


俺以外の二人が、クラスにいる全員に聞こえるようにそう言った。

雰囲気がお別れムードになる中、一部から声が上がる。


「おい、なんで京弥まで一緒に行くんだよ!」


「そうだそうだ!お前は残って俺達と打ち上げだろ!」


男子たちから不満の声明が発表されました。

まぁ、そりゃ当然だよね。

俺、今クラスの華二人を独占してる感じになってるし。


ただ、体育祭の余韻か、気持ちがとても高ぶっていた。

どうせ明日は休みだ。

少しくらいかましてみてもいいかもしれない。


「ごめん!俺今からと茜と三人で打ち上げだから!」


「「「「は?」」」」


男子からは罵詈雑言、女子は女子で色々盛り上がっている。

教室の気温が、一段と上がったように感じた。


「彩美、これで良かった?」


「……知らない。別にいいんじゃない?」


そう言う彩美の頬は少し赤らんでいる。

うん、これで正解みたい。


3人で教室を出て廊下を歩く。

色んな生徒からすれ違うたびにすごい視線を感じる。

が、その中でもひと際鋭い視線に茜が声をかけた。


「ねぇ、君たちも私達と打ち上げ行くかーい?」


「ちょっと茜?!誰に声かけ――」


目の前には、松村と阪木が立っていた。

まだ、体操服のままなのは先ほどまで生徒指導室に連行されていたからだろう。


「………チッ」


彼ら二人は、もう教室には戻れないと思う。

聞いたところによると、部活もクビになっていたらしい。


金自先輩による公開処刑のおかげで、今回の一件がPTAでも取りざたされることになった。

彼らはおそらく停学、そしてそのまま転校するだろう。


どこまでが、彩美の計画通りなのかは分からないが、敵に回しちゃいけないことは今回の一件で身に染みて分かった。


「茜って結構、肝座ってるよね」


「本当よ。これからも苦労しそう……」


結局、打ち上げは茜の家でささやかに行われた。

豪華な食事や華やかな見世物はなかったが、3人で過ごす時間は笑顔が絶えなかった。


【あとがき】

これで一旦、「体育祭編」は終わりです。

次回からは、「バカとテストとクリスマス編」となりますので、気になる方はフォローと★、ついでに♥もぽちっとお願いします!


新作をあげています。

『学生結婚したら、周りの美少女達が全員寝取り(NTR)属性だった件。』

読んでいただけると嬉しいです!

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