第36話

Side 阪木&松村


「おい、これどういうことだ?」


「いや俺も聞いてねぇ」


身体の体温がザーっと下がっていく感覚に陥る。

だが、心拍数は上がっていく一方だった。


「なんでいきなり―」


「いきなりじゃないだろ」


「「え?」」


いきなりの後ろからの声に振り返る。

そこにはバスケ部の部長が立っていた。

手には数枚のプリントとボイスレコーダーを持っている。


「……いきなりじゃないって?」


「金自先輩から録音テープを貰ったんだ」


「録音テープ?」


部長はレコーダーを掲げスタートボタンを押した。


『ほんっとに昨日の反応は傑作だったよな』


『それなー。すっきりしたわ』


『てか五六の件ってマジなの?彼氏がいたことは噂になってたけど』


『え?知らね。でもあんな容姿だしどうせヤリマンだろ』


『まーそうだよな。あ、そうだ。今回の件許してやるから一発ヤらせろって言ったらいけそうじゃね?』


『確かに!お前頭いいな』


「な!それって……」


部長は何も答えず、ただプリントを二枚突き出しきた。

それは、当たり前のように退部届だった。


「おい、金自って奴しってるか?」


「いや知らねえ。誰かに聞くしかねえだろ」


部長を強引に押しのけ、再度グランドに戻る。

グランドは、体育祭の熱気であふれており、誰もこっちを注目していなかった。


近くを通った女子生徒に声をかける。

腕に生徒会と書いてある腕章をつけていた。


「おい、金自ってやつ知ってるか?」


「え?」


「知ってるならいる場所を言え」


女子生徒は震えながら、数個先のテントを指さした。

二人で走り、そこに乗り込む。


「金自!」


一人の男子生徒がこちらを振り向いた。


「お前何やってくれてんだ!」


「他に誰に渡した。誰に渡したんだ!」


金自はニヤッと笑うと口を開いた。


「全校生徒全員だよ」


彼は、音響を軽く操作した。

スピーカーから一番聞きなじみのある声が聞こえてきた。


【あとがき】

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