第34話
「えーっと、俺も希月さんのこと名前で読んだほうがいいかな」
「……ふぇ?」
希月さんは顔をあげ首を傾げた。
声は震え、目は潤っている。
それに加え、顔は真っ赤になっているのだから照れているようにしか見えなかった。
「あ、彩美?」
『いきなり呼ばないでよ!ば、ばか!』
「「え?」」
彩美の声が、スピーカーに拾われ校庭中に拡散される。
「ちょ、金自先輩!何してるですか!」
「あはは。ごめんね。この声拾ったら面白いんじゃないかと思ってね」
「バカじゃないですか?!いやバカでしたねあなたは!」
彩美は背後にいる金自先輩を怒鳴りつける。
金自先輩、彩美の後ろにいたんだ、全然気づかなかった。
「彩美ー!ヨッシー!私の応援はどうしたのー?!」
トラックから茜の声が聞こえるが、一旦無視。
先に彩美を落ち着けないと、今にも殴りかかりそうだし。
「一旦落ち着こう。金自先輩も悪気があってしたわけじゃないと思うし」
「そうだ!ボクはただもっと盛り上がるだろうって―」
「何が盛り上がるだろうですか!知りません。もう知りませんから」
金自先輩は土下座する勢いで彩美に縋りついているが、全く相手にしてもらえていない。
会場中はリレーそっちのけで、先輩と彩美のやりとりを見ている。
金自先輩が、頭を下げる度に爆笑が起こっていた。
「彩美!私の応援なんでしてくれないの!」
「え、茜?リレーはどうしたの?」
「もう終わったし!なに応援そっちのけでヨッシーとイチャイチャしたり、そこのバカと言い合いしたりしてんの!」
「茜くん?!バカはひどいんじゃないかな……」
「いやバカじゃないと高校で留年しないでしょ」
やっぱ金自先輩は留年してたんだ。
茜は、彩美に文句を言ったあとそのままのテンションで今度は俺の方に近づいてきた。
「え、どしたの茜」
「ふん。ヨッシーも私の応援してくれなかったもんねー。もう知らない」
「いやそれは彩美が―」
「へー、人のせいにするんだー」
そっぽを向いて明らかに拗ねているのを態度に出す茜。
そんな彼女をみて、俺は彩美と目を合わせる。
「謝ろっか」
「そうね……今回は私たちが悪いわ」
結局、茜に許してもらえたのはリレーが終わった頃で。
リレーの結果は一位だったけど、リレーそっちのけ過ぎてその実感はほとんどなかった。
まぁ、茜も彩美も楽しそうだったから結果オーライだろう。
【あとがき】
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