第29話

「私言ったよね?別れた後はもう関わるなって」


「そんな寂しいこと言わないでくれよ~。ボク達の仲じゃないか~」


「私達の仲なんてもう終わってるんですけど」


茜と先輩の間に、バチバチと火花が散っているような錯覚に陥る。

ここまで敵意むき出しの茜を見るのは初めてだ。


「あの、どちら様ですか?ここは2年のテントだと思うんですけど」


「ん?ボクの名前を知りたいのかい?いいだろうボクの名前は―」


金自 慢かねじ まん。この高校の4年生」


「茜くん!それは言わない約束だろう?!」


先ほどまでの堂々とした態度から一変して、金自先輩は顔を真っ赤に染めた。

そして、茜に対して詰め寄っている。


「知らない。だって私とアンタは他人だから」


「他人ならそれを知ってるわけないじゃないか!」


「………ふん」


茜は完全にそっぽを向き、俺の横に戻ってきた。

反対にオロオロしている先輩を見て何となく状況を把握する。


「先輩のこといいの?結構な暴露したみたいだけど」


「いいの。あんな奴知らないんだから」


「うう……茜くんそれはあんまりじゃないかぁ」


後ろでは先輩がこちらを見つめて半べそをかいている。

めちゃくちゃ可哀そうだ。


「金自先輩でしたっけ。このテントに何か用があるんですか?」


「おお、やっと話を聞いてくれるか!私はただ人を探しに来ただけなんだよ」


「人ですか。名前分かります?」


「うむ。吉河京弥という男子生徒だ」


「え、俺?」


吉河京弥なんてやつは俺以外にこのクラスにいない。

だから俺で確定なんだけど……やばい。全く心当たりがない。


「君が吉河くんか!なら話が早い。希月くんから話はいってないかい?」


「え、いや何も聞いていないです」


「ほう……なら今ボクが言った」


金自先輩は俺の手を引き、テントから俺を連れ出した。

後ろで茜が何か言っているが、それに答える暇はなかった。


「すいません。マジで話が見えてこないんですけど」


「松村と阪木の話……そう言ったら分かるだろう?」


その言葉にハッと息をのむ。

この先輩が希月さんの言っていた協力者なのだろう。


「希月くんから相談された。制裁を下したいから手伝えってね。本当にびっくりしたよ」


「あ、そうなんですね……」


希月さん、そんな言葉を使って手伝いを頼んでるのか。

一体なにを頼んだのか……ちょっと怖くなってきた。


「あの子はすごいね。天使みたいななりをしながら性格は悪魔だ。こんな制裁の下し方を考え着くなんてね」


そんな作戦聞きたくないよ。

心の底からそう思った。


【あとがき】

本作品がフォロワー2000人を達成しました!

読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。


これからも本作品をよろしくお願いします。

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