第28話

「雨降りそうだねー」


「だね。最後までもってくれればいいけど」


全校生徒での開会式が終わり、今はそれぞれのテントで休んでいる。

希月さんが委員会の仕事で走り回っているのが遠めに見える。


そんな中、二人して空を見上げながら、俺と茜はそう言葉を交わした。


「そういえばいつも横にいる男の子どしたの」


「伊織のこと?あいつなら保健室でサボってると思うよ」


「マジかー。色々話してみたかったんだけどな」


「茜が伊織と?」


確か茜と伊織はこれまで全く接点がなかったはずだ。

というか伊織が俺以外と交友を持ってるところをあまり見ない。


「そそ。これからヨッシーたちと過ごす時間増えそうだからさ、仲良くなっときたいじゃん」


「あー、そういう」


茜は希月さんと二人でいるのを見ることが多い。

だが、クラスの女子は茜を中心として回っていた。


茜はどのグループに入っても普通に歓迎されていたのがその証拠だったように思う。


「クラスの女子はさー、顔には出さないけど明らかに私のこと腫物扱いしてるわけ。もうなんか―」


「ストップストップ!ここで話さない方が良いと思うよ。周りに聞こえるかもしれないし」


「えーもう良くない?だってヨッシーも似たようなもんじゃん」


「………めっちゃストレートに言うね」


茜と同様、俺もなんとなく腫物扱いされているようで。

教室に入った時の空気だったり、いつも話しかけてくる奴らが来なかったり。


予想はしていたが、ちょっと悲しいのが現実だ。


「まぁ大丈夫っしょ。私と彩美とヨッシーと伊織んでつるめばいいし」


「あはは。ありがたいよ」


「しっかり彩美へのアタックのサポートもするから。そっちも安心してていいよ~」


「……それは別にありがたくないかなー」


二人とも素直じゃないんだから、と茜はそっぽを向いた。


会話が途切れたところで、俺は希月さんの方に目をやる。

相変わらず仕事に走り回っているようだが、大丈夫なのだろうか。


「ん?彩美が気になるの?」


「あーうん。なんかあいつらを懲らしめるために何人かに協力を仰いだって言ってたからさ。その件は大丈夫なのかなって」


「彩美そんなことしてたんだ。えー私聞いてない」


茜はぷくーっと頬を膨らませ、彩美の方を睨んだ。


「俺も詳しいことは聞いてないんだよ。だからどうなってるのか気になって」


そんな話をしていると後ろの方が騒がしくなった。

振り返るとうちのクラスのテントに誰かが来ているの見えた。


「茜見える?誰か来たみたいだけど」


「え、ちょ、なんでここにアンタがいんの!」


茜は俺の質問にそっちのけに立ち上がり、そう叫んだ。

その声に気づいたのか一人の男子生徒がこちらに歩いてきてる。


見ない顔だし先輩だろうか。

その男はゆっくりとこちらに近づき、茜の目の前に立った。


「なに?近寄ってこないでよ」


「近寄ってこないでって……それは元カレに対して冷たいんじゃないかな~」


【あとがき】

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『卒業式で俺の告白を振った幼馴染が、大学生になってからストーカーみたく後を追ってくるんだが』


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