第26話

Side 五六茜


「ちょ、え?吉河君をどう思ってるって……ええ?」


私の質問に彩美の顔は一瞬で真っ赤になった。

今まではあまり恋バナはしてこなかったから知らなかったけど彩美ってこの手の話題に弱いのかもしれない。


「なに焦ってんのー。ほら顔赤いぞー?」


「赤くなってない!」


少しの怒気をはらんだ彩美の声が飛ぶ。

けど、その勢いとは裏腹に私はつい笑みをこぼしてしまう。


「な、なによ」


「んー?」


「なんで笑ってるの?」


「んー?」


「何でニヤニヤしてるのってば!」


「だって、彩美が敬語じゃないんだもん」


「ちょっ……それわざわざ言う?」


私の指摘に彩美はそっぽを向いてそう答えた。


「なんで口調変えてくれたのー?」


「茜が楽な態度で接してほしいって言うからでしょ」


彩美はそう言うと持っていたペットボトルをグイッと煽った。

そんな仕草にまたしても笑みがこぼれてしまう。


「で、どうなのさ。ヨッシーのことどう思ってるの?」


「……まだその話する?」


「するする。だってめっちゃ気になるもん」


実際、この場で彩美の口から答えが貰えるとは思ってない。

けど、表情とか仕草からある程度分かるからね。

彩美のキャパの限界まで質問するつもりだ。


「なんで茜が気になるのよ?」


「だって彩美の返答次第では行動が色々変わってくるし」


「茜の行動?え、それって―」


「私ヨッシーのことが好きな人知ってるからさー、どっちに肩入れしようかって話」


相手に嘘を信じてもらいたいなら、ほんの少しを混ぜておいた方が良いってよく言われるけど、私の経験的にもそうだと思う。


ホントを少し入れるだけで、相手が受ける印象は全然変わってくる。


「あー、そういう……え?吉河君のこと好きな人いるの?」


「そーだよ?」


「そ、そうなんだ……」


事実、今も彩美が引っ掛かったし。


「私的には彩美の方がだいぶリードしてると思うよ?」


「いや私そんなこと聞いてな―」


「でも早く正直にならないとすぐ抜かれるから」


まあ、彩美を出し抜くつもりなんて私には毛頭ないんだけどね。


こうでも言わないと、彩美は絶対に積極的にならないし少しくらいの意地悪は許してほしい。


「ね、その吉河君のことが好きな人って誰なの?」


「さー誰だろ。彩美が私の質問に答えてくれたら教えてあげる」


「そ、それは……」


もうその沈黙が答えな気がするけど、それをここで指摘するのは野暮ってものだろう。


「そろそろ戻ろっか。ヨッシー待たせてるし」


私は強引に話を切り上げて、彩美の手を引っ張った。


大事な友達の恋路だから。

しっかりとサポートしてあげないとね。


【あとがき】

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