第21話

『3日間の自宅謹慎』

それが校内で暴力事件を起こした俺に下った処分だった。


軽い処分で済んだのは日頃の行いが良かったからだぞ、と担任の先生が言っていた。


ただ、手を出した理由を聞かれて何も答えなかったときは、流石に首を傾げられたが。


「やっちゃったな」


自室のベッドに寝ころびながらそう呟く。


彼らに手を出したことを後悔はしていない。

むしろ、スカッとしている。


だが、希月さんに対しては罪悪感を感じていた。


「希月さんのことだし、色々考えてたんだろうな。多分俺が全部ぶち壊したんだろうけど」


昨日の話では、今日は素のまま登校して話題を搔っ攫おうとしていたはず。


計画は実行したのだろうか。

学校中は、希月さんの話題で持ちきりなんだろうか。


「……いや流石にないな」


普通に考えて、俺の暴力沙汰の方が噂になっているだろう。

聡い希月さんのことだ。

もしかしたら計画を中止にしているかも。


「素の希月さん」を知っているのはまだ自分かもしれない。

そんな可能性が出てきたことに喜ぶ自分がいる。


「俺、最悪な性格してるわ…」


「そうね。本当に最悪よアンタは」


「………え?」


おかしい。

希月さんの声が聞こえる。

しかもすぐ横から。


「え?じゃないわよ。アンタやってくれたわね」


声のした方をむくとそこには制服姿の希月さんが立っていた。

服装の乱れ具合から急いでここに来たことが伺える。


「な、なんで?ここ俺の部屋だけど……」


「そうね」


「…………本物?」


俺の問いに希月さんは目線を下げ体を震わせ始めた。

その頬には、涙が伝っているように見える。


「ちょ、希月さん?」


起き上がろうと、ベッドに手をかける。

だが、俺が起きるよりも先に希月さんが動いた。


俺は、希月さんに


「ちょ、え、え?」


「え?じゃないわよこのバカ!」


パチンと甲高い音が鳴る。

同時に左頬に痛みが走る。


「バカよ……本当にバカなんだから」


「ごめん…」


「どれだけ私が心配したと思ってるの!どれだけ私が………」


そこまで言いかけると希月さんは言葉を止めた。

そして、俺の目をじっと見ながら語りかけるように言葉を紡いだ。


「怖かったと思う…?」


ズキリと胸が痛む。

俺がいなくなれば、彼女は一人で問題に立ち向かっていかなければならない。


自分一人の勝手な感情でとっていい行動ではなかったと深い後悔が押し寄せてきた。


「一人にしないでよ……バカ」


希月さんはそう言うと、ゆっくりとこちらに身体を預けてきた。

だが、俺はどうして良いか分からずそのまま固まってしまう。


そんな俺に、彼女は不満げに呟いた。


「こういう時は、抱きしめてくれるもんじゃないの?」

「ご、ごめん」


希月さんに言われ、俺は恐る恐る彼女の肩に手を回したのだった。


【あとがき】

更新遅れて申し訳ございません。

あるバンドの45周年記念がありまして……


いい訳はさておき次回更新は6月30日(金)となります。

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