第18話

「ねぇ彩美。なんで抗議しに行かないの?」

「ルールだからです。しょうがないですよ」

「うううううううううう」


恨めしそうに、運営のテントを睨む五六さん。

希月さんも返答事態は冷たいが、テンションが落ちていることが目に見えて分かった。


「……あの人はなんで唸ってるの?」

「多分俺が失格になったからだろうなー」

「…ああ」


球技大会のルールとして、野球部の参加はNGというものがあった。

これは勿論、のことだと思っていたが、なんか俺は例外的にダメだったらしい。


確かに地域の草野球チームでバリバリ野球をやっている高校生って珍しいからね。


「ヨッシーも抗議したいよね?ね?」

「うーん。正直どっちでもいいかな」

「なんで?!」

「え、もう目標達成したし」


希月さんの方を見ながら、そう告げる。


少し中途半端なところはあるが、彼らは多少なりとも自分がいじめていた相手の気持ちが分かるだろう。

特に五六さんが煽った時なんかは、相当堪えたような表情をしていた。


「んー本人がそう言うなら別にいっか。見ててヨッシー!私がホームラン打ってくるから!」


「あ、次の試合は茜スタメンじゃな……って聞いてないですね」


希月さんの言葉を聞く前に、クラスの輪に戻っていった五六さん。

そんな彼女を希月さんはため息をつき見つめていた。


「……あの人面白いね」

「だなー」


本当に五六さんは良い人だと思う。

まぁ、希月さんが認めてるくらいだし、俺がそう思うのも必然なのかな。


「…次の試合スタメンらしいから準備してくる」

「おーう。行ってらっしゃーい」


伊織が去っていくのを見て、希月さんが近づいてくる。


「お疲れ様。ちゃんと作戦はまったわね」


「それな。ってか希月さん野球上手くない?あのボール捕れると思わなかった」


「……小さい頃お父さんによくキャッチボールに連れてかれてたの。あの時は嫌だったけどこんなところで役に立つなんてね」


「そうなんだ。希月さんもやる?うちの野球チーム女性も歓迎だよ」


「考えとくわ」


絶対に考えないだろうな、と思うけど深くは追及しない。

行けたら行くと同じ感じだね。


「これであいつらがおさまってくれればいいね」


「本当それを願うしかないわ」


その後、球技大会は滞りなく進みうちのクラスは3位に。

最初は不穏な空気が漂っていたが、最終的にはある程度みんな楽しめたようだ。


後は、彼らが落ち着いてくれればと願うのみだった。


***


球技大会翌週の月曜日。

久しぶりに目覚めが良く周りと同じくらいの時間に登校する。


いつも通り気怠く階段を上り、教室のある階に到着。

廊下に出て教室の方を見ると、相当の人だかりができているのが見えた。


「……?何かあったのか?」


気持ち歩くスピードを上げ教室のドアを開ける。


教室内の景色は、異様なものだった。


クラスの大半は後ろに固まり、希月さんは焦ったように黒板を消している。

そして、一人だけ自分の席に着き、顔を伏せている人がいた。


五六さんだ。


「何があったんだ?」


俺は近くにいた男子に状況を聞く。


「俺も聞いた話だけどさ、なんか朝黒板にこう書かれてたらしいんだ」


『五六茜はヤリマン』


【あとがき】

読んで頂きありがとうございます。

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