第7話

【はしがき】

第4話後半部を加筆しております。

是非、ご覧ください。


-体育祭12日前-


「今日から個別種目の練習が始まるからな。水分補給やら忘れんなよ」


「…うわぁめんど」

朝のHRでの担任からの報告につい本音が漏れてしまう。


去年の体育祭は強制参加の種目にしか出なかったが今年は違う。

ため息をつきながら体操服に着替え、伊織と一緒に運動場に向かった。


「そういや伊織って何にでることになったんだ?」

「ダンスだけだと思う…多分」

「多分って…一応足怪我してるんだしダンスもやめといたがいいんじゃない?」

「…大丈夫」


伊織はそう言ってニヤリと笑った。


「お前まさか仮病じゃないだろうな」

「さぁ?でも個別種目に入ってなかったら体育祭は休みやすい」

「…さいですか」


伊織は、小学生の時からこんな感じである。

だから今更言ってもしょうがないし、これまで色々助けてもらった身なのでこれぐらいは許してやってもいいだろう。


さあ、切り替えて練習に参加しよう。


***


「それではスウェーデンリレーの練習を始めます。といってもバトン渡しくらいしかすることないから…まずはタイム計ってみよっか」


恐らく三年生であろう女子生徒が前に立ち指示を出す。


うちの高校の体育祭には学年優勝と総合優勝の二つがある。

学年優勝はその名の通り、各学年ごとに種目の合計得点が高かったクラスが優勝。

総合優勝は、事前に割り振られた6ブロックで競い優勝を目指すものだ。


ブロックには各学年が一クラスずつ入っており、基本的に種目練習はブロック単位で行われる。


俺のクラスは

第一走者(100m)が希月さん

第二走者(200m)が俺

第三走者(300m)が五六ふのぼりさん

アンカー(400m)が里っちだ。


俺は三年生の説明を聞きながら、隣にいる希月さんに声をかける。


「裏月さんもスウェーデンリレーなら教えてくれればよかったのに」

「すいません。当然知っているものだと思っていました。あと裏月って誰のことでしょう?」

「…さぁ?」


笑顔の圧力をかけてくる希月さんと目を合わせずに返事をする。

今の一言で何故か怒らせてしまったみたいだ。


「あれ?彩美と吉河君じゃん!」


「「え?」」


突然後ろから声をかけられ二人同時に声を上げる。

一緒に振りかえると五六茜ふのぼりあかねさんが、ニヤニヤしながら俺たち二人を見ていた。


「息ピッタリとか仲良しかよ!もー彩美も隅に置けないね」


「変な冷やかしはやめてください。吉河君に失礼ですよ」


「どっちかというと逆だろ」

「だねー」


五六さんが笑いながら俺の言葉を肯定する。


「茜?それは普通に失礼です」

「分かってるよー。冗談じゃん冗談」


五六さんの言動を希月さんが注意したり宥めたりするクラスでよく見る光景だ。


希月さんと五六さんは一年生の時から仲が良いらしく、よく一緒にいるところを見かける。


「そーいや吉河君と殆ど話したことなかったよね?よろしくー」

「うん。よろしく」


里っちがくるまで三人で雑談。


五六さんは派手な見た目をしており近寄りがたいな、と思っていたが意外とそんなことはないみたいだ。


「そろそろ私たちは移動しよっか。第二走者と第三走者はむこうだから」


五六さんの提案に頷き、後ろに着いて行こうと歩き出す。

しかし、希月さんに手をつかまれ進むことが出来なかった。


「え?どうした?」

「茜ー!ちょっと吉河君に話があるので先に行っててくださーい」


希月さんは、俺の言葉を無視し五六さんに声をかける。

五六さんは、一瞬ニヤッとしたが手をあげて声にこたえた。


「アンタね…マジで学校ではやめてよ」

「え、何の話?」

「は?…裏月さんって呼ぶのは駄目って話よ」


希月さんが言っているのは、先ほどの会話だろう。

一応周りに注意を払ってはいたが、確かに五六さんには気づかなかったしな。


「それはごめん。不注意だった」


俺は素直に彼女に謝る。


「分かればいいのよ。あ、私からのバトン落としら承知しないからね!」


希月さんはそう言うとスタート位置へ走って行った。

その姿を見て、俺も五六さんのいる待機地点へ足を向けた。


***

Side 五六茜


「へーマジで仲良さそう」


遠巻きから二人を見ながらそう呟く。


「もう彩美の顔全然違うじゃん。えーあれに気づかないとか吉河くん大丈夫かよ」


なんとなくだけど学校にいる時の彩美がキャラを作っているのは分かる。

他の人は気づいていないだろうけど、疲れたような顔をしているのをたまーに見かけるから。


でもそんな彩美が吉河君の前ではいつもとは違う顔を見せている。

絶対何かあったに違いない。


「えーでも一年の時は絡みなかったでしょ。いつからだろ」


スウェーデンリレーの代役決めよりは前だろう。

いつもはみんなの意見を聞いたり、大多数と同じ意見を採る彩美が、サプライズ指名したんだ。


あの時にはもう今みたいな関係になってたとみるのが妥当かな。


「やばい。めっちゃ気になるんだけど。本人に聞く?えーどうしよ」


そんな事を考えていると、吉河君が会話を終えこちらに走ってきた。


「よしよし。まずは吉河君に突撃だね」


【あとがき】


読んで頂きありがとうございます。


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