第1章

第1話

すめらぎって珍しい苗字だよな…?」


ある5月の昼下がり。

俺はSNSの巡回中にみつけたある一つの投稿に目を奪われた。


miaya 13時間

なんで私にばっかり押し付けるのよ。あのバカ皇


多分誰かの裏垢だろう。

同僚かクラスメイトかに皇さんがいてこの投稿者の気に障るようなことをしたのかな。


「俺のクラスにも皇さんいるけど流石に違うよなー」


そう思いながらクラスにいる皇茉莉花を思い出す。


彼女は色んな意味で目立つ存在だ。


注目を浴びようとクラス委員に立候補したはいいもののその仕事は副委員にすべて任せるという暴挙を成し遂げており、あまり評判はよろしくない。


「…まさかな」


流石に偶然だろうが、少し興味がわいてきた。

俺は、アイコンのマークを押し、過去の投稿に目をやる。


miaya 1日 

五六ふのぼりの話彼氏の愚痴ばっかり。時間返せ。


五六さんはうちのクラスにもいる。

ギャル系の女子生徒で確かに最近彼氏と上手く言ってないって噂が流れている。


miaya 3日 

加茂川キモい


加茂川はうちのクラスの担任だな。

しかも純粋な悪口でちょっと可哀そう。


「てかマジでクラスメイトの誰かじゃないか?」


うちのクラスの珍名字多すぎ問題はさておき、流石にここまで合致するのはおかしいだろう。


「ちょっと注意してみとこ」


俺はそう言って、そのアカウント「miaya」をフォローした。


そこから数週間、俺は投稿がある度にそのアカウントをチェックするようにしている。


最近は、学校が体育祭シーズンらしく、それに対する愚痴が多い。


「まあ、うちの高校も体育祭の練習始まってるんだけどね」


俺は偶々見つけた空き教室でそう呟き、購買のパンをかじる。

今日は、友人が体調を崩して休んでいるので一人飯。


久々に一人なので、俺はゆっくりとアカウント主の正体について考察を進める。


「カギは皇さんと五六さんの投稿だよな」

俺はそう言って、皇さんについての投稿を開く。


皇さんがよく仕事を押し付けて、かつ五六さんと仲が良い人…


「多分あの二人のどっちかだよな…」


あの二人とは、うちのクラスで副委員をやってくれている田中樹里と希月彩美である。


田中樹里は、クラスの煩いグループにいるこれまたギャル系の女子。

よくクラスで皇さんや担任の先生の悪口を言っているのでアカウント主の最有力候補だ。


そして、もう一人の希月彩美さんは…


「いやいや、流石にそれはありえないって」

俺は自分の思考につい自分で突っ込みを入れてしまう。


希月さんは、この学校で知らない人はいない有名人だ。


黒髪ロングのいかにも清純派、清楚系と形容される綺麗な容姿と、優等生過ぎる性格が評判になり、入学した時からその人気は絶えない。


学業においても外部模試の結果は分からないが、定期試験は常に一位。

また、どんな問題が起きても、まるでお助けロボットのように解決してしまう様は「完璧」の権化だ。


「うん。流石に希月さんはないわ」

「私がどうかしましたか?」

「…へ?」


突然の返事に急いで振り返ると、そこにいたのは件の「希月彩美」だった。


「い、いやなんでもないよ。ははは」

「そうですか?私が力になれることがあったら何でも言ってくださいね」


そう言って笑いかけてくれる彼女を見て思う。

こんなにいい人があんな裏垢を運営するわけないと。


「それよりさ、希月さんどうしてここにいるの?」

「この教室、五限目のリーダー会で使うんですよ。もうすぐ昼休みも終わりますし用事もなかったので早く来たんです」


そう言われ時計を見ると、既に昼休みは終わりに近づいていた。

俺は、机の上に残していたパンのゴミを手に取り席を立つ。


「本当だ。じゃあ俺は教室に戻るよ」

「ええ。気を付けて」


ありがとう、と声をかけ俺は、希月さんの横切り、教室のドアに手をかける。

しかし、ドアを開けようとした寸前、再び希月さんに声をかけられた。


「あ、吉河くん。スマホ忘れてますよ」

「え?マジ?」


見ると、机の上にスマホがポツンと。


「意外とおっちょこちょいなんですね」


希月さんは笑いながら、俺のスマホを手に取る。

が、スマホはすぐに彼女の手の中から滑り落ちた。


「…え?希月さん?」


不自然に思い、彼女の傍に戻る。


スマホを拾い上げ、希月さんの方に目をやると彼女は、真っ青な顔で俺のスマホの画面-例の裏垢を見つめていた。


そして、震える声で俺にこう問いかける。


「そ、それって…」

「これ?あー、なんか偶々見つけてさ、多分うちのクラスの誰かだと…ってまさか」


希月さんは一度目をつぶり考えるような素振りを見せるが、すぐに先ほどのような笑顔に戻った。


「こんな酷いことする人いるんですね。クラスメイトならまだしも担任の先生の悪口も書くなんて」

「え、なんで担任の先生の悪口もかかれてるって知ってるの?」

「……あっ」


彼女も気づいたのだろう。

俺は皇さんについての投稿を開いていた。


他の人についての投稿があるかどうかを知ることなんて不可能なのである。


「なんのことでしょう?」

「いや無理があるから」

「で、ですよねぇ」


【あとがき】

読んで頂きありがとうございます。

是非、フォロー&評価よろしくお願いします!

次話で彩美の本性が現れます…

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