第14話 第二王子




「ふん。人前で涙を流すなど。恥知らずなやつめ」


 片目を長い前髪で隠し、三つ編みを結ぶ紐に布でできている鈴蘭の花の髪飾りをつけ、紺色のチャイナ服を着ている第二王子である十五歳の少年、深月しんゆえは、凛太郎から視線を外して相棒の三つ目の白猫を頭に乗せると、自分の担当の五月のりゅうの背に乗ってこの場から離れるのであった。




「自分が幻の十二月の動物たちを集めて、王になるんだよ。絶対に」




 雲の中に入り、視界が暗闇に包まれる中。

 深く沈みゆくような声音で言いながらも、深月は少しだけ思い出していた。

 ほんの短い時間しか奏でられなかったが、凛太郎の音色を。

 どうせ奏でられたとしても、やかましくも能天気な音色だと思っていたのに。


「ッチ。気に食わないやつめ」











(2023.5.5)



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