第7話 冒険用の靴
『胡月城』の鈴月の自室にて。
鈴月は自室の一角に設けられている畳の上で正座になり、目の前の丸い卓の上に置いていた水晶玉から、畳の上に置き透明な四角の箱に入れられた凛太郎の靴へと視線を移した。
冒険用の靴を忘れたと凛太郎が言った時、鈴月は凛太郎が座っていた丸椅子の傍らに布袋を見つけた。
凛太郎があちらの世界から持って来たのは、この布袋一つだけ。
冒険用の靴以外に、どれほど便利な、または必要不可欠な物を持って来たのかと思えば、入っていたのは一足の靴だけだった。
しかも、そもそも凛太郎が履いていた靴と図柄も大きさも形も全く同じ。
違いがあるとすれば、新しいか古いかだけ。
『鈴月様。その靴を預かっておいてくれませんか?本当は出発する時に履き替えようと思っていたんです。その時に鈴月様に預かっていてくださいとお願いしようと思ったんですけど。急だったので。すみません。見た目は古びていますけど、そこまで汚くはないんです。一週間に一回は洗っていたので多分そこまでは汚くないです』
鈴月は赤と白の凛太郎が履いていた靴から、目の前の丸い卓に置いていた水晶玉へと視線を戻せば、凛太郎と陵牙はブロッコリーの鶏骨スープと保存食用の黒パンを、乃蒼は梅干しドレッシングがけブロッコリーを食べているところであった。
ブロッコリーは現地で調達したものだが、粉骨して調味料を加えた鶏骨と、保存用の黒パン、梅干しドレッシング、その他必要な調理道具は陵牙が小さくして常備しており、これらの料理は陵牙が作った物であった。
「嬉しそうに食べるのう」
凛太郎を見ていた鈴月はくうと控えめな空腹音が聞こえて来たので、水晶玉を持って食堂へと向かったのであった。
(2023.4.30)
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