本の蟲

本棚には虫がいる。

見えないぐらい小さい虫。

あるいは大きいけど透明な虫。


虫は本を食べる。

たぶん紙じゃない。


平積みされていたあの本、

画面上で目にしたあの本、

ガラスの中にいたあの本、


買ったときは確かにあった。

読みたいと思わせる、

引力と呼ぶしかない力が、

本を中心に出来上がっていた。


でも本棚に入ると、

虫たちに本は食い荒らされた。


面白さは日に日に減退し、

もう開く気にもなれない。

力場は完全に喰われてしまった。


僕は本を買ったのではない。

あの虫に餌をやったのだ。


まるまる太った虫たちは成長して。


何かになることもなく、

いつまでもいつまでも汚い腹をさする。


たんと食らえ。

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