愛
僕の世界は風船だった。
内側の僕はいつも酸欠で、
息をするのもままならない。
「いつ死んでもいい」
そう思ったら、世界に小さな穴が開いた。
穴から入ってくる風はやけに新鮮で、
僕の世界は破裂せずに済んだ。
酸素を求めて、穴は段々大きくなった。
息がしやすくなるほど
世界の輪郭はなくなっていく。
それでいいと思った。
遅かれ早かれ、みんなそうなるから。
なのに君は、穴をふさいだ。
突然。でも、ゆっくりと。
あまりに優しい手つきだから、
止めることすらできなかった。
止める気にもなれなかった。
息苦しい風船の中に、
僕はまた閉じ込められた。
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