夜の見分けがつかなくなってから随分時間がたった

二つの夜は平行

平行な夜に縁取られた一日は相似形

昨日今日明日にほとんど違いはないから、

僕はどの夜にもたどり着くことができる

つまりタイムトラベラーだ

ただ自分が今どこにいるかはわからない

全ての夜は繋がっていて

どこも同じだから。

怖くなって、電気をつける

シーツのゆがみ、カーペットの埃

溜まった洗濯物

のびた爪と髪

僕と夜を置いて時間はどこかへ行ってしまった

置き手紙には「おやすみ」とだけ書いてある


さみしくはない

もともといなかったと思えばいい


「おやすみ」

そういって電気を消すと

夜は目鼻のない顔でぼんやり笑った

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