人筆書
1103教室最後尾左端
雨
昔から雨のにおいがわかった
雨が降る気配がにおいでわかるのだ
「犬みてえだな」と、彼は言った
彼とはついさっき、はじめて言葉を交わした
「どんなにおいなんだ」
雨のにおいを因数分解すると土と湿度になる
「なんだよそれ」
彼は勉強が苦手だったみたいだ
「傘持ってんのかよ」
折り畳み傘はあいにくカバンにはいってない
この分だと濡れてかえることになりそうだ
彼はずっと濡れることはないのだろう
羨ましい
「待たせて悪かったな。そろそろ消えるわ」
彼はふっと居なくなった
赤い余韻
僕は小走りで、横断歩道を渡った
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