提示部

第6話『はじまり』

 僕が中学校に入学した時の話だ。

 新入生歓迎会と称して、生徒会に僕らは暑い体育館に寿司詰めにされた。くそボロい体育館だ。

 手で仰いでは汗かいてを繰り返していると、幕が急に開いた。ステージには眩しい照明に煌めく楽器たちがいて、指揮者が無音の所に手を上げると、多少のカラカラという音がしながらその煌めきが動いた。

 そのまま指揮者は腕を動かし始め、曲が演奏された。

 その曲は「マーチ『ブルー・スプリング』」という名前の曲だと後に指揮者から説明があった。それはもちろん青春という意味なのだが、何を思ったかそのとき僕は青色のバネが敷き詰められた様子を想像していた。

 やがて曲は終わりを迎え、しばしの無音が再度流れた。その間に新入生たちはざわざわ話し始めていた。それでも暑い。

 準備が始まるあのカラカラとした音を聞き取ったのは、僕を含めた数人らしく、指揮者が腕を振り始めてもざわざわは殆ど止まらなかった。曲が始まってから少しして、不意にクラリネットたちの音が参加した。そうしてようやくざわざわは収まり、美しいメロディーが流れた。紆余曲折驚心動魄、その曲も聞き惚れている内に終わった。

 目を覚ますとなにかの資料が配られていた。どうやら、二曲目が終わったらすぐに寝てしまっていたらしい。

 うーむ、小難しい。


 そんな昔話を、副島は煌めきの朝の中でぼーっと考えていた。

 これからは、副島の今の話だ。

 彼の夢と勇気、憧れ、希望。それらにエールをもち、エンターテインメントとして見ていただこう。

 二つの空いた窓は春風の通り道となり、始まるペガサスの夢のようにやわらかい物語――は、夢物語。

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